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外出が困難な人などが遠隔で出演!分身ロボットと俳優・石川瑠華さんによる『星の王子さま』の朗読劇&ドキュメンタリーが無料配信中
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『OriHime プロジェクト』ドキュメンタリーと朗読劇が無料配信中

「分身ロボットOriHime」が出演や演出助手を務める朗読劇『リーディング 星の王子さま』と、その舞台裏を収録したドキュメンタリー映画『ここに、 いる。〜分身ロボットと創る 星の王子さま〜』の2作品が、2022年3月4日より神奈川県公式YouTube チャンネル「かなチャンTV」で無料配信されています。

本プロジェクトは、「障害や年齢などにかかわらず、子どもから大人まで、全ての人が舞台芸術に参加し楽しめる」ことを目指して神奈川県が行っている「共生共創事業」の公演作品の1つとして実施されたものです。

OriHimeによる演目を神奈川県「共生共創事業」が行うのは、2021年に作られたリーディングシネマ『ちいさなちいさな王様』に続き、2回目

OriHimeは、遠隔地にいる人がスマートフォンやタブレット、PCから遠隔・無線で操作できるロボットです。音声を届けるほか、いくつかのボディランゲージと顔の角度を操ることで感情を表現します。これにより、難病や障害など何かしらの理由で移動や外出が難しい人、海外在住などで離れた場所にいる人でも、ロボットを介してリアルタイムでコミュニケーションをとったり、テレワークで働いたりすることができます。

OriHimeを遠隔地で操縦する人は「パイロット」と呼ばれ、今回の演目では、14名のパイロットが、俳優・石川瑠華さんとともに『リーディング 星の王子さま』に共演しています。脚色・演出を務めるのは藤原佳奈さん。演劇を「身体から思考し、時間の結び目を創る」ことと捉え、場所や分野を横断しながら活動している演劇家です。

「かんじんなことは、目には見えない」の新たな意味を問う45分の朗読劇

朗読劇の原作となる『星の王子さま』は、フランスの作家アントワーヌ・ド・サンテグジュペリの小説です。砂漠に不時着した飛行士が小惑星からやってきた王子さまと出会う物語で、300以上の国や地域で翻訳され、世界中で読まれています。

飛行士役を務める石川さんは、映画『うみべの女の子』(2021年)でダブル主演を務めた経験もある俳優です。飛行士役のほか、ドキュメンタリー映画でのナレーションも務めます。

王子さま役は、2021年1月よりOriHimeパイロットとして働く、きよさんが務めます。きよさんは、鳥取県米子市に住み、脳脊髄液減少症(注)で⻑く起きあがっているのが困難なため、OriHimeを使用して〈cafeツムギstation at Yokohama Kannai〉や〈モスバーガー〉などで普段は働いています。

※注:脳脊髄液減少症とは、低髄液圧症候群とも呼ばれる疾患。交通事故やスポーツ外傷など、体への衝撃によって脊髄の硬膜が破れ、脳脊髄液が漏れだし、減少することによって、頭痛、頸部痛、めまい、耳鳴り、倦怠感、不眠、記憶障害などのさまざまな症状を呈します。多くが起き上がっていると頭痛が悪化し、横になることで軽減される。定まった知見や治療法が確立されていないため、国において専門家による医学的な解明が進められている。

『星の王子さま』でよく知られている「かんじんなことは、目には見えない」というメッセージ。本作でのOriHimeとのコミュニケーションを通して、新たな意味を問いかける約45分間の朗読劇です。

距離と身体を超えて表現に向き合う4か月間の記録

朗読劇と同時に公開されているもう1本の映像作品『ここに、 いる。〜分身ロボットと創る 星の王子さま〜』は、『リーディング 星の王子さま』の制作過程に密着した56分間のドキュメンタリーです。監督は、前回の「OriHimeプロジェクト」の作品『ちいさなちいさな王様』を演出・撮影した映像作家の大金康平さんが務めました。

ドキュメンタリーには、分身ロボットという「身体」を通して、距離と身体を超えて表現に向き合う4カ月間の記録が写されています。

映画の中には、演劇家の藤原佳奈さんが「分身ロボットカフェDAWN ver.β」でOriHimeと出会うシーンも

劇中、4人程度の演者となるパイロットを想定し、OriHimeオーディションを実施します。しかし、オーディション後、今回の企画に関しては、オーディションで出る人と出ない人を決めることに「ちょっとスッキリしないところがある」と藤原さんは語り、参加した14人の候補者全員の出演を決定します。

全員で出演することが決まった『リーディング 星の王子さま』の稽古は8日間。ドキュメンタリーには、演者同士がエチュードを通して距離を縮める姿や、稽古を通して自分自身を見つめなおす様子、園田あけみさんが作る衣装、本番の裏側、披露試写会の様子などが収められています。

ドキュメンタリー映画を見てから朗読劇を観るのも、その逆でも、それぞれ違う発見が生まれそうな2作品。無料配信中ですので、是非ご覧ください。

また、分身ロボットOriHimeが気になった方は、〈こここ〉でもご紹介している「分身ロボットカフェDAWN ver.β」(東京都中央区)で、実際にOriHimeによる接客を受けることができます。OriHimeとのコミュニケーションをたのしんでみたい方は足を運んでみてください。