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「さばかれえぬ私(わたくし)へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展」が〈東京都現代美術館〉で6月18日まで開催中
展覧会情報

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展示のキービジュアル

それぞれの領域をもつ、期待のアーティストによる二人展

〈東京都〉と〈トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)〉は、2018年より中堅アーティストを対象にした現代美術の賞〈Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)〉を実施しています。

第3回となるTCAA 2021–2023の受賞者として選出されたアーティストの志賀理江子さん、竹内公太さんによる展覧会「さばかれえぬ私(わたくし)へ / Waiting for the Wind」が〈東京都現代美術館〉の企画展示室 3Fにて6月18日(日)まで開催中です。

〈Tokyo Contemporary Art Award〉とは

〈Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)〉は、国内の中堅アーティストを対象に、海外での展開も含め更なる飛躍とポテンシャルが期待できる方に贈られる現代美術の賞です。 

賞の特徴は、アーティストのキャリアに注目している点です。なかでも「最適な時期に最善の支援内容を提供する必要性」を重視し、選考の過程では選考委員によるアーティストのリサーチやスタジオ訪問を経て、制作の背景や作品表現、キャリアステージへの理解を深めた上で行われます。受賞者は賞金300万円のほかに、海外での活動支援や、〈東京都現代美術館〉での展覧会実施、モノグラフ(作品集)の作成など、複数年に渡って継続的な支援が受けられます。

モノグラフは、アーティストの活動の軌跡を紹介するための冊子です。作品画像、アーティストによるテキスト、寄稿者によるテキストなどをバイリンガルで掲載し、PDFで公開しています。

展覧会「さばかれえぬ私へ」について

展覧会「さばかれえぬ私(わたくし)へ / Waiting for the Wind」は、第3回TCAAの受賞者である志賀さんと竹内さんによる二人展です。受賞者それぞれが個々に作品を発表する場を設けるのではなく、タイトルの考案をはじめ、お互いに意見交換しながら、各々が扱うテーマについて同時に制作を進めました。このような形式でTCAA受賞者が受賞記念展を共同で開くのは初めての機会となります。

志賀理江子さんは、1980年愛知県生まれ。2008年に宮城県美里町へ移住し、その地に暮らす人々と出会いながら、「人間社会と自然の関わり」、「死の想像力から生を思考すること」、「何代にも溯る記憶」などを題材に制作を続けています。

志賀理江子さん

2011年に東日本大震災を経験してからは「人間精神の根源」もテーマに加わり、さまざまな制作によって追及してきました。近年は2年間に渡って宮城のスタジオを開放しながら、さまざまな人とともに、震災に関するトーク、レクチャー、ワークショップを重ねています。TCAA受賞記念展に合わせて開催しているオープンスタジオでは、「復興」が地域や人々にどんな影響をもたらしたのか、その内実について知るための資料や記録の展示を行っています。

志賀理江子《風の吹くとき》2022-2023、ビデオ・インスタレーション、エンドレス 撮影:髙橋健治 画像提供:トーキョーアーツアンドスペース

今回の展示では、新作の映像作品《風の吹くとき》をはじめ、東京から三陸、青森の太平洋側先端までの沿岸部の地図を土台に、写真や絵、メモなどが混在する大型のコラージュ作品《あの夜のつながるところ》など、震災後の12年間を、刻々と変化し続ける志賀さん自身の内面や思考も含めて可視化することを試みます。

志賀さんは開催にあたりこのようにコメントしています。

その経験(2年間宮城県のスタジオを開いてきたこと)は、2011年の震災後、大きな資本と抗うことが困難な国家の計画に圧倒され続けた、この12年間の復興を、近代の抑圧としてだけ考えるのではなく、どこかではこれまでとは違う角度から考える発想や、さまざまな道、もしくは拮抗するような力が生まれ、それぞれが密につながることがあるという可能性を示唆する営みでもありました。この自らの体ひとつを鏡のようにして、この時間に起こった出来事の蓄積から、展示室へ照らし返すような展示ができればと思っています。

志賀理江子《あの夜のつながるところ》2022、インスタレーション 撮影:髙橋健治 画像提供:トーキョーアーツアンドスペース

竹内公太さんは、1982年生まれ、福島県在住。地図やストリーミング映像、ドローンに搭載されたUAVカメラなどの多角的な視点を用いて、建築物や石碑、彫刻、公文書、郷土史家や目撃者のインタビューなどに残された「人々の記憶」を表現し、メディアと人間との関係を探る活動をしています。

竹内公太さん

今回の展示では、第二次世界大戦時に日本が開発した兵器「風船爆弾」をテーマに、兵器と実寸大の直径約10mの新作インスタレーション《地面のためいき》や、竹内さんのリサーチによって明らかになった爆弾の着地点で撮影された写真作品《シューティング(コールドクリーク)》を発表。

竹内公太「さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023受賞記念展」展示風景、東京都現代美術館、2023 撮影:髙橋健治 画像提供:トーキョーアーツアンドスペース

竹内さんは展覧会の開催にあたり、以下のようにコメントを寄せています。

2022年9月には、風船を放った場所のひとつである福島県いわき市で、美術館や博物館にお願いして市民の皆さんと歴史を探る散策会をしてもらいました。海を隔てた人たちとのコミュニケーション手段が発達しても、人類は兵士や爆弾を送ることを止めないことが、連日の報道で伝えられています。いま、かつて風船が飛来した地面を想像して絵を描いています。

ほかには、この兵器の工場が所在した場所のひとつであり、竹内さんが現在拠点にしている福島県いわき市に焦点を当てた作品も展示します。

竹内公太《三凾座の解体》2013、映像インスタレーション、33分23秒 撮影:髙橋健治 画像提供:トーキョーアーツアンドスペース

5月は臨時の夜間開館も

展示会場である〈東京都現代美術館〉は通常開館が10時から18時までのところ、5月13日から28日の週末6日間(13日・14日、20日・21日、27日・28日)は臨時で開館が2時間延長し、20時まで展示を見ることができます。

また、志賀さんによるギャラリートークも、13日・14日(ともに11:00~12:30、各回定員30名、要事前申込、先着順)で行われる予定です。開館時間が長くなるタイミングは、ゆっくりと作品を味わえるチャンス。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。