ニュース&トピックス
寝転がる? 踊る? 触る? 美術館の新しい過ごし方を考える「もぞもぞする展覧会」2026年1月18日まで
展覧会情報
- トップ
- ニュース&トピックス
- 寝転がる? 踊る? 触る? 美術館の新しい過ごし方を考える「もぞもぞする展覧会」2026年1月18日まで
自身の体や対話を通じて、美術の鑑賞方法を模索する
「あなたは、美術館でどのように過ごしますか?」
多くの人にとって、作品を静かに鑑賞する場所、というイメージのある展覧会。その中で、寝そべったり、声を出したり、作品に触れたりできると言われたら、言葉を詰まらせてしまう人もいるかもしれません。
そんな新しい鑑賞アプローチについて模索し、実践を行う展覧会が、2026年1月6日(火)〜18日(日)まで京都・北区の〈アトリエみつしま Sawa-Tadori〉で開催されます。〈一般社団法人HAPS〉による、 鑑賞者が作品を鑑賞するとともに、自ら身体や対話を通じて“美術館での過ごし方”について考える「もぞもぞする展覧会 しつづける あいだに」です。
美術鑑賞のルールを解体する「もぞもぞする展覧会」とは?
「鑑賞」という行為には、本来決められたルールがある訳ではありません。本展は、障害のあるなしや年齢、異なる文化背景など、さまざまな立場にいる人々がさまざまなアプローチで作品に関わることで、固定された価値観や慣習に問いを投げかけることを狙いとしています。
たとえば上のイラストにあるように、寝転がることで空間の奥行きを感じたり、触れることで素材や感触を確かめたり、踊ることで身体と空間の関係を再発見したりと、一般的な展覧会とは異なる鑑賞方法を提案しています。さらに作品制作や対話、休息など、あらゆる行為を「鑑賞」として捉えることで、従来の「展覧会らしさ」という概念を揺さぶります。
多様な視点で表現を紡ぐ作家たち
今回展示されるのは、〈たんぽぽの家アートセンターHANA〉の所属作家6名と、会場となる〈アトリエみつしま Sawa-Tadori〉のオーナーで、全盲の美術家・鍼灸師である光島貴之さんの作品です。
光島さんは、10歳の頃に失明して以来、視覚に依存しない表現を探究してきた作家です。手ざわりに特徴のある素材を用いた「触覚コラージュ」やラインテープやカッティングシートによる「さわる絵画」など、視覚以外の感覚に訴える作品を数多くつくりあげてきました。身体感覚に訴えるこれらの作品は、今回の展覧会の趣旨と深く響き合うものとなっています。
また、〈たんぽぽの家アートセンターHANA〉からは、荒井陸さん、中村真由美さん、福岡左知子さん、舟木花さん、宿利真希さん、山野将志さんが参加。いずれも個々の制作プロセスや身体性にもとづいた表現が特徴です。鑑賞者の身体的・感覚的な参加を促す要素を含む作品群は、「鑑賞とは何か」の問いかけを、視覚としての体験から身体全体の体験へと広げていきます。
そもそも“美術館”とはどういう場所なのか? を問うプロジェクト
京都を拠点に活動をする〈HAPS〉は、芸術と障害について「そもそも」のところから考え話す場所として、2022年に「もぞもぞする現場—芸術と障害にかかわるひとたちの、アセンブリー」と題した対話プログラムを実施。それ以降、「もぞもぞする現場」は毎年、障害のある人やアーティストを含む市民参加者が対話や実践を通じて「未来の美術館のあり方」について考えを深めながら、さまざまな鑑賞方法や展示会場での過ごし方を考案し、現場での実践を重ねてきました。
この展覧会のタイトルにもある「もぞもぞ」という言葉は、土の中でもぞもぞと動きながら豊かな土壌を育むミミズの運動を表現したもので、直線的ではない動き、一つではないアクセスが、この活動のシンボルとなっています。
2024年の「もぞもぞする現場 3」では、京都を離れ和歌山で特別編も開催されました。その際、トークゲストに招かれた和歌山県立近代美術館の学芸員である奥村一郎さんが、今回の展示でゲストキュレーターをつとめます。
