ニュース&トピックス

札幌で生まれた“福祉発プロダクト”のECサイト「Omusubi」。お菓子や雑貨など、ストーリーとともに紹介
サービス紹介

  1. トップ
  2. ニュース&トピックス
  3. 札幌で生まれた“福祉発プロダクト”のECサイト「Omusubi」。お菓子や雑貨など、ストーリーとともに紹介

Omusubiのメインビジュアル画像。「むすぶ、つながる、こころ晴々」というコピーと、北海道らしさのある自然風景のなかに、三角おむすび型の家と人々が佇むイラスト。
「いいもの、いいこと、いいひとをぎゅぎゅっと結ぶ」を合言葉にするECサイト「Omusubi」のトップページ画像。季節ごとに色味や背景が変わります

札幌の就労継続支援事業所でつくられた“福祉発プロダクト”に出会える「Omusubi」

障害や病気などの理由で一般企業での就労が困難な人が働く「就労継続支援事業所(A型・B型)」は、全国に約2万事業所(※注1)あるといわれています。各施設ごとの特徴を生かしたさまざまな事業が行われていますが、なかには日々ものづくりに取り組む事業所も。

例えば、良質な原材料にこだわったパンやお菓子、描き手・つくり手の感性がほとばしるイラスト・絵画・造形などのアート作品、ダイナミックさ、繊細さ、緻密さに目を奪われる織物・刺繍・陶芸作品、ユニークで愛らしい小物や雑貨など。その事業所でしか生まれ得ない“福祉発プロダクト”は近年少しずつ注目されつつありますが、実際には出会う機会はそう多くありません。

北海道札幌市にも数多くの就労継続支援事業所があり、魅力的なプロダクトがさまざまに制作されています。そうした同市発の商品を集めたECサイト「Omusubi(おむすび)」が2024年9月にオープンしました。

焙煎コーヒー、北海道の野鳥・シマエナガをモチーフとしたぬいぐるみやしおり、クッキー、革製品など、Omusubiで扱う商品が6つ並んだ写真。
※注1:厚生労働省・令和4年 社会福祉施設等調査の概況(PDF)

つくり手が正当な対価を受け取れる社会を目指して

ECサイト「Omusubi」を運営するのは、1987年に創業し、同市で社会福祉事業に関わるシステム・ソフトウェアの開発・販売を行ってきた〈プロテック株式会社〉。

仕事がら、福祉事業所をさまざまに訪ねることの多い代表取締役の小松麻衣さんは、事業所でつくられた商品が、販路や販売機会の少なさから人の目に触れず、行き場を失い、在庫だけが増えていく状況を見聞きし、長年気がかりに感じていたといいます。

また、2022年度の北海道において、就労継続支援B型事業所で働く人の工賃(給料)は、時給に換算すると平均275円(※注2)。実際に、福祉事業所の運営者が工賃アップについて悩む声や、「人並みに稼げるようになりたい」「自分の働いたお金で趣味を楽しみたい」「商品を買ってくれたお客さんとのつながりを感じてみたい」といった利用者の声も耳にしてきました。

システム開発の枠を超えて、もっと現場を支援できないか――そんな思いから〈プロテック〉が立ち上げたのが、ECサイト「Omusubi」です。

まずは札幌市内の9つの福祉事業所に声をかけ、「日常の暮らしに寄り添うちょっといいもの」というコンセプトのもとECサイトを企画。各事業所からは、レザー製の小物、カラフルな絞り染めのバッグ、北海道産小麦を使った焼き菓子、生豆の選別から焙煎まで行うオリジナルコーヒー、北海道に生息する野鳥“シマエナガ”をモチーフとした雑貨などが集まり、オンラインでの販売がスタートしました。

同時に、商品が生まれたストーリー、つくり手の思いなどを取材して紹介するブログを立ち上げ、実際に手にとって購入したような安心感につながる情報を発信。

※注2:北海道における平均工賃

「Omusubi」のプログページのキャプチャ画像
商品紹介、ものづくりのストーリー、スタッフのお気に入りアイテム、イベント情報などが紹介されている「Omusubi」のブログ

さらに、〈プロテック〉の得意分野であるデジタル運用やデータ解析を活用し、サイトに流入してくるユーザー行動などを分析。それらのデータをもとに新たな商品開発につなげたり、売れ行きの芳しくない商品を洗い出し、パッケージデザインの改良やリブランディング、価格設定の見直しなども行っています。

「障害のある人が手がけた商品が正しい価格で販売され、購入者に喜ばれ、その正当な対価をつくり手が受け取れる社会的な仕組みを確立させたい」と小松さんは語ります。

マルシェへの出展の風景。代表の小松さんが来場者に商品の説明をしている。
オンライン販売だけでなく、マルシェやイベントなどにも積極的に出店。商品を実際に手に取ってもらいながら生産者の思いを伝え、購入者から得た声も生産者に届ける活動も行っています

新商品の開発や、ユニークな企画も続々!

定番商品の販売に加え、「Omusubi」のサイトではさまざまな企画も実施されています。

2月22日の「猫の日」には、札幌市内の5つの福祉事業所と一から企画・制作した猫モチーフのオリジナルグッズを販売。新商品を開発するなかで、事業所や利用者側も「市場の求める商品とはなにか」に向き合い、熟考する機会になったといいます。

コーヒー、焼き菓子、キーホルダー、革製品、刺繍製品など、猫をモチーフとした商品を並べた画像。
2025年2月22日から販売スタートとなった猫モチーフのオリジナルグッズ(現在は全商品の販売が終了)
「木漏れ日のなかで、わたしをととのえる。」というコピーの入った、Omusubiの「アウトドア特集」のビジュアル画像。
現在、夏の野外アクティビティにぴったりな商品を集めた「アウトドア特集」をリリース中。上記写真のような撮影も「Omusubi」側で担当。販路開拓だけでなく、商品の見せ方、伝え方にも力を入れ、福祉事業所やつくり手、それらを購入する人をつなぐ「ハブ」を目指しています

また2025年5月には、サイトで扱う焙煎コーヒーが、イベント出店時の試飲をきっかけに、地域のコミュニティカフェで採用されることに。「Omusubi」でのさまざまな活動が実を結び、福祉発プロダクトが多くの人の目に、手に、触れる機会が広がりつつあるようです。

ECサイトに掲載してきた商品数は、スタート当時の約30点から総計82点と大幅に増え、これまでの商品販売数は700点を超えます(2025年6月現在)。今後、取り扱うアイテムを道内全域、はたまた全国の福祉事業所の商品に広げ、工賃問題、販路の拡大、適正な商品価格の設定など、福祉事業所だけでは解決しづらい課題に寄与していきたいという小松さん。

北海道らしさのあるアイテムも多数揃う「Omusubi」。ぜひサイトにアクセスし、福祉発プロダクトに出会い、その魅力に触れてみませんか。