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職場で、家庭で、専門家ではないけれどケアをするあなたへ。東畑開人さん新刊『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』
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身近な人たちの心に雨が降る時、わたしたちは“ケア”をどう実践すべきか
家族や同僚が落ち込んでいる。そんな時に、よかれと思って励ましの言葉をおくっても、思いがけない返答をもらうことがありました。「成果には繋がらなかったけど、頑張ってたね」「僕なんか全然ダメだ。早く追いつかないと」「ご飯食べて元気出して」「いや、ご飯なんていらないし」。
いつもなら“届く”はずの言葉が、暖簾に腕押し。ときには、トゲトゲした言葉に変身して戻ってきてしまうことすらもありました。
あのとき、私はどのような言動を取ったらよかったのだろうか。どのようなケアをすべきだったのだろうか。そんな問いに応えてくれるのが、2024年9月に出版された東畑開人さんの著書『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』(KADOKAWA)です。
臨床心理士の東畑開人さんは、『居るのはつらいよ:ケアとセラピーについての覚書』や『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』などの本を手掛けてきました。今回の著書は、専門家ではない私たちに、ケアとは何か、そしてどのようにケアを実践すればよいかを教えてくれる一冊です。
どうしたら相手を傷つけないのか、よくわからない。そんな「雨の日」は必ず訪れる
現代社会において「心のケア」は、臨床心理士などの専門家だけが行うのではなく、みなが実践しているものです。パートナーが仕事で失敗したとき、子どもが友だちと喧嘩したとき、その傷を癒すためにも、当たり前にケアを試みていることでしょう。
誰もがケアを実践する時代に、本書のタイトルにもある『雨の日』が私たちを惑わせてきます。「晴れの日とは、どうしたら相手を傷つけないのか、よくわかっている日」であり「雨の日とは、どうしたら相手を傷つけないのか、わからなくなってしまった日」と、本書では定義しています。
例えば、ある日「学校に行きたくない」と子どもがあなたに伝えてきたとしましょう。これまで一度も、学校に通うことを嫌がった様子がなかったのに、何がそうさせているのか、あなたは子どもの気持ちを理解できません。
昨日まではよく知っていたはずの子どもが、次の朝に学校に行こうとしなくなると、全然わからない他者になってしまう。 目の前に謎が置かれる。本人も何に苦しんでいるのかわかんないし、僕らにもわからない。 だから僕は最初、ケアに失敗するんです。必ず、失敗する。 相手のことがわからないから、何度も何度も傷つけてしまう。 これが雨の日でした。
(「雨の日の心理学」p.314)「巻き込まれることでケアがはじまる」と東畑さんは本書で語っています。ケアにおいては、天気予報で雨がふる時間を確認することなんてできず、いつの間にか始まり、土砂降りの雨に巻き込まれてしまうのです。
わかる・きく・おせっかいを繰り返しながら、ケアを実践していく
では、突然降り出してしまった雨に、私たちはどう対処していけばいいのでしょうか。
本書の第2章〜第4章では、こころを「わかる」ための理論と、ケアを実践する技術である「きく」と「おせっかい」について説明されています。東畑さんは、「『わかる』と『きく』と『おせっかい』をグルグル回しながら、少しずつ相手についてわかっていく」とも語っています。
雨の日には個別的な対応が必要になる。 ですから、「どのように対処するか」ではなく、「どう理解するか」が大事なんです。 「わかる」さえあれば、おのずとどう接したらケアになるのかが出てくるわけです。 何をすると傷ついてしまい、何をしない方がいいのかが「わかる」。 これが大事なんです。
(「雨の日の心理学」p.91)きくとは情報収集をする以上に、つながりを築くことに他なりません。 こころとこころのあいだに回路ができて、ゼリーのやりとりがなされる。これがきくことの本質です。
(「雨の日の心理学」p.194)余計なお世話にならないためには、新しく良いものを外に付け加えるのではなく、今あるトゲを除去してあげるのが大事です。 面白そうな習い事を始めるよりも、今やっている辛そうな習い事をやめる方が先。 押し付けないのがおせっかいのコツなのでしょうね。
(「雨の日の心理学」p.254)そして、「ケアするひとをケアするもの」と題された第5章では、ケアする人が“元気”であることがいかに大切かについて語られています。
ケアする人が元気であること。 これがケアの前提条件であり、究極の成功要因でもあります。 とりわけ、こころのケアの場合は、こころを使ってこころをケアするわけですから、ケアする心が死んだ状態だったら、どんな洗練された技術もステンレスみたいに冷たく響くだけになってしまう。
(「雨の日の心理学」p.263)ケアに失敗しても、いつでもわかり直せる
本書は、白金高輪カウンセリングルーム主催で行われた2023年度オンライン授業「心のケア入門―支えることのための心理学」の全5回を書籍化したものです。そのため各章の最後には、受講者からの質問に答えるコーナーが設けられており、章ごとに生じた疑問を解消できる構成になっています。
こころのケアは本来、酸素みたいにありふれている。 でも、ときどき難しくなってしまうことがある。それは相手のことがわからなくなってしまうときである。 だから、大切なのは、わからなくなった人をわかり直していくことである。 そうやって、雨の日にもつながりを絶やさないことが、こころのケアになる。
(「雨の日の心理学」p.338)人と人が繋がり、協力しながら生きていくなかで、ケアを避けて通ることはできません。大切な人が心に傷を負ったり、困難にぶつかったりしたとき、ケアするあなたも一緒に暗闇に放り出された気持ちになるかもしれません。そんな時に、どう行動し、光ある方向へ向かっていけば良いか。雨の日に差し出された傘のように、ケアする人たちの味方になる一冊です。ぜひ一度手にとってみてください。
Information
『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』
書籍『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』
著者:東畑開人
出版社:KADOKAWA
発売日:2024年9月2日
判型・ページ数:四六判並製 352頁
定価:1,760円
リンク:KADOKAWA
本書についてのお問い合わせ:こちらから「お問い合わせ」へお進みください
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