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介護を広く捉え、やわらかく表現するZine『かいごマガジン そこここ』2号が2022年2月に発売!
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『かいごマガジンそこここ』ひょうし
『かいごマガジンそこここ』2号が販売中。平山昌尚さんが「介護」という言葉からイメージを拡げて描いた黄色いバナナが表紙を飾る

『かいごマガジン そこここ』2号が2022年2月23日に発売

『かいごマガジン そこここ』は、2019年7月に創刊した「介護」をテーマにした「Zine(ジン)」と呼ばれる個人誌です。公式オンラインショップの他、〈ジュンク堂池袋店〉や個人経営の書店のほか、喫茶店、商店やバーなど、本屋に限らずさまざまな場所でも販売しています。

『そこここ』では介護を「身体や心の調子が悪くなった人に寄り添ってお世話すること」と捉え、介護に向き合う人の生活の様子、介護を通した発見や知恵、介護で大変なこと・大切にしたいことなどが、取材記事、インタビュー、コラムや漫画など、さまざまな方法で表現されています。

2号の企画「暮らしの椅子」では、介護の現場にある椅子とデザイナーズチェアの写真が、並列して紹介されている

楽しみながら作られた『そこここ』2号

2022年2月23日に発行された『そこここ』2号では、3本の特集が組まれています。特集記事のひとつ「母と20年、そしてこれから」では、母親の自宅介護を20年間行った方を取材。筋萎縮性側索硬化症(ALS)という、筋肉が徐々に機能しなくなる難病をもつ母と喫茶店の仕事をする父、学生の妹との4人家族の当時の生活や現在の状況について語られています。

特集「精神科の先生と喫茶店で」の対談は、一条さんと先生が出会った喫茶店〈喫茶燈灯〉で行われた

そのほか2号では、精神科の医師の普段の仕事を知ることができるインタビュー「精神科の先生と喫茶店で」や、最期が近くなった犬と飼い主の生活を綴った「とらのこと」に加え、「介護あるある」「暮らしの椅子」などの記事が並びます。

つい口を真似して動かしたくなる「ウヰスキーは笑顔の言葉 」。はがあきなさんのイラストで、口角の上げ方が描かれている

寄稿記事も増え、1号よりもさらにバリエーション豊かになった2号。企画・編集・発行を一人で務める一条道さんは、「介護は自分の生活の中にあり、介護をテーマにしたら企画に事欠かない」と言います。また、Zineづくりは「ほかの人がディズニーランドに行ったり、映画を観に行ったりするのが楽しいのと何ら変わらない」と語り、誌面からも楽しみながら制作した姿勢が溢れ出ています。

「素敵なもの」だけではなく「あらゆるものが存在している世界」を表現する一冊

昔から雑誌が好きで、さまざまなライフスタイル誌を楽しんできたという一条さんは、35歳の時に父親を家で看取る経験をしました。その後、持病のある母親の介護をしながら40代を迎え、雑誌の中に「素敵なもの」だけ表現されていることに違和感を感じるようになったと言います。そして、自身の生活の身近なところにあった「介護」をテーマにすることで「あらゆるものが存在している世界」を表現し、自分自身の救いとよろこびのために『そこここ』を始めたそうです。

一条さんが作成していたスクラップブックの一部

Zineをつくる始まりは、自宅にあった雑誌『アルネ』増刊号『別冊 アルネのつくり方』を参考にした、スクラップブックづくりでした。

注:雑誌〈アルネ〉は、2002年から2009年まで発刊されていたイラストレーター・ブックデザイナーの大橋歩さんが「今作りたいもの」を表現した季刊誌

スクラップブックの表紙に平山昌尚さんのイラストの切り抜きを貼っていたことをきっかけに、実際に表紙を平山さんに依頼することになり、2019年7月に第1号が発行。誌面づくりは、身近な人に介護にまつわる話を聞いたり、生活を取材させてもらったりする形で進みました。完成した『そこここ』を見て、「自分そのものだと思った」と一条さんは語ります。カルチャー、アート、漫画など、さまざまな切り口から捉えた「介護」が詰まった一冊です。

「そこにも、ここにも、介護ってあったんだ!」という発見から名づけられた『そこここ』

自らの介護にまつわる話を誰かに共有するのは、なかなか難しいこと。一方、いざ話し始めてみるといろいろな世代の人と共感して、話題が拡がっていくと一条さんはいいます。そして、その体験の中で生まれた「そこにも、ここにも、介護ってあったんだ!」という発見から『そこここ』に雑誌名が決まりました。

『そこここ』では、Zineづくりの過程や発行された後も、ユニークな形で「ひらく」試みを行っています。2号の制作では、プロの校正者ではなく、知り合いの編集者やイラストレーター、デザイナーと一緒に「オープン校正」と称した「一緒にお茶を飲みながら互いを紹介しあう場」をひらきました。

「オープン校正」の会場はデザインを担当する〈Allright Graphics〉の事務所。お茶の時間も大切にし、〈仙太郎〉の黒米おはぎとあぶりだんごなどを楽しみながら校正と交流を行った

また、介護の当事者や、Zineに興味を持ってくれた人たちが交流する場として「そこここ会」を何度かひらいたこともあるのだとか。読者の方から「そこここ会をひらいてみたい」という声も一条さんのもとに寄せられており、『そこここ』が介護について話したり、介護を通して人がつながるきっかけになるようなモノとして在れたら、と一条さんは語ります。

そこにも、ここにも、潜んでいる介護。『そこここ』をきっかけに、自分の身の回りにある介護のことを話したり、身近な誰かの経験を聞いてみるのはいかがでしょうか。