ニュース&トピックス

多文化共生について考える一冊、活動記録『外国ルーツの若者と歩いた10年』がオンラインで公開中
書籍・アーカイブ紹介 活動紹介

  1. トップ
  2. ニュース&トピックス
  3. 多文化共生について考える一冊、活動記録『外国ルーツの若者と歩いた10年』がオンラインで公開中

ほんのひょうし
外国ルーツの若者たちを対象とした取り組みの活動記録と、見えてきた課題、そして提案をまとめた著書『外国ルーツの若者と歩いた10年』

多文化共生社会の実現に向けた、実践の記録と提案『外国ルーツの若者と歩いた10年』

外国にルーツを持つ若者たちを対象とした人材育成に取り組む、〈一般社団法人kuriya〉の代表理事・海老原周子さんが、これまでの自身の取り組みをまとめた著書『外国ルーツの若者と歩いた10年』を出版しています。

著書には、海老原さんがなぜ多文化共生や移民について興味を持ったのか、そこになぜアートを活用しているのか、という原点となる体験に触れながら、10年間の活動の記録、活動を通して見えてきた現状の課題、さらに次の10年に向けた提案が記されています。

外国ルーツの若者の多様性を育てる、10年間の活動

日本で増えている外国ルーツの若者。〈kuriya〉では、中でも経済的・家庭的に厳しい環境にある16〜26歳の高校生・若者を対象に支援を行ってきました。

彼らの多くは、親が出稼ぎのために来日し、親の生活が落ち着いた後に母国から日本へ呼び寄せられています。こうした若者の課題として、日本語ができないことのみならず、言葉や文化の壁から日本に馴染めず孤立してしまうこと、さらには経済的・家庭的な理由から進学したくても困難であることなどがあります。

海老原さんは、課題を抱える外国ルーツの若者たちの居場所づくりを行ってきました。その中で、若者たちの持つ言語や文化などの多様性を育てるためにアートが有効であると考え、映像や写真、音楽やダンスなどのアートワークショップを2009年から2019年までの10年間で100回以上実施しています。

「年齢もルーツも多様な環境のワークショップでは、言語ではない表現を介すことで、自ら『できる』ことが見えてくる。役割と通じて自らの『強み』も見えてくる。そんな可能性を発見する場になっていた。」(『外国ルーツの若者と歩いた10年』, p.22)とあるように、アートワークショップを通じて参加者が自らの可能性に気づき、人と人とが信頼関係を深めてつながる瞬間に立ち会ってきました。

「移民」の若者をエンパワメントする「Betweens Passport Initiative

〈kuriya〉が取り組む人材育成事業のひとつが、「Betweens Passport Initiative」です。このプロジェクトは、「移民」の若者たちを、異なる文化をつなぐ社会的資源と捉え、アートプロジェクトを通じた若者たちのエンパワメントを目的としています。東京アートポイント計画の事業の一環として、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)・東京都と協働しながら、2016年から3年間実施されました。

活動は、「移民」の若者が集うコミュニティをつくることから始まり、定時制高校で放課後部活動「多言語交流部(One World)」を通じた居場所づくりを行いました。また、「移民」の生活のフィールドワークとその結果を踏まえたワークショップ形式のアウトリーチ活動を実施。さらに若者たち自身が〈kuriya〉でインターンとしてプロジェクトの運営を手掛け、実践的な学びを身に着けました。

いみんのわかものたちとkuriyaのスタッフが、いすにすわって、こちらにえがおをむけている
〈一般社団法人kuriya〉が実施した「Moving Stories / Youth Creative Workshop アジア間国際プラットフォーム形成ー多文化な若者達へのアートを通じた人材育成プロジェクト」より。日本で暮らす『移民』の若者たち(=ユース)、アーティストとともにワークショップを開催(撮影:高岡弘)

著書の中で海老原さんは「新しい価値観、異質な価値観に出会った時に、それを排除するのではなく、いかにそれを楽しいものとして受け止め、互いをいかし合いながら営みを続けることができるかという、受容の力を育むことが、これからの社会に必要なのではないか。」(『外国ルーツの若者と歩いた10年』, p.88)と語ります。

『外国ルーツの若者と歩いた10年』はWebサイトからダウンロードが可能です。異なる背景を持つ人たちが未来に希望を持って暮らしていくにはどうしたらいいのか、書籍を開いて考えてみませんか。