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こここ文庫

地球にちりばめられて 多和田 葉子 著

本を入り口に「個と個で一緒にできること」のヒントをたずねる「こここ文庫」。今回はダンサー ・パフォーマー・アーティストの南雲麻衣さんに選書をお願いしました。テーマは「自分とは違う言語を用いる他者とのかかわりを考える」。

南雲さんの言語である手話で『地球にちりばめられて』をご紹介いただきました。

まずは動画をお届けし、その後、手話を翻訳したテキストを掲載します。

ちきゅうにちりばめられて
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南雲麻衣さんによる『地球にちりばめられて』紹介動画(動画提供:南雲麻衣)

もし手話が消えて、話せるのが私だけになってしまったら?

こんにちは。今からお勧めの本を紹介したいと思います。

タイトルは、『地球にちりばめられて』。

まず本に出てくる主人公は、Hirukoという女性。彼女が旅行に出ているとき、自分のうまれた国が急になくなってしまいます。行き先の国々で生きていくために彼女はパンスカ語という自分の言語を編みだします。国それぞれに言語は違うけれど、そこで暮らしていくためにいいたいことは伝わる言語というのを彼女自身が考え、言葉や発音を組み合わせてつくっていきました。彼女がテレビに出た時、それをたまたまみていた言語学の研究者、クヌートは、彼女の言語に興味を持ち会いに行きます。

自分の国はなくなってしまったけれど、私の国の言語が誰かの頭の中に残っているんじゃないか、探してみたい。Hirukoとクヌートがともに、誰かの中に残る彼女の国の言葉を探し、さまざま様々な人に会い、自らの言語について探求していく、というお話です。

その本を読んで思い出したのは、昔友達からきいた本当かどうかわからない話。

ある国には2人しか話せない言語というのがあるそうで、けれどそのふたりは仲が悪いんだそうです。2人が会話しないとその言語は自然に消えてなくなってしまう、と言語学者たちが一生懸命そのふたりが仲良くなるように仕掛けているらしい、そんな話を聞いて、おかしかったことを思い出しました。

言語は地球にちりばめられ、その人々の頭の中に息づいています。誰かと出会い語らうことで、自分のうまれた国についてや文化について話すのはとても楽しいことです。

手話が言語であることは、今はSNSなどで広まりつつあります。けれど、マイノリティの言語でもあるため、消えつつもある言語です。もし手話が消えて、話せるのが私だけになってしまったら?どうなってしまうんだろう。そんなことを考えながら、ぜひ読んでみてください。

文中には、Hirukoの国がどこなのかということは書いてありません。けれど、なんとなく日本だろうなということがわかります。これは日本じゃないかしら、これ知ってる、あの背景は、あの会話は、それがなくなってしまったらどうなんだろう。Hirukoと同じ気持ちになって、ぜひご覧頂けたら嬉しいです。

(翻訳:和田夏実、編集:垣花つや子)