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旧神奈川医療少年院の仮囲いを彩る。「カベ トビコエル!展 vol.1」が2月11日〜13日まで開催
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〈旧神奈川医療少年院〉の仮囲いをメッセージ作品で彩るプロジェクト「カベ トビコエル!」の展覧会が開催されます

少年院の仮囲いの向こう側を想像する展示

少年院とは、家庭裁判所で保護処分として送致を言い渡された20歳未満の人を収容するための施設です。日頃ニュースで少年犯罪について目にすることはあっても、少年院がどんな場所か、具体的に想像できる人は少ないのではないでしょうか。

そして、少年院の中でも、障害のある人を収容する「医療少年院」という場所があります。「医療少年院」は全国に数施設しかなく、その1つが、〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉が仮囲いのデザインを担当した、〈旧神奈川医療少年院〉でした(注)。

注:2015年に施行された現行少年院法の少年院種別では、〈神奈川医療少年院〉は第三種少年院(旧称・医療少年院)ではないとされている。〈神奈川医療少年院〉は、専門的な治療教育を必要とする人などを対象に行う、特殊教育課程を設置していた。

かりがこい
〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉がデザインした、〈旧神奈川医療少年院〉の仮囲い

壁によって隔たれた少年院の中と外の世界。両者を隔てる壁の存在に問いを投げかけ、デザインワークに取り組んできた仮囲いの装飾が、2021年11月に完成しました。それらのプロセスについてまとめた壁新聞が、2022年2月11日から13日まで、〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉が運営する〈​​gallery TSD〉(東京都板橋区)で「カベ トビコエル!展 vol.1」として展示されます。

デザインで課題の解決を目指す〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉

〈神奈川医療少年院〉は2019年に閉所。以降、跡地利用についての議論がなされてきましたが、2021年に〈神奈川少年更生支援センター(仮称)〉の設立が決まり、建設までの間、国有地への不法侵入等の防止のため仮囲いが設置されました。

その仮囲いのデザインを〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉が担当したきっかけは、法務省矯正局少年矯正課の担当者による声かけ。「〈旧神奈川医療少年院〉の仮囲いに、少年院の少年たちや近隣にある〈小山中学校〉の生徒たちの作品を起用し装飾できないか」と相談を受けたことでした。

〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉は、過去10年に渡り、日本や海外で福祉作業所が抱える課題の解決に取り組んできたデザイナー、ディレクター、コンサルタントなど多種多様なメンバーが集まったチームです。

本プロジェクトに取り組むにあたり、「少年院と地域の間に、そびえたつこの存在は何なのか?」といった問いを立て、物質的・心理的な“カベ”についてのメッセージをデザインを通して伝えようと活動してきました。

問いを紐解く2つのポイント

そうして立ち上がったのが、仮囲いをメッセージ作品で彩り、地域と少年院の“つながり”を生むプロジェクト「カベ トビコエル!」です。

表層的に仮囲いをデザインするのではなく、取組の裏側にある背景や関わる人、今後新たに仮囲いの中に作られる建築物ができるまでの時間など、様々な角度からこの課題に向き合いました。そして、少年院と地域を隔てる“カベ”がない社会を実現するために、描くべきことは何かを洗い出していきました。

また、言葉を引き出す機会として、共にプロジェクトに取り組む〈小山中学校〉(神奈川県相模原市)の生徒会で、「つながり」をテーマにした「ことばのワークショップ」が実施されました。そこから生まれた「言葉」を、子どもたちが描いた絵と共に仮囲いに装飾することで、より「つながり」というメッセージを地域の人に伝えられると考えました。

あなたはなにと『つながり』たいですか?

また、壁を見る人に対するメッセージとして「あなたはなにと『つながり』たいですか?」という問いかけも一緒に壁に装飾されています。パネルのデザインは3色のパステルカラーによるグラデーションで、ポップな色味は明るい未来を予感させます。

めっせーじがかかれたかりがこい

デザインプロセスを壁新聞に

そうしたデザインのプロセスについてまとめた壁新聞が、「カベ トビコエル!展 vol.1」にて展示されます。期間中は、壁新聞の展示のみならず、国内刑務所で作られた刑務作業製品の販売やワークショップなども予定されています。

いべんとばなー

少年たちが少年院を出た先に、「社会というより、社会の中の一人ひとりの生活者との出会いがあった。その時に、他人ごとでなく、多くの人たちの連帯により、共に考えあい、一つ一つの課題を乗り越えていくことができたら、『少年』たちをきっかけに社会全体が豊かに生きやすい世の中になっていくのではないかと私たちは願う」と〈TOKYO SOCIAL DESIGN〉はメッセージを寄せています。

展示を通して、壁を越えた先にある少年院での日常を想像しながら、地域や自分たちを隔てる壁の存在とは何かについて考える機会になりそうです。三連休に開催です。ぜひ足を運んでみませんか。