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ゲイの男性が父親になる。島田隆一監督のドキュメンタリー映画『二十歳の息子』が2023年2月より公開
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2023年2月から映画『二十歳の息子』が全国で順次公開
二十歳の青年を養子として迎え入れたゲイの男性。いわゆる「普通の家族」とは違うあり方を追ったドキュメンタリー映画『二十歳の息子』が、2023年2月11日(土)より〈ポレポレ東中野〉(東京都中野区)で公開。その後、全国順次公開予定です。
少し変わった「家族」の物語
映画『二十歳の息子』は、「父親」になったゲイの男性と、実親を知らない「息子」による、少し変わった「家族」のドキュメンタリーです。
登場人物は、児童養護施設で暮らす子どもたちの自立支援団体〈認定NPO法人ブリッジフォースマイル〉で働く網谷勇気さん(40)と、高校在学中から同団体のプログラムを利用していた渉(わたる)さんです。
幼少期より児童養護施設に預けられ、両親の顔を知らずに育った渉さんが、児童養護施設に紹介された〈ブリッジフォースマイル〉で勇気さんと出会い、高校卒業後も関係を続けてきました。しかし、渉さんが二十歳になった頃に起こした事件で、起訴される事態となったことで、勇気さんは団体の職員として関わることに限界を感じ、彼の生活を立て直す手段として、養子縁組を提案します。
ただ、勇気さんはゲイであるということから、「それまで家族をつくることを特に望んではいなかった」と言います。親を知らずに育った背景に加えて、多感な年頃でもある「二十歳の息子」の父親になった勇気さん。照れ臭さと緊張をにじませながら、2人の新生活が始まります。
監督は『ドコニモイケナイ』『春を告げる町』などの島田隆一さん
本映画の監督を務めるのは、島田隆一さん。ゼロ年代に生きる若者の夢と挫折を描いたデビュー作『ドコニモイケナイ』(2012)で第 53 回日本映画監督協会新人賞を受賞。福島県広野町を舞台に震災の復興とは何かを問いかけた『春を告げる町』(2019)は大きな反響を呼びました。
今回、『二十歳の息子』の制作にあたり、島田監督は二人の共同生活を一年に渡り記録。そこに生じるぎこちなさや軋轢、そして静かな心の交流を、丁寧にカメラに映しとり、それぞれに”普通”の家庭や人生を選択してこなかった・できなかった歳の離れた二人の男性が、関係性をつくるプロセスを見つめてきました。
島田監督の映画作りは「いつも、到底理解することなどできない他者を知りたいと思うところから始まる」と言います。インタビューの中で、二人の関係性について、普通の家族や家庭という価値観に当てはめずに「分からないものを、ただ分からないままに出したかった」と語ります。
一見するとこの映画は、数奇な運命を辿った 2 人の、少し変わった物語のように感じるかもしれません。しかし彼らの人生は、私たち社会によって様々な困難を強いられています。もし今、彼らのように生きる人たちが生きづらさを感じているならば、それは我々が作り上げてきた社会の側に責任があるのです。多様性が叫ばれるようになり、社会の価値観も変容してきました。それに合わせて、家族観が変化することも必然です。私たちは新たな人間関係の構築の仕方を模索しなければいけない時期にきています。この映画をきっかけに、一緒に考えていけたらと思っています。(島田監督)
「家族」になることを通して、関係を築き直す
一方、渉さんとの養子縁組を決めた勇気さんは、いわゆる普通の意味での「家族」になろうとは思っていなかったと言います。家族というものをお互いゼロから体験していく過程を通して、試行錯誤しながら関係を続けていった様子が映像から伺うことができます。
ドキュメンタリー映画が公開されることに対して勇気さんはこのように話します。
私はこの映画を通して言いたいことは特に無いのですが、強いて言えば、良い人だとは思われたくないです。児童養護施設を出た若者を支えるとういう希望のある話なんかではなく、やっぱり別々の他者が新しい関係を作っていく中で、既存の名前のある関係とか様々なことと折り合いをつけてどう生きていくか。その難しさは養子縁組をしてからの 4 年間で実感としてあります。それはもちろん背景として、彼が過去に追った傷、それに伴うストレスとかは関係していると思うのですが、誰かが誰かに支援したり、援助したりするという話ではなく、対等なひとりの人間と人間の「関係の作り直し」が、私としてはテーマではないかと思っています。(網谷勇気さん)
2月11日からポレポレ東中野で公開、その後全国へ
映画『二十歳の息子』は、人が人とどう繋がりをもつことができるのかという問いを投げかけます。
2023年2月11日(土)からポレポレ東中野を皮切りに、全国順次公開です。興味のある方はぜひ劇場へ足を運んでください。
information
映画『二十歳の息子』
上映期間:2023年2月11日〜
上映場所:ポレポレ東中野にて公開以降全国順次
上映時間:86 分
監督:島田隆一
撮影:林賢二/前田大和
編集:遠山慎二
整音:川上拓也
音楽:河北聖子
製作:JyaJya Films
配給:ブライトホース・フィルム
文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業
© JyaJya Films
Webサイト:映画公式ページ
<出演者>
網谷勇気(あみや・ゆうき)
1978 年、東京都生まれ。情報サービス大手企業、IT ベンチャー企業などを経て、現在は児童養護施設から社会に巣立つ子どもたちの自立支援に取り組む NPO 法人「ブリッジフォースマイル」の職員。2014 年、NPO 法人「バブリング」を設立。”ひとごと”を”じぶんごと”として捉えるための仕掛けを提供している。
網谷 渉(あみや・わたる)
1998 年生まれ。0歳で養護施設に預けられる。両親の記憶は一切ない。幼少期は施設や里親に預けられるが、里親からの虐待、施設でのいじめなどを経験する。2018 年、網谷勇気と養子縁組を行い、正式に家族となる。
<監督>
島田隆一(しまだ・りゅういち)
ドキュメンタリー映画『1000 年の山古志』(監督・橋本信一/2010 年公開)に助監督として参加。以降、フリーの映像制作者として、多くの企業用PR映像を手がける。2012 年 11月、ドキュメンタリー映画『ドコニモイケナイ』を監督。同作品で 2012 年度日本映画監督協会新人賞を受賞。2014 年、ドキュメンタリー映画『いわきノート』に編集として携わる。2016 年、プロデューサーとして参加した作品『桜の樹の下』が公開。本作品は、ドイツの映画祭ニッポン・コネクションにて観客賞と審査員特別賞を受賞し、第 71 回毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞を受賞した。2020 年、福島県双葉郡広野町を舞台としたドキュメンタリー映画『春を告げる町』が公開。同作は山形国際ドキュメンタリー映画祭 2019ともにある Cinema with US 部門、第 11 回 DMZ 国際ドキュメンタリー映画祭アジアコンペティション部門正式出品。2022 年 1 月、プロデューサーとして参加したドキュメンタリー映画『帆花』(監督・國友勇吾)が公開。日本映画大学専任講師。
Information
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