
こここなイッピン
おうち de しゃぶしゃぶセット〈恋する豚研究所〉
福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。
お鍋から漂う香りも、味わいも、不思議と甘い⁉ 千葉県香取市の〈恋する豚研究所〉が提供する、“オール千葉”のしゃぶしゃぶセットの秘密をご紹介します。
恋するような環境で、健やかに育まれた「恋する豚」。脂の甘い、極上しゃぶしゃぶセット
宅配屋さんから受け取った一抱えの段ボール箱。スタイリッシュなフォントで「恋する豚研究所/koi buta/pork」と全面に書かれたその箱は、見た目以上にずっしりと重いのです。はて、中身はなんだろう? なにがこんなに重いのかしら? と、そそくさと箱を開けてみると……
次から次に出てくるお肉や野菜たち! 見た目にも良質な食材とその量に、口の端のにんまりが止まりません。まず、整然と並んだ豚バラ肉と、きれいな赤身の豚モモ肉が2パックずつ。どれもが200グラムなので、計800グラム。さらに5本入りのあらびきソーセージが2パック。お肉類だけで1キログラム以上も入ってる⁉
そして、葉がピンと張ったみずみずしい水菜とほうれん草。カサがぎゅっと締まったマッシュルーム。旬を迎えた新玉ねぎ。さらにはポン酢がひと瓶。なるほど、そりゃずっしりと重いワケです。
これだけたくさんの食材が揃っていれば、お買い物に行く必要なし。お鍋だから支度もらくちん。今日の夕飯は豚のしゃぶしゃぶに決定!
ごはんづくりを担当する人も、食べる人も「最高!」と喜びの声をあげたくなる「おうち de しゃぶしゃぶセット」が今回のイッピンです。
障害のある人々の仕事をつくる〈恋する豚研究所〉
このギフトセットを企画・販売するのは、千葉県内で育てられた豚や野菜などを提供するレストランや、豚肉・豚肉加工品の製造・販売などを行う〈恋する豚研究所〉です。
2012年に「就労継続支援A型事業所」(注1)として同事業所を設立。精肉のスライス、ハムやベーコンなどの加工品づくり、包装・梱包などの工場内作業から、レストランでの仕込みや配膳、清掃、事務作業など、事業運営のなかで障害のある人たちがさまざまに活躍しています。
〈恋する豚研究所〉の近隣には、スイートポテトの製造販売や、地域の森の間伐とその木材を使った薪づくりや木工品を手がける「就労継続支援B型事業所」も。同母体である〈社会福祉法人 福祉楽団〉が運営し、“地域の課題”に目を向け、その課題解決に寄与するようなユニークな事業をさまざまに展開中。福祉分野だけでなく、各方面から大きな注目を集めています。
(注1)障害や難病などにより一般就労が難しい人が、雇用契約を結んだ上で支援を受けながら働くことができる障害福祉サービス。A型は雇用契約を結ぶため、原則として最低賃金が保障されます。一方、B型は雇用契約を結ばず、作業に応じた工賃を受け取る仕組みです。
香りも、味わいも、甘い。「恋する豚」のしゃぶしゃぶ
さて、話をしゃぶしゃぶに戻しましょう。お鍋に昆布と水を入れて沸かし、ざく切りにした野菜を加えます。お肉も投入してさっと火を通し、同封のポン酢でいただきます。
不思議なことに、お鍋からはどことなくミルキーな甘い香りが立ち上がり、いつもとは少し異なるしゃぶしゃぶの様相。期待を胸に豚バラ肉を口に運ぶと、プルンとした舌ざわり。そして、スルスルとほどけていくこの食感、たまりません。なんといっても脂身が甘い。漂う甘い香りは、この脂身だったんだ!
