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美術館に託児所を設置。〈Chim↑Pom〉の新アート・プロジェクト『くらいんぐみゅーじあむ』。クラウドファンディングも実施中
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『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』パンフレット

〈Chim↑Pom〉の最新プロジェクトは「美術館に託児所」

独創的なアイデアと卓越した行動力で、都市や公共性、飽食と貧困、原爆や震災など、現代社会の事象や諸問題をテーマにしたプロジェクトを次々と発表し、人々の意表を突き、さまざまな議論を巻き起こしてきたアーティスト・コレクティブ〈Chim↑Pom(チンポム)〉。

2005年に東京で結成した彼らの、初期から近年までの代表作や新作を一堂に集めて紹介する展覧会『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』が、東京都港区六本木の〈森美術館〉にて2022年5月29日まで開催されています。結成17周年を迎える〈Chim↑Pom〉の活動の全貌を展覧会という形式で検証する回顧展です。

ところで、「たまにはじっくりアートを楽しみたいけれど、小さな子どもがいるから美術館に行きづらい……」と、美術鑑賞をあきらめる人も多いはず。そんな方に朗報です。今回の展覧会場内には、本展のために発表された〈Chim↑Pom〉の新アート・プロジェクト『くらいんぐみゅーじあむ』という「無料の託児所」が開設されています。

子育て中の人が気軽に美術館を訪れ、安心してアートを楽しめるだけでなく、子どもの居場所をクリエイティブにつくりだし、子育てにやさしい環境づくりへの課題を社会全体で考えるきっかけにしたいという願いが込められています。〈森美術館〉としても展覧会場内に託児所を設けるのは初の試みとなります。

〈Chim↑Pom〉のメンバーと、同世代の子育て事情から着想を得た新プロジェクト

『くらいんぐみゅーじあむ』は、2020年に出産を経験し、美術館で作品の鑑賞中に自身の子どもが泣き、その場で授乳をしたという〈Chim↑Pom〉のメンバー・エリイさんの実体験や、外出時に経験するさまざまなバリアを目の当たりにしたメンバーによって考案されました。

地域によっては、公園や公道でも大声を出して遊ぶことが禁じられたりと、子どもの居場所が公共の場から少しずつ失われつつある昨今。小さな子どもを持つ親は、外出の際にあらゆる状況を想定し、対策や工夫を講ずるものの、それでも泣いたり騒いだりするのが子ども。それは当然のことと思いながらも、どこか肩身の狭さを感じるのは、多くの親が経験しているはずです。

『くらいんぐみゅーじあむ』は美術館の泣き声。
泣いたってかまいやしないよ、だって子供だもの。
鑑賞者はこの声を聴くことになるでしょう。
すべからくこの世の関係者、誰もが全員、
初めは赤ん坊だったし子供だった。
あなたも、私も、虫も木も。
(〈Chim↑Pom〉 エリイよりコメント)

今回「静謐であるべき場所」としての美術館に、あえて子どもの遊び声と泣き声を響き渡らせることで、美術業界のみならず社会全体における子育て環境への問題提起を試みるプロジェクトとなっています。

達成金額によって託児所の運営日数が変わる! クラウドファンディング実施中

ぬり絵を楽しむ親子のイメージ

さらにこのプロジェクトでは、託児所の運営資金をクラウドファンディングで調達するという試みも。集まった支援金により託児所を運営できる日数が決まります。目標金額である400万円を達成すれば週3日、800万円で週6日の託児所営業が可能になります。

支援金額は1000円から33万円(税込)までの6コース。リターンもさまざまに用意されています。なかでも注目のリターンは、〈Chim↑Pom〉作のオリジナルぬり絵データの提供に加え、「ぬり絵コンテスト」の参加権が得られるコース。

思い思いのぬり絵を楽しみ、その作品を〈Chim↑Pom〉のほか、特別審査員として参加するアーティストの会田 誠さん、漫画家の東村アキコさん、コラージュアートやグラフィックデザインなどを手がける河村康輔さんが受賞作品を決定します。

マヨネーズ、ソース、ケチャップ、バジルソースなどを用いて塗られたぬり絵
審査員・会田誠さんによるぬり絵見本
バラの花やドット模様などで彩られたぬり絵
審査員・東村アキコさんによるぬり絵見本

すでに託児所を設置していたり、子ども参加型の展覧会を企画したり、子連れでも来場可能な日時を設けるといった工夫をこらす美術館は増えつつあります。ですが、子育て世代が気軽に美術鑑賞を楽しめる環境は、まだまだ整っているとはいえません。

そのような状況に一石を投じる〈Chim↑Pom〉の『くらいんぐみゅーじあむ』。多くの人がこのプロジェクトに関心を示すことは、美術館の「静謐であるべき場所」という固定観念を変えるきっかけになるかもしれません。

クラウドファンディングでの支援は3月末まで。子育て中の方は、この機会にぜひ子どもと一緒に美術館を訪れ、じっくりと展覧会を楽しんでみてください。