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少年院を舞台にラップが響き合う。坂上香監督の新作ドキュメンタリー『コール&レスポンス』支援プロジェクト実施中
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ラップが“対話”になるとき。坂上香監督の新作ドキュメンタリー『コール&レスポンス』制作中
2010年代以降、ヒップホップは日本のカルチャーシーンで存在感を放つようになりました。そのなかでも、メロディではなく言葉を武器に、社会の現実や自分の感情を語る表現手法であるラップは、「高校生RAP選手権」や、2016年から放送が始まった「フリースタイルダンジョン」などをきっかけに人気が高まっています。
坂上香監督の新作ドキュメンタリー映画『コール&レスポンス』では、そんなラップを対話の入口に選び、少年院で生活する少年たちと市民が、ラップを通して呼びかけ合う試みが描かれる予定です。現在、2026年の完成を目指し、2025年11月28日(金)までクラウドファンディングによる支援プロジェクトを実施しています。
“塀の向こう側”に耳を傾けてきた、坂上香監督
坂上香さんは、ドキュメンタリー映画監督であり、一橋大学の客員准教授、そしてNPO法人〈out of frame〉の代表として活動しています。高校卒業と同時に渡米し、南米でのフィールドワークを経て、ドキュメンタリー制作の道へ進みました。以来、「加害と被害」「人はどのように変わるのか」や社会の分断をテーマに制作を続けています。
国内外で暴力の連鎖を断つアプローチを取材する中で出会ったのが、アメリカ・アリゾナ州の更生プログラム「TC(セラピューティック・コミュニティ)」です。TCでは、薬物依存者や罪を犯した人たちがグループで対話を重ね、互いの経験を語りながら再生を目指します。
TCの取り組みに感銘を受けた坂上さんは、終身刑囚の更生を描いた初監督作『Lifers ライファーズ 終身刑を超えて』を発表し、ニューヨーク国際インディペンデント映画祭で最優秀賞を受賞しました。
前作『プリズン・サークル』では、日本で唯一TCを導入している官民協働の新しい刑務所〈島根あさひ社会復帰促進センター〉にて、受刑者たちが対話を通じて自らの過去や罪と向き合っていく様子に迫りました。『プリズン・サークル』は、文化庁文化記録映画大賞を受賞し、書籍版も刊行されています。
坂上監督が見つめてきたのは、塀の中と外にある分断です。社会的な偏見や無理解を少しでも低くするにはどうすればいいのか。その問いを今度は「ラップ」という表現を通して試みるのが、新作『コール&レスポンス』です。
“呼びかけ”と“応答”で生まれる対話。『コール&レスポンス』が映すもの
新作ドキュメンタリー『コール&レスポンス』は、2020年から2024年にかけて行われたワークショップの記録をもとに制作されます。九州地方にある3つの少年院を舞台に、ラッパーのFUNIさんがメイン講師を務め、少年たちと、ワークショップに参加した市民がラップを通して関わり合う様子が描かれる予定です。
この映画が生まれるきっかけとなったのは、前作『プリズン・サークル』の公開後に届いた観客の声でした。「塀の向こう側について、何も知らなかった」「どうすれば、塀の中の彼らをもっと理解できますか?」。かねてから、塀の中と市民をつなぐ回路が閉ざされていることにジレンマを感じていた坂上監督は、こうした反響に背中を押され、少年院や刑務所といった矯正施設で両者をつなげる実験ができないだろうかと考え始めたのです。
まず、2020年3月、ラッパーFUNIさんの声掛けのもと、横浜で観客とともにラップ・ワークショップを実施。世代も立場も異なる20人が即興でラップを作って歌うと、会場には不思議な一体感が生まれました。その体験が、「塀の中と外をラップでつなぐ」実験へとつながっていきます。
これまで社会との接触が制限されてきた少年院ですが、交渉の末、今回は3つの施設がそれぞれの形で門戸を開き、市民が参加できる機会を設けてくれました。参加者は20代から70代までと幅広く、ラップ未経験者もいれば、ヒップホップ好きもいます。休み時間のおしゃべりすら禁止され、他者との関係も限られている少年院のなかで、少年たちが自分の言葉で、自分の物語を語る。その瞬間をラップでつなぎ、市民がレスポンスとして応える。それが『コール&レスポンス』というタイトルに込められています。
