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やさしい日本語、どうやって始めたらいい? ひらがなネットが中学生向け『スタートブック』出版
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表紙が映った書影。表紙には、やさしい日本語を活用する場面とタイトルがかかれている
『やさしい日本語スタートブック』ひらがなネット株式会社 著。今後のコミュニケーションのきっかけになることを願って、タイトルには「未来のわたしへ」とついています

さまざまな背景を持つ人と関わるきっかけをつくる

2025年6月末、在留外国人の数は395万6,619人と過去最多を更新しました(出入国在留管理庁)。これから先、外国から来た人とともに学んだり、働いたり、関わる機会はますます増えることが予想されます。

そうしたなか、さまざまな背景を持つ人とコミュニケーションをとるときに役立つ言葉として、シンプルな語彙や文法を用いた「やさしい日本語」が注目されています。

この言語の背景から、具体的な使い方までを知ることができる書籍『未来のわたしへ やさしい日本語スタートブック』が、2026年3月に〈株式会社ゆまに書房〉より出版されました。本書では、「やさしい日本語」の必要性や取り組みが始まった経緯、身につけるためのポイントなどが、イラストや当事者の声とともに、わかりやすく紹介されています。

背景から使い方のポイントまでが一冊にまとまった『やさしい日本語スタートブック』

本書は大きく、3つのパートに分かれています。

1つ目のパートでは、日本にいる外国人はどのような人たちで、なぜ「やさしい日本語」が必要なのかということが、グラフや地図、イラストを用いながら解説されています。

日本にいる外国人はどのような人たちか、グラフとともに解説されたページ

阪神・淡路大震災で避難指示が伝わらず、被害にあった外国人の方が多くいたことから取り組みが始まったやさしい日本語。本書には、さまざまな国からやってきた日本に住む外国人へ「日本に来た理由」や「日本語で困ったこと」などをインタビューしたページもあり、生活の具体的な場面を想像しながら、こうした人々のための言葉が必要な理由がわかってきます。

2つ目のパートは、やさしい日本語を使う前の準備。自分の言葉をコントロールするための意識と調節の度合いをスイッチとレバーに例え、相手に合わせて「やさしさのレバー」を動かすことで会話が変化する様子が描かれています。

「やさしい日本語」を使う前の準備がイラストとともに表現されたページ

3つ目のパートでは、実際にやさしい日本語を使うときの10のポイントが解説されています。その内容は、「やさしい言葉をえらぶ」「『です』『ます』の丁寧語を使う」といった言葉の選び方から、「ゆっくり、最後まで話す」という具体的な話し方まで。日本語ネイティブが当たり前のように使ってしまうけれど外国人には伝わりづらいオノマトペでは、「お腹がペコペコだ」を「お腹がとてもすいています」にする、などの言い換え例が具体的に示されています。

各ポイントには、実在する外国人の方のコメントも入っていて、自身のバックグラウンドとともに、どのように話しかけてほしいかを読者へ伝えています。こうした、たくさんの当事者の声に触れることができるのも本書の魅力です。

1つのポイントが見開きで紹介されたページ
ポイントページの右側「やってみよう」のワークでは、例文を見ながら、言葉の言い換えを実際に練習することができます

外国人と日本人をつなぐ活動を行う〈ひらがなネット〉

本書を執筆した〈ひらがなネット株式会社〉は、「外国人と日本人をつなぐ」をテーマに2012年に創業。まち歩きや料理教室、「外国人のための生活教室・仕事教室」などの事業からスタートしました。また自治体からの委託事業として、やさしい日本語にまつわる研修や講座、冊子・動画制作なども行っています。

2021年には、外国人に伝わりやすい日本語の使い方を「話す編」と「書く編」それぞれ10のポイントでまとめた冊子『やさしい日本語ハンドブック』を制作。これまで1万部以上を配布・販売してきました。中学校や美術館、障害のある方へのボランティア活動の場など、さまざまな場所で活用されています。

その後、2024年には日本の家庭料理の作り方を、やさしい日本語と写真やイラストで紹介する『ひらがなレシピBOOK』を制作。こうした取り組みを行ってきたことが、今般の書籍の出版へとつながりました。

ホワイトボードの横にレシピを手にして立っている人、その人の話を座って聞いてる様子の人たちが手前に3人いる
「ひらがなレシピ」による料理教室も、定期的に開催しています

本書は、子ども時代からやさしい日本語でのコミュニケーションを身につける大切さを伝えるために、中学生向けに企画されました。

何度も話し合いを重ね、見えてきたのは、外国にルーツのある生徒にとってやさしい日本語を使われることが、必ずしも嬉しい場合だけではないということ。そのため、「すぐに使えること」よりも「未来の自分のために、いま知っておくこと」を目的にした書籍ができあがりました。

豊かなコミュニケーションを目指して

本書の出版を記念して、2026年4月22日(水)のお昼頃に、外国にルーツのあるスタッフによる、やさしい日本語を使う前の準備を考えるトークイベントを開催予定です。また、5月には、やさしい日本語「入門編」のワークショップをメインとしたイベントも予定しています。今後のイベント情報については、ひらがなネットのウェブサイトをご覧ください。

表紙と、1ページ目の挨拶文が掲載されたページが並んでいる

出版にあたり、著者のひとりである〈ひらがなネット〉代表の戸嶋浩子さんは、「トライしてみたくなるワークもたくさん入れ、大人の方にとっても、楽しく『やさしい日本語』を知る本になりました。この本が豊かなコミュニケーションの一助になることを願っています」と語ります。

当事者一人ひとりの背景を想像しながら、目の前の人への伝え方を改めて考え直すことができる一冊。本書は日本語を母語としない人だけでなく、障害のある人や子どもなど、多様な人とコミュニケーションをとる際にも、大切なヒントをくれるはずです。やさしい日本語のはじめの一歩として、ぜひ手にとってみませんか。