ニュース&トピックス

地域にひらかれた福祉施設の助成プログラム「みらいの福祉施設建築プロジェクト」第5回公募スタート! 昨年は3事業が決定
公募情報

  1. トップ
  2. ニュース&トピックス
  3. 地域にひらかれた福祉施設の助成プログラム「みらいの福祉施設建築プロジェクト」第5回公募スタート! 昨年は3事業が決定

「日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクト 第5回募集期限:2025年2月27日(木)~6月13日(金)」と書かれた、プロジェクトのメインビジュアル画像

「みらいの福祉施設建築プロジェクト」2025年の公募がスタート!

〈公益財団法人 日本財団〉が実施する助成プログラム「みらいの福祉施設建築プロジェクト」の第5回事業プラン募集が、2025年2月27日(木)から開始となりました。

本プロジェクトは、福祉施設が地域にひらかれた魅力ある場所となり、あらゆる人々とともに地域と福祉の未来をつくっていく助成事業。福祉事業者と建築家・設計者の“協働”による「建築デザイン」が、地域にひらくための重要な要素として位置づけられた事業プランを資金面で援助するものです。

木々が多く植栽された新築の施設の外観画像
本事業で採択され、2024年5月に栃木県小山市にオープンした、医療的ケア児を対象とした多機能型デイサービスを提供する〈Burano(ブラーノ)Oyama〉の外観(撮影:内田麻美)

助成金のほか、“みらいの福祉”を考えるトーク、ツアーなどを積み上げた4年

60年以上にわたって福祉分野におけるさまざまな支援に取り組んできた〈日本財団〉は、社会構造の変化の加速、人々の価値観や時代の空気感が変わりつつある現代において、福祉のあり方を根本から見直し、みらいに向けてアップデートしていく必要性を感じているといいます。

その実現のために不可欠なのが「地域づくり」という視点です。本プロジェクトは、多様な人々と対話・議論を重ね、“みらいの福祉”について考える機会や、その取り組みが全国に広がることを願い、立ち上げられました。

2021年を第1回とし、以降毎年事業プランの公募を行ってきた「みらいの福祉施設建築プロジェクト」。4年間で全国から923事業の申請があり、そのうちの17プランが採択され、環境整備のために必要な費用の助成を行ってきました。すでに竣工し、地域の福祉拠点として機能し始めている施設もあります。

また本プロジェクトは、プランの公募だけでなく、福祉事業者と建築家・設計者、福祉に関心のある人がともに“みらいの福祉”について考えるさまざまなイベントも行ってきました。

満員の来場者で埋め尽くされ、大きなスクリーンに投影された画像を前に登壇者4名が語り合う会場の写真
2023年7月に渋谷で行われた「みらいの福祉施設建築ミーティング ―フォーラム—」の会場の様子(撮影:川島彩水)

2023年、2024年と開催された「みらいの福祉施設建築ミーティング」では、福祉の専門家と建築家が登壇したパネルディスカッション「みらいの福祉施設建築フォーラム」、福祉と建築に関わる個別のテーマを取り上げ、具体的なヒントや気づきを得る「みらいの福祉施設建築スタディ」を実施。

2024年7月には、第1回の公募で採択された〈社会福祉法人聖救主福祉会〉が運営する複合施設〈深川えんみち〉を訪れる現地ツアー「みらいの福祉施設建築ツアー」も開催されました。これらの模様は以下のレポート記事でご紹介しています。

2024年度に採択された3つの事業プランをご紹介!

