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福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

いろとりどりのやくよけおの前に、きいろいやくよけおにが正面を向いて置いてある

こここなイッピン

厄除鬼の土鈴〈たんぽぽの家 アートセンターHANA〉

福祉施設がつくるユニークなアイテムから、これからの働き方やものづくりを提案する商品まで、全国の福祉発プロダクトを編集部がセレクトして紹介する「こここなイッピン」。

今回のイッピンは、障害のある人のアート活動を支援している〈たんぽぽの家 アートセンターHANA〉(奈良県奈良市)でつくられている「厄除鬼」。ユーモラスな表情の8色の鬼は、それぞれ意味が異なります。あなたはどの鬼を選びますか?

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鬼を招き入れ、鬼を祓う!? 奈良の鬼伝説をモチーフにした、愛らしい厄除けお守り

いろとりどりのやくよけおの前に、きいろいやくよけおにが正面を向いて置いてある

ユーモラスな表情の8色の鬼は、それぞれ意味が異なります。あなたはどの鬼を選びますか?

寒さのピークを迎え、少しずつ春へ向かう頃、奈良の各寺院で大々的に開催される節分会。その際のお土産品として人気を博す、土鈴の「厄除鬼」。コロンコロンと素朴な音を奏でるカラフルな土鈴は、鬼といえどもそのお顔は愛嬌たっぷり。つい自宅に連れて帰りたくなる愛らしさです。

この厄除鬼が誕生したのは1987年のこと。障害のある人たちの個を支えあう市民コミュニティであり、〈アートセンターHANA〉の母体である〈たんぽぽの家〉では、新たな福祉施設を設立する話が持ち上がっていました。その資金集めとして、地域の唯一性を大事にしたお土産品を制作・販売することに。そこで、1300年の歴史を誇る〈元興寺(かんごうじ)〉に伝わる鬼「元興神(がごぜ)」に着想を得て制作されたのが、厄除鬼です。

あか、あお、きいろ、くろ、みどり、しろ、ぎん、きん、はっしょくのカラフルなやくよけおにのすずが並んでいる
赤は「貪欲」、青は「怒り」、黄は「我を通す」、黒は「愚痴」、緑は「不摂生」と、色ごとに意味が異なります。白、銀、金も加わり、カラーは全8色。手づくりによる表情の違いも味わい深い!

ちなみに元興神とは、悪さをする「悪鬼」ではなく、悪鬼がおそれる「善鬼」。そんな伝承もあってか、元興寺の節分会は「福は内、鬼は内」というユニークな掛け声でも知られています。鬼を内に入れ、厄(鬼)を祓い、多幸を願う厄除鬼は、奈良を代表するお土産品として年々その知名度をあげ、近年は品薄状態になることも。

うしろむきのあかとあおのやくよけおにのうしろに、きのふだがついている
背面に「厄除鬼」の木札をつけたり、鬼の表情を毎年わずかに変えたりと、少しずつカスタマイズしているそうです

厄除鬼が誕生して30年以上。現在は年間約2000個が制作されています。当初は保護者やボランティアが中心となって制作していましたが、2000年頃から多くの工程を障害のあるメンバーにバトンタッチ。石膏型への流し込み、着色、土鈴の中の玉づくり、木札や紐を通す作業のほか、「制作には携われないけれど、販売は得意!」というメンバーは、節分会での対面販売で活躍しているそうです(注)。それぞれの関わり方で厄除鬼づくりに参加し、多くの人の手に届いています。

コロナ禍の今、疫病退散の期待を込めて購入する方も多いのだとか。玄関やリビングに、ちょっと怖くてかわいらしい厄除鬼を飾り、福を招き入れてはいかがでしょうか。

注:2020年は対面販売を中止し、委託販売、オンライン販売を行いました。