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こここ文庫

心を病んだらいけないの? ―うつ病社会の処方箋― 斎藤環、與那覇潤(著)

本を入り口に「個と個で一緒にできること」のヒントをたずねる「こここ文庫」。今回は医師であり、「ウェルビーイング」をテーマに地域のプロジェクトにも取り組まれてきた孫大輔さんに、「生きづらさを解きほぐす一冊」をご紹介いただきました。

推薦されたのは、第19回小林秀雄賞も受賞した対談本『心を病んだらいけないの? ―うつ病社会の処方箋―』。孫さんも感じられていたという、日本社会の生きづらい「空気」の根っこを探る一冊です。

【写真】しょせきこころをやんだらいけないの? うつびょうしゃかいのしょほうせんのひょうしがぞうです。ちょしゃはさいとうたまき、よなはじゅん。うまくはなせないひとづきあいがにがてそれでもなんとかなる。ひきこもりをせんもんとするせいしんかいとじゅうどのうつをくぐりぬけたれきしがくしゃがかんがえる。
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この社会の生きづらさの根っこはどこ?

私なりの解釈を付け加えると、日本教が想定している人間は「ちゃんと機能している人間」なんです。頑張っている人間、意思疎通ができる人間、これが標準形なのだから、全員がそれに合わせて振るまいなさいということになる。

(『心を病んだらいけないの?―うつ病社会の処方箋―』「第一章 友達っていないといけないの?」P.40)


山本七平が提唱した「日本教」。私たち日本人は、みな、日本教の信者である。そう喝破するのは、ヤンキー化する社会やひきこもり研究で有名な精神科医の斎藤環さん。この本は、斎藤環さんと、躁うつ病を体験した歴史学者の與那覇潤さんの対談となっています。

日本社会の「生きづらさ」の根っこって何だろう。友達っていないといけないのか? 家族ってそんなに大事なのか? 夢をあきらめたら負け組なのか? 不快にさせたらセクハラなのか?さまざまな現代的テーマについて、二人のライブ感のあるトークが、深い教養とともに展開されます。

日本教には善悪を定める教典がないので「空気」を読むしかない。だから空気を読めない人、うまく機能できない人は排除されてしまう。なるほど。

在日コリアンの私が陰に陽に感じてきた生きづらさ。「孫」という名字をなのるときにいまだに感じる、あの微妙な気持ち。そんなときの「空気」を僕はだいぶ読めるようになったつもりだけれど、そうかこれが「日本教」の正体なのかも。そして、同じように感じた経験が誰にでもあるのではないでしょうか。

この本はそうした日本教からの脱会のススメとも言えます。本を読み終える頃には、「心を病んだらいけないの?」という疑問に少し自信をもって答えることができるようになるはずです。