赤身の豚モモ肉は、旨みたっぷりのしっかりとした食感で、食べ応え抜群。お肉で野菜を包みポン酢につけると、言いようのない幸せな味わい。食卓を囲むみんなから「最高!」の声があがります。
このしゃぶしゃぶのおいしさとは? その秘密を教えてくれたのは、〈恋する豚研究所〉の精肉加工の責任者・濱地紀尚さん。
「豚肉特有の臭みがなくて、脂身もあっさりしていて、ついついまた食べたくなる、というのが私たちの商品の最大の特徴です。こうしたお肉にするために、さまざまな独自の工夫をこらしています。豚に与える飼料を自分たちでつくることもそのひとつです」
一般的な養豚農家は、大手業者から購入した飼料を与えますが、〈恋する豚研究所〉と協働する〈在田農場〉の豚たちが食べるのは、農場で自社製造した発酵飼料が中心。サンドイッチ用にカットされたパンの耳などを業者から回収し、それを粉砕して加熱し、麹菌や乳酸菌などを加えて発酵させています。この飼料は“生もの”のため、保存がききません。日々自社でつくられ、生きた菌を豊富に含んだ飼料は、豚の腸内環境を良好にし、健康に大きく寄与。それは、良質な肉質や脂に関係してくるといいます。
さらに、一般的な養豚のプロセスでは仔豚をサイズ別に分けて飼育しますが、ここでは同じ母豚から生まれた“きょうだい”のまま、ひとつのグループとして育てられます。
じつはとても繊細な生き物だという豚。ストレスの生まれにくい生育環境、健康的で嗜好性をもたらす飼料、衛生管理の行き届いた豚舎。こうした徹底的かつ細やかな管理が「恋する豚」ならではの味わいを生み出していると濱地さんは語ります。
「『恋する豚』というブランド名は、豚たちの“育つ環境”に由来したネーミングです。豚が恋するような環境で、健やかに育つ。それが肉質や味わいにもつながるんじゃないか、と考えているんです」
実際に、豚の幸福度や肉の旨みを数値化してみようと、協力を仰いだのは東京農業大学。結果、「幸せホルモン」といわれるセロトニンとオキシトシンが有意に高く、「ストレスホルモン」のコルチゾールが有意に低いというデータ(注2)が算出されたことに加え、旨み成分のグルタミン酸とイノシン酸も、ほかのブランド豚と比べて含有量が多いという結果が出ています。
「与えている発酵飼料や、飼育環境が大きく関わった結果だと思っています」
千葉県成田市や香取市の学校給食では、「恋する豚」を使った給食が提供されることも。臭みがなく旨みたっぷりなことから、豚肉が苦手な子どもも「食べられた」という声が届くといいます。
メンバーのモチベーションを支える、“働く”ことの楽しみ
そんな「恋する豚」を加工したハム、ソーセージ、ベーコンも同社の人気商品。今回のギフトセットにも「あらびきソーセージ」が含まれます。これら精肉加工の工房には20名のスタッフがおり、その内の16名が就労支援を受けているメンバーなのだそう。
「工房にはさまざまな特性の方がいるので、誰にでもわかりやすいマニュアルを用意しています。例えば、ひとつの工程に対してたくさんの写真を掲載して作業をわかりやすくしたり、漢字にはひらがなをふったり。そうしたマニュアルをもとに、ひと通りの作業を経験してもらい、本人の得意が生かせる仕事を担当してもらっています」
〈恋する豚研究所〉には、立ち上げ時から大きく掲げてきたテーマがあります。それは、障害のある人が稼げる仕組みづくり。就労支援の工賃(注3)の低さは、全国的な課題となっています。そうした背景から、同社は地域性を生かした事業で、工賃を多く支払えるモデルとなることを目指してきました。そして、それらを実践する同社で働くメンバーたちのモチベーションは、やはり月々受け取る工賃にもあるようです。
「メンバーの何人かは『次の給料日にはゲームを買うんだ!』と意気込んでいます(笑)。でも、それを楽しみに仕事をして、自分で稼いだお金で好きなものを買う。至極まっとうなことですよね。メンバーの得意を見出しながら、本人たちが輝ける仕事をさらに伸ばし、モチベーションを支えていければと思っています」
(注3)就労支援などの生産活動に対して支払われる報酬金は「工賃」と呼ばれています。
おいしいだけじゃなく、たくさんの思いと命、多様な人たちのお仕事がつまった「おうち de しゃぶしゃぶセット」。大切な人やお世話になっている人への贈り物に、はたまた自分へのご褒美にいかがでしょうか。
香取市に所在する〈恋する豚研究所〉には、レストラン、ショップ、広々とした芝生スペースなどがあり、週末は多くの人で賑わうスポット。レストランでは「恋する豚のしゃぶしゃぶ定食」をはじめ、豚肉100パーセントの「スチームハンバーグ定食」、「恋する豚のロース肉塩コショー焼き定食」などを提供しています。アクセスしやすい方は現地で「恋する豚」を味わってみるのもいいかもしれません。
また、関東近辺には、同ブランド豚を扱う百貨店やスーパーも。今すぐ食べたい! という方はぜひチェックしてみてくださいね!
Information
おうち de しゃぶしゃぶセット
内容:豚バラ肉200g×2・豚モモ肉200g×2(約4人前)、あらびきソーセージ110g×2、千葉の醤油とゆずとレモンのぽん酢200ml×1、香取市・岡澤農園のほうれん草×1、香取郡・わーふぁ道本の水菜×1、季節の野菜2種(3〜4人前)
※季節や仕入れ状況により野菜は変更となります
価格:6240円(送料別)
販売:恋する豚研究所(Yahoo!ショッピングサイト)
製造:恋する豚研究所

