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家庭でのケアをテーマにした竹中香子さんの作品「サテライトコールシアター」にて、ケアの物語を募集中。応募締め切りは12月26日
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東京のビルの町並みを背景にした写真に、「サテライトコールシアター」のタイトルが白字で書かれている
2025年7月に上演される作品の参加者を、12月26日まで募集中です

「家」でのケアにフォーカスしたインスターレーション作品が、2025年夏発表

子育て、介護、ペットのケア、植物の世話。家庭の中には、さまざまなケアの対象とその方法があります。一方でそれらは、家庭の外からはなかなか見えづらいものになっているのではないでしょうか。

そうした「家」でのケアにフォーカスしたインスタレーション作品「サテライト・コール・シアター」が、アートセンター〈BUG〉(東京都千代田区)で2025年7月に発表されます。

現在、作品の制作に向けて、「家」でのケアに関する経験を元にした物語を語っていただける方を募集中です。プロ・アマ問わず、何かを表現してみたい、自身のケアの物語と出会い直し、ともに考えてみたい方であればどなたでも応募が可能。締切は2024年12月26日(木)18:00です。

プロジェクトを企画する〈ハイドロブラスト〉と竹中香子さん

本企画は、〈株式会社リクルートホールディングス〉が運営するアートセンター〈BUG〉と〈一般社団法人ハイドロブラスト〉による企画です。

〈一般社団法人ハイドロブラスト〉は、2019年に映画監督の太田信吾さんが設立した、映像と演劇を中心に、アートプロジェクトを企画・プロデュースする団体。2022年に俳優の竹中香子さんがプロデューサーとして加入しました。ハイドロブラストとは、高水圧をノズルから鋳物の表面に噴射し、掃除をする方法のこと。社会の中に規定された境界や断絶、固定観念を芸術という手段を用いて噴射することで、霧散・除去・洗浄し、社会の多様性を担保することにつなげていきたいという思いで命名されています。

プロデューサーを務める竹中香子さんは、2016年に日本人としてはじめてフランスの国立高等演劇学校の俳優セクションに合格し、以後、フランス俳優国家資格やフランス演劇教育者国家資格を取得するなど、パリを拠点に活動してきました。現在は日本でも俳優として活動するほか、創作現場におけるハラスメント問題に関するレクチャーやワークショップを実施。「演劇を、自己表現のためでなく、他者を想像するためのツールとして扱うこと」をモットーにプロジェクトの企画を行っています。

竹中さんの上半身のポートレート
プロデューサー・俳優・演劇教育の領域で活動する竹中香子さん

「サテライト・コール・シアター」とは 

〈ハイドロブラスト〉が〈BUG〉で2025年夏に発表する「サテライト・コール・シアター」は、架空のコールセンターをイメージした作品です。参加者は、会期中に会場=コールセンターに電話をかけ、自身のケアに関する物語を語ります。会場を訪れた観客は、コールセンターの職員として、物語に耳を傾けます。

観客がコールセンターの職員として物語を受け取る立場になることで、ケアに関する新たな視点を得るとともに、これまで無視されがちだった家庭でのケアに従事する人たちの声に耳を傾け、その役割を再評価し、社会全体の理解とサポートの輪を広げることを目指します。

また、「サテライト・コール・シアター」で生まれた物語たちは、2025年以降、俳優によって演じられ、パフォーマンス作品につながっていくことを目標としています。

家庭内でケアに従事する「ホーム・ケアリスト」を募集中

今回募集している参加者は、自身のケアに関する物語を語る、家庭でのケアに従事している方です。自宅で子育てや介護をしている方、またはペットや植物の世話をしている方など。自身のケアにまつわる物語をつづりたい方、誰かに聞いてほしい方、客観的に自身のケアを捉えてみたい方であれば、国籍、年齢、居住地、性別に関わらず、どなたでも応募できます。

本プロジェクトでは、家庭内でのケアを担う人々について、その専門性と重要性を再評価し、社会の中で尊重されるべき仕事であることを示すために、「ホーム・ケアリスト」という新たな名前で呼ぶことを提案します。

参加する「ホーム・ケアリスト」は、2025年2月に創作に向けた2回のプレワークショップに参加。以後2025年3〜6月にかけて、計6回のナラティブパートナーとの個別セッションを通じて、15分ほどのケアに関するモノローグの創作・執筆を行います。最終的に、2025年7月4日〜21日の間、1日2回15分ほど電話にて完成したモノローグを話します。

モノローグ執筆に寄り添う「ナラティブパートナー」

劇作や執筆の経験がなくても参加が可能です。モノローグの執筆過程には、メンター(相談相手)としてナラティブパートナーが寄り添います。ナラティブパートナーを務めるのは、文筆家の内橋華英さん、編集者の佐々木将史さん、アートトランスレーターの田村かのこさん、演出家の萩原雄太さん、劇作家・演出家・衣裳作家の南野詩恵さんら、5名の編集や劇作のスペシャリストです。

ナラティブパートナーは自身の経験値をもとに導くのではなく、あくまでも「傾聴」と「対話」を通して、ホーム・ケアリストたちの自発的な創作をサポートする役割を担います。また、編集者や、舞台芸術の場で客観的な視点をサポートするドラマトゥルク的な役割も兼ね、対話を重ね、執筆に伴走しながら、モノローグの完成をサポートします。

ビルの1階にある会場を外から撮影した写真
会場となる〈BUG〉は東京駅八重洲南口から徒歩3分という、東京の中心地にあります

「スマートシティ」と呼ばれる東京。その「スマート」の語源が「痛み」であることに触れながら、企画者の竹中さんは語ります。

“東京の真ん中に期間限定で現れる「サテライト・コール・シアター」では、観覧者が自らコールセンターの職員となり、それぞれの自宅でケアに従事するものたちからの電話を受け、それらの「物語」を社会に渡していく役割を担う。彼らの叫びや痛みを「シアター/劇場」という場で受け止めることで、東京は「スマートシティ」から「ケアリングシティ」に生まれ変わることができるのだろうか。”

上演される場所は東京ですが、参加は全てオンラインから可能です。プロジェクトが気になる方、自身のケアにまつわるできごとに向き合ってみたいと考える方は、応募を検討してみてはいかがでしょうか。