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〈東京藝術大学〉で学生と社会人が共に学ぶ「アート×福祉」の記録。書籍『ケアとアートの教室』が発売
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しょえい
〈東京藝術大学〉学生と社会人が共に学ぶ「アート×福祉」プロジェクトを記録した『ケアとアートの教室』が、〈左右社〉から発売

「アート×福祉」プロジェクト「DOOR」の記録、書籍『ケアとアートの教室』が発売

〈東京藝術大学〉の学生と社会人が共に学ぶ「アート×福祉」プロジェクト「DOOR」の活動を記録した『ケアとアートの教室』(左右社)が、2022年2月11日に発売されました。

「DOOR(Diversity on the Arts Project )」は、〈東京藝術大学〉が履修証明プログラム(注)として2016年から取り組んできたプロジェクトです。1年のカリキュラムを通して、「アート×福祉」をテーマに「多様な人々が共生できる社会」を支える人材を育成することを目指しています。講師には、社会的テーマで表現活動をしているアーティストや福祉の実践者、障害のある人や生きづらさを抱えている当事者などを迎えています。

受講生は、さまざまなバックグラウンドをもつ社会人約100名と、〈東京藝術大学〉の学生約30名。ビジネスマン、教師、医師、介護福祉士、デザイナーなど多様な領域で働いてきた社会人が、これまで参加してきました。

受講生一人ひとりが、異なる価値観を持ち寄って時間を共有し、その中で生まれた気づきや学びの記録が、この度、書籍『ケアとアートの教室』になりました。

(注)…主に社会人を対象に大学のもつ専門知を学習プログラムとして社会に開き、一定の時間を修めたものには学校教育法に基づく履修証明書を交付するプログラムのこと。

プロジェクトを追体験できる書籍

本書は、アーティスト日比野克彦さんによる「なぜ『アート× 福祉』?アートの特性が社会を変える」という文章からはじまります。「違いを認め合うこと」をアートの特性とした時に、福祉もアートも多様性を重視しているところに共通点がある、そして、一人ひとりの存在を大切にする社会のためにアートにどんな役割があるかを考えている、と語っています。

続いて、実際の講義で話された内容を紹介する「講義編」、当事者や福祉施設との協働プログラムを中心に紹介する「実践編」で構成され、「DOOR」の取り組みや考え方を紹介しています。

講義編では、〈認定NPO法人抱樸〉理事長である奥田知志さんの講義「『助けて』といえる社会へ ホームレス支援と『子ども・家族marugotoプロジェクト』」、俳優で介護福祉士の菅原直樹さんによる講義「老いと演劇 認知症のひとと楽しむ『いまここ』」などが、収録されています。

その他、セックスワーカーの法律相談を行う弁護士の浦﨑寛泰さん、〈認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ〉理事長の久保田翠さん、「いのっちの電話」という活動を続ける坂口恭平さん、〈一般社団法人fair〉代表理事の松岡宗嗣さん、美術家の西尾美也さん、民俗学者/介護職員/社会福祉士の六車由実さん、ドキュメンタリー映画監督の坂上香さんによる講義録、全9編を読むことができます。

対談や取材記事、さまざまな事例から「アート×福祉」を考える


「実践編」では、「DOOR」のアドバイザー兼講師を務める〈社会福祉法人福祉楽団〉の飯田大輔さんと建築家の金野千恵さんの対談からはじまり、カリキュラムの一つである「ケア実践場面分析演習」で行われた「DOOR」受講生による取材記事、「DOOR」についての論考が収録されています。

いいだだいすけさんとこんのちえさん
〈社会福祉法人福祉楽団〉の飯田大輔さんと建築家の金野千恵さんの対談の様子
ぷろじぇくとのようす
「実践編」では、グループに分かれて、取材や地図の制作を手掛けました

取材記事では、トリーチャー・コリンズ症候群の当事者である石田祐貴さんに出会い、DOORのメンバーが知ることの大切さを伝えようとした「普通って何だろう? 『見た目問題』を超えて」、〈香取CCC〉(千葉県香取市)を訪問するうちにDOORのメンバーが地図を作ることになった背景や結果を記録した「誰かのミカタ地図 孤立したひとの居場所をつくる」など、さまざまな実践を通して受講生が考えたことなどが伝わってきます。

また、巻末には「〈DOOR受講生鼎談〉アートとは、福祉とは、多様性とは?」が付いており、「DOOR」を履修した4名の生の声を知ることができます。

トリーチャー・コリンズ症候群の当事者である石田祐貴さんとDOORのメンバーが行った、「普通って何だろう?」を考えるプロジェクト

アートと福祉の世界の「DOOR」を開く本

「アートも福祉も、多くのひとたちとの対話のなかで豊かになってゆく。ただ知識を詰め込むのではなく、ただ技術を習得するのでもない、異なった何かと自分とが融合し、変化してゆくことを楽しんでもらうことができたら嬉しい。この本に掲載されているのは、そんな体験をつくる入口となる記録の数々である」と、本書の「はじめに」で、〈東京藝術大学〉社会連携センターの伊藤達矢さんは記しています。

様々な分野で働く社会人と、〈東京藝術大学〉の学生が共に学び、考える「DOOR」プロジェクト。そこから見えてきた福祉とアートのつながりに、書籍を通じて出会ってみませんか?