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被爆80周年記念。戦争や原爆の記憶をテーマにした展示「記憶と物」が6月21日から〈広島市現代美術館〉で開催
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空の台座の上に、展覧会タイトルが載った、チラシ画像

戦争や原爆の記憶をテーマにした展覧会

太平洋戦争が終結した1945年の夏から、今年で80年。節目の年として戦争と平和にまつわる話題が増えるなか、戦争を体験している人も少なくなり、遠い昔の出来事と感じることもあるかもしれません。

そうした戦争や被爆にまつわる「記憶」と美術作品をはじめとした「物」との関係をテーマにした、特別展「被爆80周年記念 記憶と物 ーモニュメント・ミュージアム・アーカイブー」が、2025年6月21日(土)から9月15日(月・祝)まで、〈広島市現代美術館〉で開催されます。

本展では、モニュメント、ミュージアム、アーカイブといった記憶の形成に関わる物や制度に関心を寄せてきた現代の作家の試みや、原爆の記憶を想起させる美術館のコレクションを紹介します。

展示初日には、参加アーティストによるトークイベントを実施。また学芸員によるギャラリートークや、アートナビゲーターによる展示解説も行われます。

〈広島市現代美術館〉とは

〈広島市現代美術館〉は、全国で初めて、現代美術に本格的に取り組む公立美術館として1989年5月にスタートした美術館です。建物は、建築家・黒川紀章さんによって設計され、広島市内を見渡す緑豊かな比治山公園の中に位置しています。

2023年3月には、より使いやすく過ごしやすい、開かれた美術館を目指して大規模修復を行い、リニューアルオープン。さまざまな人にコレクションに親しんでもらうための取り組み(※注)も行っています。美術館の収集の重要な軸のひとつは、原爆によって被爆した広島という土地と現代美術の関連を示す作品。今回の展示では、コレクションの中から、原爆の記憶にまつわる作品を展示します。

※作品の印象などを参加者同士で話しながら観る「対話しながらみる、いどばた鑑賞会」(毎月第1日曜日10:30〜)、小さな子どもと一緒に気兼ねなく美術館に足を運んでほしいという願いを込めた「ベビーカー アートナビ・ツアー」(毎週水曜日10:30〜)、誰でもコレクション展を無料で鑑賞できる「ハロー!コレクションデー」(毎月第3日曜日)などを実施。

石の彫刻
イサム・ノグチ《広島の原爆死没者慰霊碑(1/5模型)》1952/1991

現代美術作家による、過去との対話

加えて本展では、「過去との対話」というテーマで、記憶の形成に関わる物や制度に関心を寄せて作品を発表してきた作家を招き、各作家たちが過去に向き合う活動も展示します。

全国各地でフィールドリサーチを行い、制作と対話の場づくりを行ってきた映像作家の小森はるかさんと画家・文筆家の瀬尾夏美さんによるユニットは、以前〈せんだいメディアテーク〉で行われた展示「ナラティブの修復」で発表した「11歳だったわたしは」の広島編を、ワークショップを通して制作しています。

机を囲んで話し合っている様子の写真
小森はるか+瀬尾夏美《11歳だったわたしは 広島編》(2023-)制作風景

その他に、忘れ去られた過去の記憶や場所、現代社会で見えにくくなっている問題などをリサーチして、映像やインスタレーションを制作する毒山凡太朗さん、戦争や核時代に抑圧されてきた現代に至るまでの事実や記憶を、寓話的要素を用いて再構築した作品を制作する蔦谷楽さん他、黒田大スケさん、フィオナ・アムンゼンさんら現代美術作家計5組を招聘アーティストに迎えます。

白と黒で描かれた作品
蔦谷楽《Spider’s Thread: This Landscape》 2020 ©Gaku Tsutaja, Courtesy of Ulterior Gallery

また美術館のすぐそばに位置する空の台座に、かつて設置されていた《加藤友三郎元帥銅像》と、その作者による現存する作品、そして再建された複数の加藤友三郎の像の事例も紹介。

過去の営みと対話的に向き合う現代のアーティストの姿勢と、表現や制度を通して形成されてきた戦争の記憶、当事者性、過去を継承する可能性にまつわる表現から、対話や建設的な議論・思索が生まれることを目指します。

モノクロの写真
上田直次《加藤友三郎元帥銅像》1935

アーティスト・トーク、ギャラリートーク、展示解説を開催

6月21日(土)14:00〜15:30には、出品作家を展示室に迎え、リレー形式のアーティスト・トークを行います。参加予定アーティストは、黒田大スケさん、毒山凡太朗さん、蔦谷楽さん、フィオナ・アムンゼンさん、小森はるかさんと瀬尾夏美さんです。

また、担当学芸員によるギャラリートークは7月12日(土)と8月23日(土)の15:00〜16:00、アートナビゲーターによるツアー形式の展示解説は、毎週土、日、祝日の11:45〜12:15と14:45〜15:15に開催されます。(6/21、22、イベント開催時のぞく)

いずれのイベントも開催場所は展示室内で、申込は不要。参加費は無料のため、展覧会のチケットのみご用意ください。

建物や植物など、すべて白でつくられた模型
丹下健三《広島平和記念公園模型》(1/300縮尺)1950/2015

戦後80年。少しずつ遠い出来事になっても、戦争、被爆、そうした歴史や記憶の続きに、今があることには変わりません。私たちは過去に、どのように向き合うことができるでしょう。ぜひこの夏広島を訪れ、アーティストたちが表現する、「記憶」と「物」に触れてみませんか。