坂上監督は制作の過程で、「対話型編集」を頻繁に行います。「対話型編集」はワークインプログレス(WIP)とも呼ばれ、被写体や関係者、専門家など信頼できる人たちに映像を公開し、ディスカッションを経て編集を進めていく方法です。「映像は暴力にもなりうる」と語る監督にとって、WIPは被写体の声に誠実であるための実践。作り手と映される側が意見を交わしながら、作品を作り上げていきます。
クラウドファンディングで、制作の“呼応”に参加する
『コール&レスポンス』は現在編集の過程にあり、2026年度内の完成・公開に向けて、クラウドファンディングを実施しています。編集や追加取材、音楽制作など、完成に向けた最終段階を支えるためのプロジェクトで、支援の受付は2025年11月28日(金)までです。
支援金額に応じて、さまざまなリターンが用意されています。たとえば、監督のオリジナルリリックを掲載した「rapメッセージカード」、映画の完成試写会への招待、エンドロールへの名前掲載、クラファン限定のトートバッグなどを用意。さらに、完成時に制作されるパンフレットへの名前掲載に加え、監督のサイン入り著書やDVDが届くコースもあります。また、坂上監督の特徴的な制作手法である「対話型編集」に参加できたり、完成後には自主上映やワークショップができるコースもあります。
映像を観客として見るだけでなく、あなたも作品づくりにコール&レスポンスしてみませんか。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。
Information
『コール&レスポンス』支援プロジェクト
クラウドファンディングページ:https://motion-gallery.net/projects/call-and-response
目標金額:1,000万円
支援期間:2025年11月28日(金)まで
主催:NPO法人 out of frame
ラップ・ワークショップ講師 & 運営スタッフ
FUNI (ラッパー)
マニシア (ダンスセラピスト)
上田假奈代(詩人/NPO法人ココルーム代表)
山口由美子(佐賀バスジャック事件被害者)
上原翔(映画『プリズン・サークル』登場人物)
花崎攝(シアタープラクティショナー)
郭理恵(NPO法人 修復的対話フォーラム)
入海英里子(NPO法人out of frame/日本スクールソーシャルワーク協会)
アドバイザー: 山下英三郎(NPO法人コスモス村代表理事)
総合コーディネート: 坂上香(NPO法人 out of frame)
<2025年11月3日(月)~11月7日(金)はオンラインにて応援対談を実施>
詳細・申し込み:https://x.gd/586Ga
※各回、アーカイブ配信を予定しています。
①11月3日(月)19:00-20:30
トークテーマ「人生を詩にー誰もが詩人」
上岡陽江(精神保健福祉士/ハームリダクション東京)
上田假奈代(詩人/大阪ココルーム主宰)
坂上香監督
②11月4日(火)19:00-20:30
トークテーマ「収容される身体とダンス」
マニシア(ダンスセラピスト)
後藤弘子(NPO法人子どもセンター帆希理事長)
坂上香監督
③11月5日(水)19:00-20:30
トークテーマ「ケアの文脈で考える表現」
信田さよ子(原宿カウンセリングセンター顧問)
アサダワタル(文化活動家/近畿大学文芸学部准教授)
坂上香監督
④11月6日(木)19:00-20:30
トークテーマ「ヴァルナブルな人の声を聴き取る」
大嶋栄子(NPO法人リカバリー代表)
菊池謙太郎(映像ディレクター/ライフヒストリーミックステープ著者)
坂上香監督
⑤ 11月7日(金)19:00-20:30
トークテーマ「非行少年と市民をつなぐ意味と工夫」
FUNI(ラッパー/詩人)
花崎攝(シアタープラクティショナー)
坂上香監督
Information
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