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ろう者と聴者が共につくる人形劇団〈デフ・パペットシアター・ひとみ〉が3月27〜29日東京で新作上演。全国ツアーに向けたクラファンも実施中
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ろう者と聴者がともにつくる人形劇。45周年を記念した作品上演&クラウドファンディングを実施

舞台芸術は、セリフや音楽といった音声要素に加え、演者の動きや間合い、空間に立ち上がる気配そのものを通して、多層的な表現を生み出します。ろう者(聞こえない人)と聴者(聞こえる人)がともに創作を行う〈デフ・パペットシアター・ひとみ〉は、そうした舞台表現の可能性に向き合いながら、45年にわたり人形劇の表現を探求してきました。

そんな〈デフ・パペットシアター・ひとみ〉の新作人形劇『クラバート』が、〈シアターアルファ東京〉(東京都渋谷区)にて、2026年3月27日(金)から29日(日)まで上演されます。その後、全国各地での一般上演や、小学校・中学校・特別支援学校などを対象とした学校巡回公演も予定されており、現在その実現に向けたクラウドファンディングを2026年2月28日(土)まで実施中です。

多様な表現に向き合い、45周年を迎えた〈デフ・パペットシアター・ひとみ〉

〈デフ・パペットシアター・ひとみ〉は、1980年に結成し、国際障碍者年である1981年から本格的な公演活動を開始。結成当初から一貫して、ろう者と聴者が協働する形で作品づくりを行っています。

劇団が大切にし続けているのが、「障害の有無にかかわらず楽しめる人形劇をつくること」「ろう者と聴者、それぞれの感性を生かした新しい表現に挑戦すること」「子どもだけでなく、大人も楽しめる人形劇を届けること」の3つ。これまでにない“視覚的”な舞台表現をもとめる姿勢が、創作の根底にあります。

異なる世界に生きている河童と人間に焦点をあてた作品『河の童』

〈デフ・パペットシアター・ひとみ〉ではこれまでに、音声言語によるセリフに依らず、手話、字幕、映像、プラカードを使ったセリフ表現や、パントマイムやコンテンポラリーダンスといった他分野とのコラボレーションなど、作品ごとに異なる手法を取り入れながら、人形劇の表現を更新してきました。特定のスタイルに固定するのではなく、「見て感じられること」を起点に、観る人それぞれの想像力に委ねる舞台づくりを行っています。

さらに、音楽も舞台芸術にとって重要な要素のひとつ。耳で聴くことに限定せず、振動やリズム、色とりどりの民族楽器を用いることで、身体全体で感じ取れる舞台体験を生み出してきました。視覚・身体感覚・空間が重なり合う表現は、観客一人ひとりの知覚にひらかれた人形劇として、多様な受け取り方を可能にしています。

『稲むらの火』では、子どもたちへ人形劇で防災教育を伝えた

言葉で表せないものを伝えたい。新作『クラバート』

45周年記念作品として上演される新作『クラバート』は、ドイツの作家オトフリート・プロイスラーによる名作児童文学を原作としています。魔法使いのもとで働く孤児の少年クラバートが、自由と愛を求めて運命に立ち向かう物語は、1971年の発表以来、世界中で読み継がれてきました。

物語では、呪文ひとつで世界を動かせるほど、「言葉」が強い力を持っています。一方で、この作品が最終的に照らし出すのは、言葉では表せない他者への思いやりや愛です。このテーマは、ろう者と聴者、異なる言語や文化をもつ人たちが協働してきた〈デフ・パペットシアター・ひとみ〉の創作活動とも重なります。

主人公であるクラバートのデザイン画(画:本川東洋子)

『クラバート』の舞台化は、国内の専門人形劇団としては初の試みです。脚本・演出には、言葉に頼らない舞台表現を追求してきた演出家・扇田拓也さんが参加。舞台美術は、演劇からダンス、オペラまで実績豊富な杉山至さんが担当し、人形美術は劇団代表であり、ろう者の俳優でもある榎本トオルさんが中心となって手がけます。音楽は、劇団結成から参加するやなせけいこさん。生演奏で観客を物語の世界に引き込みます。

また、今回作品に登場する人形は、著名人やデフリンピック選手からインスピレーションを受け、折り紙のように抽象化された造形が特徴です。時には抽象的に、時には人間のように動き回り、観る人それぞれの想像力を引き出すデザインで構想されています。

初演は2026年3月27日から29日まで、〈シアターアルファ東京〉にて開催されます。東京公演後は全国の劇場での上演に加え、学校巡回公演として約3年間で100カ所の上演を計画中。その制作費や上演活動を支えるため、2026年2月28日(土)までクラウドファンディングが行われています。

支援のリターンには、劇団員からの礼状や記念グッズのほか、稽古見学や人形体験といった、創作の現場に触れられるリターンも用意されています。

45年にわたり、ろう者と聴者がともに舞台をつくり続けてきた〈デフ・パペットシアター・ひとみ〉。新作『クラバート』は、その歩みの集大成であると同時に、これからの社会に向けた問いを投げかける作品でもあります。情報や言葉があふれる現代だからこそ、本作では、人形の動き、音や空間といった多層的な表現を通して、「言葉にとらわれない理解」や「感じ取ること」そのものを舞台に立ち上げようとしています。その試みに、舞台とクラウドファンディングの両面から触れてみませんか。