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最期に聞きたい音はなにか。訪問看護師・写真家の尾山直子さん写真展「耳をすます」が4月12日 〜 5月11日京都で開催
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展示「耳をすます」アイキャッチ画像

耳から感じる“生と死の物語”。写真展「耳をすます」が京都で開催

話し声、波の音、街中のざわめき、動物の鳴き声、機械音、身近な人の笑い声。日常には、多くの“音”が溢れています。もし「最期に聞きたい音は何か」と問われたら、あなたはなんと答えるでしょうか。その問いの答えは、もしかしたら人生の記憶と深く結びついた音なのかもしれません。

人が持つ五感——視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のうち、聴覚は、命を終える最期の瞬間まで残ると言われています。訪問看護師であり、写真家としても活躍する尾山直子さんが出会った方々の「耳」を撮影した写真展「耳をすます」が、京都にある商業施設〈GOOD NATURE STATION〉のギャラリーにて開催されます。

「最期に聞きたい音は何か」。その問いから出発した写真展

2025年4月12日(土)~2025年5月11日(日)の約1ヶ月間開催される本展では、尾山さんが出会った20代から100代までの60名に「最期に聞きたい音は何か」という問いを投げかけ、その答えとともに耳を撮影した写真を展示します。

展示作品画像

顔や身体にそれぞれの個性があるように、実は耳にもその人“らしさ”があります。同じかたちは存在しない耳のひとつひとつから、「生きること」のあたたかさや尊さが感じられます。本写真展が「老い」や「死」について考えるきっかけとなり、誰しもにいつか訪れる「そのとき」に思いを馳せる機会となるのではないでしょうか。

また、会場では展示作品を収録した写真文集『耳をすます』を販売。写真文集には、60名の耳の写真とともに、「最期に聞きたい音は何か」という問いから見えてきた様々な死生観が綴られています。200冊限定の販売となるため、気になる方は早めに足を運んでみてください。

写真文集『耳をすます』画像
写真文集『耳をすます』 3800円(税込)
写真文集『耳をすます』画像

暮らしの中にある「老い」や「死」に触れる機会を

主催する尾山直子さんは、訪問看護師として多くの人々の暮らしに寄り添いながら、その経験を写真作品として表現する写真家でもあります。現在は、東京の世田谷にある〈桜新町アーバンクリニック〉に勤務しています。

尾山直子さん画像

もともと写真を撮ることが趣味だった尾山さんは、2014年に桜新町アーバンクリニック在宅医療部の5周年記念誌で撮影を担当しました。その際、事務長からの「仕事の中で、家族写真の撮影をやってみては?」との言葉がきっかけとなり、働きながら写真を学び、写真家として活動を始めました。

尾山さんの作品は、「老い」や「死」というテーマを扱いながらも、それらを特別視するのではなく、日常の延長線上にあるものとして捉えています。それは、訪問看護師として、さまざまな人の最期に立ち会い、自宅やなじみの場所で最期を迎える人々がいることを実感したからです。しかし一方で、病院や施設で最期を迎える人が増え、暮らしのなかから「死」が遠ざかっている現実にも気づくようになりました。

そうした現代社会において、尾山さんの作品は再び「老い」や「死」を暮らしの中に取り戻し、多様な死生観に触れる機会を提供しています。

老いて、いのちを閉じていく。誰もがいつかは辿るその道のりを、先に歩んでいる人たちが、全身を使って私たちに教えてくれているということだから。

それに対して目をそらさず向き合うことは、本当に大きな学びになるし、いのちの終わりを受け入れる土壌をもつ人になることは、人間としての成長につながる。相手から受け取ることもたくさんあるんですよね。

〈こここ〉『大切な人の変化に戸惑ったとき、どうすれば? 写真家/訪問看護師 尾山直子さんをたずねて』より

昨年の夏には、〈桜新町アーバンクリニック〉のスタッフたちとともに書籍『人のさいご』を発行。写真やイラスト、文章とともに、いつの日か訪れる「さいご」に向けた人の変化を綴っています。

尾山さんのレンズを通して映し出される「老い」や「死」に触れてみることは、ともすれば日常の中にある小さな幸せや人との繋がりの大切さを再認識することに繋がります。写真展「耳をすます」で、日常の延長にある、それぞれの「最期」について思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

「耳をすます」フライヤー画像