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見える人も見えない人も楽しめる「点字つき絵本」に触れよう。さわって楽しむ絵本展、〈ナルニア国〉で2022年9月27日まで
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【写真】ナルニア国の入口。ドアの手前左側に、展示のポスターとナルニア国の憲章が掲示されている
〈教文館〉ナルニアホールで開催中の、「さわって楽しむ絵本展~点字つき絵本の出版と普及を考える会20周年記念」(2022年9月2日〜27日)

指先から伝わる物語の楽しさを味わう絵本

『ぐりとぐら』『しろくまちゃんのほっとけーき』など、多くの人が目にしたことのあるロングセラーの絵本に、「点字」がついた本があることをご存知でしょうか?

文章を点字で表しているだけではなく、凹凸のあるインクを使って絵を立体的に表現するなど、指先で触覚を楽しめるよう工夫がされています。他にも、紙に凹凸を加えて本の形になるよう製本の仕方にこだわっていたり、触った時に伝わりやすいように絵の分量や位置を調整していたり。

そんな「点字つきの絵本」にまつわる歴史や知恵がたっぷり紹介され、出版社やクリエイターの試行錯誤も知ることができる展示が、東京都銀座〈子どもの本のみせ ナルニア国(以下、ナルニア国)〉で2022年9月27日まで開催中です。

【画像】絵本展のポスター。紹介されている絵本が中央に並ぶ
〈ナルニア国〉は、1885年に創業した書店〈教文館〉の中にある、子ども向けの本の専門フロアの名前。子どものための書籍を約15,000冊取りそろえている

目の見えない人と見える人が、いっしょに楽しむための〈点字つき絵本の出版と普及を考える会〉

「さわって楽しむ絵本展」は、点字つきの絵本をより良い形で出版できるように日々情報交換を行う〈点字つき絵本の出版と普及を考える会〉の、設立20周年を記念して開催されます。

同会は、“目の見えない人と見える人がいっしょに絵本を楽しめるようになること”を目指して2002年に発足。その活動を通じて、2008年には『はらぺこあおむし』(偕成社)、2009年には『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)、2013年には『さわるめいろ』(小学館)や『ぐりとぐら』(福音館書店)、2021年には『いない いない ばあ』(童心社)などが点字つき絵本として出版されました。2022年現在は、約30冊の点字つき絵本が出版されているといいます。

会のメンバーは、出版社、印刷会社、書店、点訳ボランティア、作家、画家、デザイナー、研究者など、多岐にわたる

会の発足者である岩田美津子さんは、〈特定非営利活動法人 てんやく絵本ふれあい文庫〉の代表として、手作りの点字つき絵本の無料貸し出しも年間6,000冊以上行っています。きっかけは、目の見えない岩田さんご自身と、目の見える岩田さんのお子さんが一緒に楽しめる絵本が欲しいと、手作りの点字つき絵本製作を始めたこと。それを「てんやく絵本」と名付けて、今はボランティアチームと一緒に製作しています。

一般に市販されている絵本を使い、文章は透明なシートに点訳を施して原本の活字部分に貼付したり、同じシートで絵を形づくって貼りこんだり、説明文を書き添えたり。「てんやく絵本」の製作過程で生まれた細かい知恵は、〈点字つき絵本の出版と普及を考える会〉の活動にも生かされています。

2022年9月27日まで開催中「さわって楽しむ絵本展」

今回の展示では、「てんやく絵本」の歴史を紹介するオリジナル漫画『岩田美津子ものがたり』のパネル、「なぜ絵と触図がずれているの?」「どんな人が読んでいるの?」「なぜ値段が高いの?」などの点字つき絵本にまつわるさまざまな疑問にQ&A形式で応えるパネル、

【写真】壁にパネルが並ぶ
Q&Aでは、具体的な作品例や道具の写真などを交えながら、15個のパネルの中でさまざまな知恵を紹介
【写真】『ぞうくんのさんぽ』の本文ページのイラスト上に点字が黒い点で重ねられている
【写真】凹凸のパターン案がいくつも並列されている
『ぞうくんのさんぽ』(福音館書店)の点字つき絵本の製作過程。どんな凹凸の模様がいいのか試行錯誤をしている様子がうかがえる

また、展示は写真撮影もOK(※注)。「この企画を広く知っていただきたい」という会のメンバーの願いから歓迎しているとのことで、今回の展示で使用したパネルについて、図書館や学校での貸し出しも相談可能です。

(※注 漫画部分のみ、全パネルの撮影は制限あり)

さらに、会期中に点字つき絵本を購入すると、『ノンタン』(偕成社)のイラストのついた点字一覧表がプレゼントされるキャンペーンも実施中です。

子どもと本の出会いをつくる〈ナルニア国〉

会場の〈ナルニア国〉は、子どもと本との幸せな出会いの場となることを願い、1998年に〈教文館〉につくられたフロア。こぐま社創業者の佐藤英和さんと、児童文学作家で、「パディントンの本」シリーズなどの翻訳でもしられる松岡享子さんによる「ナルニア国憲章」に、その思いが表現されています。

『ナルニア国は こころが 自由になれる空間です。なぜなら ここにある本は私たちのこころを解き放ちどこへでも飛んでゆける想像力の翼を与えてくれるからです。』
(「ナルニア国憲章」の一部より)

同店舗では、過去には『ぐりとぐら』の点字つき絵本の刊行記念講演を実施したり、点字つき絵本の販売コーナーも常設したりと、点字つき絵本の普及の一翼を担ってきました。

展示は9月27日までですが、展示終了後も〈ナルニア国〉では、点字つき絵本を取り扱っています。たくさんの工夫が施された、触って楽しめる点字つき絵本を体験しに訪れてみるのはいかがでしょうか。

【写真】展示室内の様子。中央のテーブル一面に、点字つき絵本が平置きされている