こここ編集部より

編集後記・ムジナの庭——「アトリエ訪問」と「山口祐加さん×鞍田愛希子さん対談」記事のこぼれ話
取材のこと

  1. トップ
  2. こここ編集部より
  3. 編集後記・ムジナの庭——「アトリエ訪問」と「山口祐加さん×鞍田愛希子さん対談」記事のこぼれ話

【写真】へそピローとともにテーブルの上に置かれた書籍
山口祐加さんと星野概念さんの著書『自分のために料理を作る――自炊からはじまる「ケア」の話』を真ん中に置きながら、話を伺いました(撮影:加藤甫)

「一緒に、福祉施設をたずねてみませんか?」

そんなお誘いに快く乗ってくださった自炊料理家の山口祐加さんと、就労支援施設の「ムジナの庭」(代表:鞍田愛希子さん)をたずねて、はや3カ月が経ちました。ここは精神疾患や知的障害のある人々の、ケアと就労のサポートをしている場所です。

「就労」と「料理」という、一見異なるけれど、人の生活に深く関わるものを支える仕事。そこで行われていることには実は共通点がいろいろあって、特に鞍田さんや山口さんの実践には、今の社会で多くの人が感じている“生きづらさ”をほぐすヒントがたくさんあるんじゃないか……。

そんな問いを携えて迎えた取材は、鞍田さんと山口さんの出会いをつくることができたうれしさ(意気投合の具合いにご本人たちもびっくり)と、あの場に流れる時間を体感できた幸せ(手仕事はもちろん、お昼ごはんもご一緒にさせてもらいました)と、誰かと生きることのままならなさ(&それが生きること?などのモヤモヤ感)を覚える、めちゃくちゃ濃い1日になりました。

執筆者のウィルソン麻菜さんの文章、撮影を担当した加藤甫さんの写真で魅力ある記事に仕上がった、上記の「アトリエ訪問」と「対談」の2本は、2024年4月末に掲載されています。

今日のブログでは、記事に入れられなかった写真も交えて、取材時のエピソードや後日談をいくつか紹介しちゃいます!(編集部:佐々木将史)

アザーカットとこぼれ話

【写真】扉の外から中を伺う、オレンジのセーターを着た山口さん
(撮影:加藤甫)

当日いち早く、キッチンにあると聞いた商品の手作りお菓子を買いに走った山口さん(後ろ姿)。

取材冒頭、「ムジナの庭」の概要を鞍田さんに聞くだけで質問が止まらなくなり、あっという間にお昼になったところで、一度休憩に入った直後の一コマです。訪問記事でもいくつか紹介していますが、植物をいろんな形で取り入れたムジナのアイテム、本当にどれも欲しくなるんですよね。

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ムジナの庭(@atelier_michaux)がシェアした投稿

僕も「桑のクッキー」「アロマミスト(すやすや)」「ヒノキ香るサシェ(香り袋)」をお土産に買いました。季節折々さまざまなアイテムが作られ、サイト、オープンアトリエ(月1回)、各種イベントなどでも購入できます。気になる方はInstagram @atelier_michaux をチェック!

 

【写真】小さな計りのうえに紺の布袋。中に玄米を入れるシーン
(撮影:加藤甫)

山口さん、ウィルソンさん、そして僕も体験させてもらった「へそピロー」作り。上の写真のように、お米やヨモギを一つずつ測りながら入れ、藍染の布を縫っていきます。

記事にもあったように、コツコツと丁寧に進める山口さんと、慣れた手つきでぐんぐん進めるウィルソンさんの横で、僕はちょっとニガテな針仕事にやや冷や汗をかきながら作業をしていました。鞍田さんからは事前に、他にもワークの選択肢をいただいていたので、「もうちょっと上手くできそうなのにすればよかったかな……」と実はこっそり後悔しそうにもなったり。

だからこそ、振り返りをしていくなかで、そんな僕の焦りやもともとのニガテ意識が、「自分より得意な人がいる」「自分より速い人がいる」という“誰かと比べる意識”からきてるんだ!と気づいた瞬間は衝撃でした。そんなことのために作ってたんじゃなかったよな……と、この瞬間やっと思い出したわけです。

スタッフさんや他の取材メンバーから見られてたから、余計にそう思ったのかもしれません。でも、人に見られながらする仕事って、実際世の中にすごく多い。なら山口さんは、なんであんなに楽しそうに作れるんだろう?

その一つの答えでもある、自分と他者の境界の持ち方は、2記事目の対談にたっぷり表れているかなと思います。ぜひ読んでみてください。

 

【写真】ローテーブルを囲んで、7人ほどが座ってそれぞれに話をしている
(撮影:加藤甫)

本記事では詳しく触れられませんでしたが、ごはんを食べたり手仕事をしたりする2階の大きな部屋の奥に、畳が敷かれた小部屋があります。壁1枚で仕切られていますが、くり抜かれた窓から、互いの部屋の様子が何となく伝わってくる設計になっています。

上の写真はここで行われた、「からだプログラム」の一コマ。実は今回「へそピロー」のワークを選んだのは、訪れたこの日、鍼灸師の資格を持つスタッフさんによる身体のケアの時間があったからでもありました。

僕らもワークの後、さっそく作ったピローをレンジでチンして参加。ヨモギのすごくいい香りがするピローを首やお腹に当てながらお話を聞きました。メンバーのみなさんそれぞれにほっとした顔を覗かせながら、リラックスできるこの時間を楽しんでいるのが印象的でした。

 

【写真】テーブルの上に置かれたピロー。山口さん、鞍田さんの手が添えられているのが見える
(撮影:加藤甫)

鞍田さんと山口さんの対談は、「からだプログラム」の後そのまま場所を借りて、へそピローを撫でながら和やかに進行しました。

「いやもう、私がしゃべってるんじゃないかなって」

思わず山口さんがこぼしたくらい、お2人の課題感やアプローチには通じるところがありました。記事を読まれた方は、その意味を感じてもらえるんじゃないかと思っています。

この日の対談もとてもよかったのですが、実はさらに後日談が。意気投合した鞍田さんご夫妻、山口さんご夫妻は、これをご縁に一緒にお食事するなど親交を深められているようで(編集部としてもすごくうれしい!)、ムジナの庭の場づくりにも影響を与えている哲学者の鞍田崇さんには、こんな投稿もいただきました。

今後新しい場として、生活訓練の施設「こらだ環境研究所」が立ち上がってくると、ムジナの庭もまた次のステージに変化していくに違いありません。取材して終わりではなく、今後もさまざまな形で関わることができたら、と考えています。次はどんな記事になるでしょうか。