ニュース&トピックス

全国の福祉施設と鑑賞体験を考える〈劇場をつくるラボ〉による活動事例集『劇つく本』が発行。PDFで誰でも閲覧可能!
書籍・アーカイブ紹介

  1. トップ
  2. ニュース&トピックス
  3. 全国の福祉施設と鑑賞体験を考える〈劇場をつくるラボ〉による活動事例集『劇つく本』が発行。PDFで誰でも閲覧可能!

劇場をつくるラボの書影

障害と表現にまつわる事例集とコラム『劇つく本』が発行

障害のある人もない人も、舞台芸術を心から楽しんだり、文化芸術に気軽に参加したりするにはどうしたらよいでしょう。街中や建物などのハード面や情報保障など、アクセシビリティについては広く意識されるようになりましたが、観劇体験や作品鑑賞におけるアクセシビリティはどうでしょうか。

段差をなくし、車椅子でも移動しやすい環境を整える。耳が聞こえない人のために手話通訳を用意する。それだけで十分でしょうか。そもそも劇場という空間を訪れることにハードルを感じている人や、作品鑑賞に馴染みがない人も多いのではないでしょうか。誰もが等しく作品を味わうために、何を準備すればよいのか、戸惑う人も少なくないはずです。

そうした方々にぜひ参考にしていただきたいのが、全国の福祉施設とともに鑑賞体験を考える〈劇場をつくるラボ〉の活動をまとめた事例集『劇つく本』です。本活動が5周年を迎えたことをきっかけに、その歩みをまとめ、障害と表現にまつわる事例とコラムが掲載されています。冊子の発行と合わせてPDF版も公開されており、どなたでも読むことができます。

障害のある人が芸術文化に参加するための工夫を考える〈劇場をつくるラボ〉

一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONALが主催し、株式会社precogが企画・運営する〈劇場をつくるラボ〉は、さまざまな身体や表現を持つ人々が、舞台芸術の創作・発表・鑑賞の場にどのように参加できるのかを探る研究事業です。重度の障害を含め、障害のある人が芸術文化の場に参加するうえでどのような課題があるのか、そしてどのような取り組みが可能なのかを考えるコミュニティ活動として、2021年2月に始動しました。

劇場をつくるラボの取り組みの様子

活動がはじまった2021年度には、建築家の山川陸さんをディレクターに迎えて、舞台芸術や空間づくりの視点を活かし、福祉施設内に映像を視聴するための環境を整えることに挑戦しました。

翌年2022年度には、前年の事業を通して気づいた「そもそも知的・発達障害のある人を鑑賞者として想定した作品自体がほとんどない」ということから、音楽家・蓮沼執太さんと映像作家・水尻自子さんとともに、アニメーション作品を制作し、制作したアニメーションの上映会とワークショップを実施しました。

2023年には、知的障害や発達障害のある人たちも一緒に映像鑑賞を楽しむには、どのような工夫ができるだろうか。そんな問いから、障害のある人たちとともに鑑賞するワークショップ型上映会の取り組みを行いました。『劇つく本』には、こうした実践の積み重ねとそこでの気づきなどが紹介されています。

劇場をつくるラボの取り組みの様子

実践者・専門家の寄稿コラムと全国の事例を紹介

『劇つく本』には、〈劇場をつくるラボ〉の活動紹介をはじめ、障害とアートの分野で活躍する実践者や専門家による寄稿コラムが収録されています。それぞれの立場から、障害と身体表現、ワークショップを取り巻く環境や実践が綴られています。

義足の俳優(ときどき車椅子俳優)&ダンサーとして活動する森田かずよさんは、「日本における障害のあるアーティストの活動と課題」と題したコラムを寄稿しています。

演劇ライターの鈴木励滋さんは、「死ぬのが怖かった少年がいかにして生きることの美しさを知るに至ったのか」と題した寄稿コラムを執筆しています。なお、〈こここインタビュー〉では、鈴木さんが多角的な視点からパフォーミングアーツの可能性やその普及について掘り下げる対談記事を掲載しています。

また、障害のある人の身体(表現)活動をめぐる「さまざまな軸」に着目しながら、全国で実践されている取り組みを紹介する「身体と表現―全国の9つの事例集―」も掲載。高齢者福祉施設〈デイサービス楽らく〉で実施されているアーティスト・イン・レジデンス〈クロスプレイ東松山〉や、〈社会福祉法人わたぼうしの会〉が運営する〈たんぽぽの家アートセンターHANA〉の事例も紹介されています。

エピソード集は、編集チームが聞き書きした“表現が生まれた時間”をイラストと共に掲載

劇場スタッフ・企画制作者の視点からアクセシビリティを捉え直す一冊『アクセシビリティ・ノート』も刊行

『劇つく本』とあわせて公開されたのが、『アクセシビリティ・ノート』です。劇場スタッフや企画制作者の視点からアクセシビリティを捉え直すために、オンライン劇場「THEATRE for ALL」が積み重ねてきた実践とノウハウをまとめた一冊です。

アクセシビリティ・ノートの表紙

本書は、「知っておきたい基本理念」をはじめ、「イベント運営者視点のアクセシビリティ設計」「舞台の設計を考える」「障害とコミュニケーションやサポートのこと」などの章で構成されており、基本理念に加えて、舞台芸術の制作会社である株式会社precogの具体的な実践や試行錯誤をシェアする内容となっています。
PDFでどなたでも読むことができます。障害と表現にまつわる事例集・コラム『劇つく本』と、舞台演劇のアクセシビリティ設計をまとめた『アクセシビリティ・ノート』の2冊を手に取りながら、ぜひ、誰もが楽しめる舞台演劇のあり方を考え、プログラム設計にチャレンジしてみてください。