そうしたイベントなどを経て、2024年度は全国から43の事業プランが申請され、12月15日の最終審査で3プランが採択されました。実際にどのような事業が採択されたのか、ご紹介します。

  • スキップフロアによる障害者グループホームの地域拠点化 たけし文化センター田町
7階建ての建物と、生活する人々の様子を描いた、設計イメージの断面図
事業実施団体:特定非営利活動法人クリエイティブサポートレッツ/設計者:株式会社坂茂建築設計

本プランでは、「重度の障害者が住むグループホーム」「障害の有無に関わらず集まるシェアハウス、ゲストハウス」「地域住民にひらかれ、多様な人が交流するシェアキッチン、リビング、銭湯」という3つのテーマを複合する7階建ての福祉施設を、静岡県浜松市の“中心市街地”に建設します。提案したのは、浜松市街地に重度の知的障害のある人を軸としたまちの文化創造発信拠点を10カ所以上つくり続けてきた〈認定NPO法人クリエイティブサポート レッツ〉

「この建物を見たときに、地域と施設の交流というよりも、施設を利用している方々が自然な形で社会参加ができるような、そんな建物のような感じがしました」
(審査委員:恒松大輔さん)

  • きどのイドバタ -風景と人の交わる“きどのミチ”-
縦長の施設と、生活する人々を上から捉えたイメージ図。横には広い畑が広がる
事業実施団体:社会福祉法人薫英会/設計者:teco株式会社

1977年の設立以降、障害福祉・高齢福祉事業を中心に行い、群馬県を拠点に「地域とのつながり」を大切にしてきた〈社会福祉法人 薫英会〉。本プランの計画地は、住宅街とともに農や自然の風景が残る群馬県木戸地区。ケアサービスと地域の人が“道”でつながり、多様な出会いを生み出す場を目指したプランです。

地域住民へのヒアリングやワークショップを行い、「まちの未来と福祉をつなぐ7つのコンセプト」を策定し、それらがプランに盛り込まれています。

「子どもと高齢者の施設という組み合わせはすでに様々なプロジェクトで試みられているが、通りに沿った長い敷地にリニアに連続し、かつ、相互に内外に開かれた計画となっている点はユニークである。長年の法人の経験を踏まえて、敷地の選定にも腐心し、この通りに沿った敷地を選定したとのことで、この建築の地域との連携の在り方への強いこだわりを感じさせる」
(審査委員長:篠原聡子さん)

  • 届ける福祉「みらいの家」
住宅地の中に新しく建てられる建物のイメージ図。2階建てで、大きな吹き抜けがある内観図が示されている
事業実施団体:社会福祉法人中央福祉会/設計者:千葉学建築計画事務所

石川県金沢市で、医療介護施設や認定こども園などの事業を行う〈社会福祉法人中央福祉会〉。今回の事業プランは、地域の「福祉のハブ」という存在を目指し、リハビリ施設、訪問介護事業所、地域包括支援センター、ボランティアマッチングセンター、宿泊施設、子どもの集まり場などを設置した複合施設です。皆が自分の家の延長のように感じられる「みらいの家」を提案しました。

「ケアを届ける拠点という新しい試みに対して、街並みに溶け込む形態と、親しみやすい建築空間を提示している。これらの実現のための架構は非常にシンプルなものである」
(審査委員:仲俊治さん)

〈日本財団〉公式特設サイトの特集ページには、この最終審査会のプレゼンテーション動画のほか、これまでにプランが採択された事業者を取材した「採択事業者インタビュー」が掲載されています。多くの写真とともに事業者や建築家の思いが綴られているので、ぜひ覗いてみてください。

第5回の申請期限は6月13日まで!

さて、第5回となる「みらいの福祉施設建築プロジェクト」の申請期限は、2025年6月13日(金)17時まで。今年度の最大補助率は80%以内とし、事業規模に見合う適正な金額が助成されます。ちなみに2023年度は、事業費総額の80%を最大補助率として、およそ1.4億〜9.2億円が助成されています。

申請は〈日本財団〉の公式サイトから。申請前には日本財団 助成ポータルにアクセスし、アカウントの作成と団体登録などの事前準備が必要です。過去に同財団から助成を受けたことがある団体も、新規登録が必要なのでご注意ください。

過去に応募経験のある団体も、「みらいの福祉施設建築ミーティング」に参加してプランを温めてきた団体も、今回初めて助成プログラムを知った団体も、ぜひこの機会に応募してみてはいかがでしょうか。地域に愛される福祉の拠点が、ここから生まれるかもしれません。