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戦時下を生きた子どもの姿を描く巡回展「戦後80年 戦争と子どもたち」郡山市立美術館で開催
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【画像】展覧会のチラシ。りんごを持つ子どもの肖像画が大きく入っている

戦時下のアート作品で、子どもたちはどう表されていたのか?

第二次世界大戦の終戦から、昨年で80年が経ちました。戦争の悲惨さを風化させることなく、平和の尊さを次世代へ継承することを目的に、国や地方自治体、各種団体による「戦後80周年記念事業」が2025年から各地で実施されています。

そうしたなか、福島県の〈郡山市立美術館〉で2026年1月31日から3月22日まで開催されているのが、「戦後80年 戦争と子どもたち」です。2025年11月8日から約2カ月、東京の〈板橋区立美術館〉でも開かれていた本展では、戦時中から終戦直後にかけて制作された子どもを主題とする美術作品をはじめ、子どもたちに向けの絵本や教科書、紙芝居、さらには戦時下で子どもたち自身が描いた作品を紹介します。

戦時下を生きる子どもたちは、芸術家たちによってどのように表現されてきたのか。そして、激動の時代に、美術家たちは子どもたちにどんなまなざしを向けていたのでしょうか。

【写真】展覧会場の入り口。戦争と子どもたち、と書かれた大きなサインが壁にある

戦時下の「変化」を表す全5章の展示

戦争や戦時下の美術を扱う展覧会はこれまでも数多く開催されてきましたが、「子どもたち」に焦点を当てたものは決して多くはないでしょう。

「戦後80年 戦争と子どもたち」は、本来は平和を象徴する存在の一つでもある子どもたちが、戦時下でどのような暮らしを送り、何を感じていたのかに目を向ける展覧会です。「非日常」とされる戦争のさなかにも、たしかに子どもたちの「日常」があったことを作品から感じ、考える機会となることを願い、板橋区立美術館、新潟市美術館、そして郡山市立美術館の3館による共同企画としてスタートしました。

本展は、それぞれの時代の変化を表す5つの章で構成されています。1920〜30年代の子どもは、無邪気に遊び、あどけない表情を見せる存在として捉えられることが多くありました。第1章となる「童心の表象」では、そうした当時の子ども像を描く作品が紹介されています。

【写真】爽やかな青空とともに描かれた、2つの大きな絵画

やがて、時代に不穏な影が差し始めると、子どもたちの姿にも変化が現れます。第2章の「不安の表象」では、戦争の足音が近づくなか、うつむきがちで悲しげな表情を浮かべる子どもや、防空頭巾をかぶる子どもが描かれるようになった様子に注目します。戦争による閉塞感と、美術家自身の不安が、子どもたちの姿を通して表現された作品が並びます。

さらに、日本が本格的な総力戦体制へと移行すると、子どもたちの日常からも自由が奪われていきます。第3章の「理念の表象」では、出征する家族を見送る場面や慰問、勤労奉仕など、戦時の理念に従うことを求められた子どもたちの姿を紹介しています。

【写真】壁にずらりと額装された絵画が並ぶ

重苦しい戦時下において、子どもたちは小さな希望の光でもありました。第4章の「明日の表象」では、画家たちが子どもに向けたあたたかなまなざしに立ち返り、描くことの喜びを見出していく様子をたどります。あわせて、当時の子どもたち自身が描いた作品も展示し、子どもたちの内側にあった感情や世界を伝えます。

そして迎える、1945年8月15日。第5章の「再建の表象」では、戦後を生きる子どもたちの姿に焦点を当てます。焼け野原となった街で懸命に生きる子どもたちを記録した作品や、「戦後」という新たな時代への希望を託された子ども像を通して、再出発の時代に向けられたまなざしを紹介します。

【写真】壁にずらりと額装された絵画が並ぶ。手前に、展覧会のチラシトップの絵

講演会や美術講座など、関連イベントも開催

郡山市立美術館での「戦後80年 戦争と子どもたち」の開催にあわせ、関連イベントも多数予定されています。

講演会は2つ開催されます。2月22日(日)には、「戦時美術の『子どもたち』」と題し、昭和期のいわゆる「戦争美術」を主に研究する千葉工業大学教授・河田明久さんが登壇。続く3月1日(日)には、「子どもの紙芝居,おとなの紙芝居―戦時下紙芝居を考える」と題し、国立歴史民俗博物館教授・大串潤児さんが、戦時下に制作された紙芝居を手がかりに語ります。

また、展示室内で作品を鑑賞しながら解説を行うギャラリートークが、2月28日(日)に開催。3月7日(土)と15日(日)には、学芸員による美術講座「戦争と子どもたち―『疎開』と『勤労』」と「戦時下の子どもの表象」も予定されています。

さらに映画鑑賞会として、3月20日(金・祝)には、昭和初期から戦後までを生きる教師と子どもたちの姿を描いた『二十四の瞳』を上映。3月21日(土)には、スペイン内戦直後を舞台に、6歳の少女アナの幻想と現実が交錯する世界を描いた『ミツバチのささやき』が上映されます。

【画像】戦争と子どもたちのチラシの裏面

戦争から約80年が過ぎ、実体験として戦争を語れる人は年々少なくなっています。戦争とは何だったのか、その時代を生きた子どもたちはどのような思いを抱いていたのか。本展覧会を通して、その一端に触れてみてください。