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社会を動かすためのノウハウが詰まったソーシャルアクション入門。荻上チキさん著『社会問題のつくり方 困った世界を直すには?』
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【画像】書籍の表紙。KOPAKUさんのイラストが描かれています

調べて、伝えて、動かすための物語仕立てのソーシャルアクション入門書

「なんかいやだな」「どうもおかしいな」そんな風に思ったとき、その出来事を変えるために何ができるのでしょうか。

荻上チキさんによる書籍『社会問題のつくり方 困った世界を直すには?』(翔泳社)は、現実と似た構造の架空の世界の物語をベースに、世の中の「困りごと」を個人の問題ではなく社会の問題として捉え、社会を変えていくためのさまざまな行動を紹介しています。

物語パートでは、主人公「ツノつき」が仲間と共に話し合い、資料をまとめ、発信し、具体的なアクションを起こしながら、世の中の理不尽を変えていく様子が描かれます。そして、そんな物語の進行に合わせ、それぞれのステップでの具体的なアクションのヒントが紹介されていきます。

「気づく」「つながる」「調べる」「伝える」「動かす」からなる5つのチャプターでは、一人ひとりが起こせる具体的な行動や用語の解説、今ある仕組みが分かりやすく紹介されています。

【画像】書籍の目次ページ

自分の問題ではなく、社会そのものが抱える「未解決の問題」としての「社会問題」

社会を変えるのに、これまで社会を変えてきた先人たちの「歩みと方法」をたずねていく本書。チャプター1「気づく」では、今ある「当たり前」は、いいことも悪いことも誰かが作ってきたことであるという説明から始まります。

「社会問題」とは自分の抱える問題ではなく、社会そのものが抱える未解決の問題であると本書は定義しています。そして、「社会の変え方」を知ることで漠然と社会に絶望するのではなく、具体的にどんなプランを選択すると問題が解決するのかを考えられるようになると言います。

“「理不尽になれること」「堅苦しさに適応すること」を成長とは呼ばない。自分に合った環境を知り、それを作るための力を身につけることが、成長なんだと思う。―本文P.115より”

また、自分は社会を変えることができないと絶望するのではなく、解決していくぞと前向きに考えるときに、自分は「無力ではなく微力だ」と捉えることも出来ると書かれています。無力ではなく微力だからこそ、仲間とともに目標を立てて、いくつかの方法を駆使して世の中の空気を変えながら、社会を変えられるのです。

「社会の変え方」の具体的なアクションのヒントが詰まった1冊

「社会を変える」と思うと、まっさきに頭に浮かぶのは「選挙」ではないでしょうか。本書では、選挙に行くことも大事な手段であるとしつつ、選挙以外のさまざまな具体的なアクションを紹介しています。

“社会を変えるためには選挙に行くだけじゃなくて、議員に「こんな問題がある」と知ってもらい、「解決したい」と考えてもらう必要があるんじゃないだろうか。―本文P.19より”

たとえば、チャプター2「つながる」では、仲間をつくる大切さを語る中で、チームづくりや活動の継続のために必要なポイントが挙げられています。

「ゴールを決めて、旗を掲げる」の項目では、最初からチームメンバーを募集しなくても、勉強会や読書会からスタートしてみることも出来るなど、チームの立ち上げ方のヒントが紹介。「誰にでも役割がある」では、役割分担の大切さを経済学用語である「比較優位」とともに紹介し、仲間と活動するときには得意・不得意があるからこそ役割を分けることが薦められます。

「活動資金を調達する」では、クラウドファンディングや会費制・マンスリーサポートを導入する・助成金・スポンサー・事業収入を得るといった具体的なチーム運営のヒントを紹介。

さらに、「メンタルケアを意識する」では、メンバーそれぞれが休憩や相談や楽しい時間を確保するなど、無理なく続けられるやり方で活動していくことの大切さが語られます。

〈社会調査支援機構チキラボ〉で培ったノウハウや大切にしていることがベースに

著者の荻上チキさんは、評論家であり、〈社会調査支援機構チキラボ〉の代表理事でもあります。2021年3月に設立した〈チキラボ〉は、社会調査を実施し、今ある暮らしの環境や構造がもたらす問題を明らかにしている団体です。当事者がどれくら存在して、どんな被害実態があり、効果的な施策は何かを調査し、当事者やNPO、専門家やメディアと連携することで、政策立案や社会活動、法改正につなげ、社会を変える働きかけをしています。

この活動を通して得られたノウハウは、本書にもたくさん活かされています。特に、本書のチャプター3「調べる」では、資料の見方・探し方、調査の見方や資料を基に話し合う方法などが記され、「調査」進める上でのヒントを得ることができます。

KOPAKUさんのイラストレーションもたくさん登場し、見ていても読んでいても楽しく、わかりやすい本書。対象年齢は、中学生から大人まで。社会に対して「おかしいな」と思っているすべての人が、ソーシャルアクションのはじめの一歩を踏み出し、活動を続けていくためのヒントがたくさん詰まった1冊です。

国民が投票できなかった社会から、納税者の一部が投票できるようになり、成人男性であれば投票できるようになり、成人女性も投票できるようになり……と、今ある社会も一人ひとりの行動によって少しずつ変化してきています。理不尽なこと、困りごとに出会ったときに、なんとなく絶望するのではなく、解決するためにアクションを起こすこともできるのではないでしょうか。自分自身を「絶望モード」から「解決モード」へ変えていく際に、本書はきっと手引きになってくれるはずです。