従来の展示形式にとどまらず、日常のオブジェや生活道具を展示に組み込んだり、移民と美術をテーマにしたりするなど、さまざまな領域のあいだを探るような実験的なキュレーションを行ってきた奥村さん。本展でも、作品だけでなく、鑑賞行為そのものを改めて問うような構成が行われており、奥村さんと市民参加者で構成されたチーム(通称「もぞもぞさん」)とのコミュニケーションを通じて作品を選んだといいます。
体験と対話の場をつくる関連イベントも開催
展覧会期間中には、さまざまな関連イベントも開催されています。
2026年1月10日(土)13〜16時開催の「ギャラリートークともぞもぞ対話」では、〈たんぽぽの家アートセンターHANA〉アートディレクターや出展アーティスト、本展キュレーターが対話形式で鑑賞や表現についてトークを展開。1月11日(日)、12日(月・祝)には、参加型の「ワークショップ with 光島貴之」「ワークショップ with 宿利真希」が開催予定です。それぞれ、製図用のラインテープやカラフルなカッティングシートを使ってガラス瓶に「さわる絵画」を施したり、ダンボールで文字やロゴマークなどを切り抜いたりして、作品を制作します(要予約)。
また、1月6日(火)〜8日(水)開催予定の「ヘルパーさんいらっしゃい」では、参加者が「美術館へ行くこと」について、障害のある方の支援に関わる方々と語り合うことができる時間が設けられました。1月11日(日)、17日(日)は、「もぞもぞさんスペシャル」と題して、鑑賞方法をナビゲートする「もぞもぞさん」とともに、寝転がったり、話したり、体験しながら作品を鑑賞できる日になります。
美術鑑賞のかたちに正解はありません。見ること、触れること、周りの人と話をすること……それらすべてが、この展覧会では鑑賞になります。もぞもぞと立ち止まって、自分なりの美術との関わり方を探すためにも、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
インフォメーション
「もぞもぞする展覧会 しつづける あいだに」
会期:2026年1月6日(火)〜 1月18日(日)11:00〜18:00
最終日は〜16:00
会場:アトリエみつしま Sawa-Tadori(京都市北区紫野下門前町44)
アクセス:地下鉄烏丸線「北大路」駅2番出口 徒歩約18分、バス「大徳寺前」下車徒歩3分
料金:入場無料
出展作家:荒井陸*、中村真由美*、福岡左知子*、舟木花*、宿利真希*、山野将志*、光島貴之
*〈たんぽぽの家アートセンターHANA〉所属アーティスト
ゲストキュレーター:奥村一郎
主催:文化庁、一般社団法人HAPS
制作:一般社団法人HAPS
協力:京都市、アトリエみつしま、一般財団法人たんぽぽの家、社会福祉法人わたぼうしの会
「美術館」と「障がい」の再検討と実践の共有事業:未来の美術館構想講座事業(文化庁委託事業「令和7年度 障害者等による文化芸術活動推進事業」)
Profile
![]()
-
HAPS(東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス)
一般社団法人
若手アーティストが京都市内に居住し、活動し続けることができる環境を整え、彼らの新しい創作の活力をまちの活力につなげていくことを目指して、2011年9月にHAPS実行委員会を設立、2019年4月に事務局を法人化。居住・制作・発表支援、仕事コーディネートなど、アーティストへの包括的な支援活動をおこなう。また、2017年からはこうした取り組みを広げ、文化芸術の力を活用して、多様な背景を持つ人々が共に生きることのできる社会のあり方を探り、その仕組みづくりを目指す事業(「文化芸術による共生社会実現に向けた基盤づくり事業」)を実施している。2022年度は「障害者等による文化芸術活動推進事業」を文化庁より受託し、「公立美術館における障害者等による文化芸術活動を促進させるためのコア人材のコミュニティ形成を軸とした基盤づくり事業」に取り組む。
