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〈クロスプレイ東松山〉主催。アーティスト・竹中香子さん(ハイドロブラスト)による『ケアと演技』が4月12日・13日上演
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【画像】ケアと演技のチラシ

アーティスト・竹中香子さん(ハイドロブラスト)による演劇作品「ケアと演技」が4月12日・13日に上演

介護や子育てなど、誰かをケアをしていると、ふと「何かを演じているな」と感じる瞬間が少なからずあります。例えば、いつも会っている認知症のある方に「はじめまして」と言われたとき、その言葉を否定せず、初対面のように接する。また、なかなか食事をとらない子どもに対して、正論で叱るのではなく、自然と「食べてみようかな」と思わせるような言葉や態度をとる。

こうした場面からも、ケアと演技は切り離せない関係にあるのかもしれません。

こうした「ケアと演技」というテーマをもとに、高齢者福祉施設〈デイサービス楽らく〉で実施されているアーティスト・イン・レジデンス〈クロスプレイ東松山〉に参加した俳優・プロデューサーの竹中香子さんが、滞在を経て「ケアと演技」と題した舞台作品を制作しました。本作は、2025年4月12日・13日に、同施設にて上演されます。チケットは、2025年3月1日より販売開始です。

父の介護で感銘を受けた「ケアの技術」と長年積み重ねた「演技」

〈クロスプレイ東松山〉は、埼玉県東松山市の高齢者福祉施設〈デイサービス楽らく〉で実施されるアーティスト・イン・レジデンス・プロジェクトです。年間を通じてさまざまなアーティストが施設に滞在し、作品制作や創作活動を通じて、利用者やスタッフと交流を深めていきます。

【写真】埼玉県東松山市の高齢者福祉施設〈デイサービス楽らく〉

プロジェクト発足時には、3名のアソシエイトアーティストが滞在し、新作の舞台作品の制作、施設内での架空のラジオ番組の放送、作品展の企画など、多彩な取り組みが行われました。

2024年2月11日には、同施設で継続的に活動していた文化活動家・アサダワタルさんによるプロジェクトの公開記念イベントが開催され、ミュージックビデオの上映会とトークイベントが行われました。

4月に上演される「ケアと演技」の作・演出・出演を務める俳優・プロデューサーの竹中香子さんは、2023年度に〈クロスプレイ東松山〉の公募アーティストとして同施設に滞在しました。

竹中さんはパリを拠点に、フランス国公立劇場の作品を中心に多数の舞台に出演。2017年からは日本での活動も再開し、ニューヨーク公演など国内外で幅広く活躍しています。2019年に映画監督の太田信吾さんが設立した、映像と演劇を中心に、アートプロジェクトを企画・プロデュースする団体〈一般社団法人ハイドロブラスト〉へ2022年に加入し、プロデューサーを務めています。

【写真】竹中さんが高齢者福祉施設〈デイサービス楽らく〉に訪問している様子
【写真】竹中さんが高齢者福祉施設〈デイサービス楽らく〉に訪問している様子
竹中香子さんが高齢者福祉施設〈デイサービス楽らく〉に滞在しているときの様子

竹中さんは、実父がパーキンソン病を患い、10年以上にわたって在宅介護を支えたチームの「ケアの技術」に深く感銘を受けたそうです。その後、父の死をきっかけに「ケア」と改めて向き合うために〈クロスプレイ東松山〉に応募したといいます。

利用者や介護者と共に過ごす時間の中で、竹中さんは自身が長年取り組んできた「演技」と「ケア」の重なりに気づき、そこから生まれたのが「ケアと演技」です。

「他者との“違い”をいかに歓迎するか」を体感するパフォーマンス

「ケアと演技」は、2024年5月に東京・有楽町で初演され、今回の4月公演はその再演となります。

【写真】初演の様子
【写真】初演の様子
初演の様子(撮影:加藤甫)

今作は、竹中香子さんの盟友であり、映画監督・俳優・演出家の太田信吾さんが参加し、身体と演技の交差を表現。また、音楽家・島崎智子と服部将典によるピアノとコントラバスの演奏が加わり、「ケア」の根源を巡るパフォーマンスが実施されます。

竹中さんは本公演にあたり、以下のようなコメントをしています。

私はフランスの公共劇場を中心に俳優として数多くの作品に関わってきましたが、ある時、劇場にきてもらうのではなく、自分から動かなければ出会えない観客層がいることを痛感しました。演劇界の外に出てみようと、昨年度参加した〈クロスプレイ東松山〉で、介護士さんや利用者さんと過ごした時間は、「私たちは同じものをみて、違うことを感じている」という至極当たり前のことに対する葛藤と戶惑いの連続でした。

何に価値を感じ、何に希少性を感じるのか。その背景に潜む断絶と向き合い、「違い」を恐れるのではなく、歓迎したい。今回は、作品と一緒にデイサービス楽らくに帰ります。平日はたくさんの利用者さんで賑わう福祉施設が「劇場」になる日をぜひ見届けにきてください。

アーティスト・コメント(竹中香子・ハイドロブラスト)

本公演では、多くの人によりリラックスしてご観覧いただけるよう、筆談対応の実施、上演中の自由な出入り、大きな音のない演出などに配慮しています。また、介助者(付き添いの方)1名はチケット料金が無料となります。

ぜひ、本公演を通じて身近にある「ケア」と「演技」の重なりについて思考を巡らせてみてください。