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作品を通して異なる視点や感覚に出会う。ゴールデンウィークのお出かけにおすすめの展覧会4選
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【画像】展覧会会場の中心で小さなおもちゃのピアノに触れている人
東京都渋谷公園通りギャラリーで開催中の「〈感覚の点P〉展」より
今村遼佑『プリぺアド・トイピアノ』2025年(撮影:前谷開)

自分の少し外側にある世界をまなざしてみるーー。連休は展覧会に出かけてみませんか?

ゴールデンウィークが始まりました!今年は4連休になる人が最多という調査結果が出ています。遠出や旅行はせずに、日帰りのお出かけを予定している方や家で過ごす予定の方が多いようですが、まだお出かけ先が決まっていない方も多いのでは!? そんな方におすすめの、展覧会4選をご紹介します。

今回こここ編集部が紹介する展覧会は、作品鑑賞を通して新しい視点や感覚にふれたり、社会で起きている出来事を知ったり、自分の立っている足元を見直したり…… 社会/他者と自分の間を行き来するような体験ができるものを集めています。連休は遠くに行けないけれど、展覧会に足を運んで、自分の少し外側にある世界をまなざしてみる。そんな時間を過ごしてみるのはいかがでしょうか。

今村遼佑×光島貴之 感覚をめぐるリサーチ・プロジェクト〈感覚の点P〉展

東京都渋谷公園通りギャラリー(東京都渋谷区)で開催中の「〈感覚の点P〉展」は、美術作家・今村遼佑さんと全盲の美術作家・光島貴之さんによる、感覚をめぐるリサーチにもとづく展覧会です。

普段わたしたちは、五感などの感覚を通して世界を捉えています。本展では、ひとりひとり異なる感覚を、数学の問題に用いられる「任意の点P」になぞらえ、「わたしの/誰かの〈感覚の点P〉」を通して多様な世界の在り方にふれることをテーマとしています。

【画像】展覧会のビジュアル

展覧会の見どころは、さわって楽しむことのできる作品が多く展示されていることです。今村遼佑さんの作品『プリぺアド・トイピアノ』は、おもちゃのピアノの鍵盤にさわると、鍵盤それぞれに仕掛けられた音が展示会場のどこかで鳴るなどする仕組み。

光島貴之さんによる、見て・さわって楽しむことができるレリーフ作品も、新作含め多数出展されています。釘やカッティングシートなど、手ざわりの異なるさまざまな素材やその配置にふれることを通して、光島さんの感じた世界をたどります。

【画像】木製パネルに釘がずらりと打たれている作品を触っている様子
光島貴之『速く歩いて記憶に残す』2024年(撮影:前谷開)

会場では、点字と触図付き会場マップが配布されているほか、5月4日(日・祝) と5日(月・祝)には、鑑賞サポーターと一緒に手話でおしゃべりしながら作品を鑑賞する「鑑賞サポーターと手話べり鑑賞会」が開催されるなど、さまざまな感覚を通して作品を鑑賞する機会が設けられています。

会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
会期:2025年2月15日(土)〜5月11日(日)

MOT Plus ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ

東京都現代美術館(東京都江東区)では、4月29日(火・祝)より、パキスタンを拠点に活動するアーティスト・シャハナ・ラジャニさんの新作を展示する企画展が開催されます。

同美術館は、従来の展覧会の形式にとどまらない実験的なプロジェクトや、他の組織との共同事業を展開する「MOT Plus」という新たなプロジェクトをスタートしました。今回の展示は、その一環として、バルセロナを拠点に映像を表現媒体とするアーティストの制作支援を行うハン・ネフケンス財団との共同で行われています。

シャハナ・ラジャニさんは、パキスタンにおいて、都市開発、軍事化、気候崩壊の影響を受けた人々や土地を調査し、映像を中心に複数のメディアで記録し作品として発表することで、占拠や破壊に伴う消去の暴力に抗う芸術的実践を展開しています。本展では、ラジャニさんによる新作映像インスタレーションが展示されます。

作品画像
シャハナ・ラジャニ《回復のための四つの行為》より(制作:ハン・ネフケンス財団)

また、東京都現代美術館のホームページには、手話による美術館の案内動画も公開されています。初めて同美術館を訪れるという方は、こちらを事前にチェックしてみてはいかがでしょう。

会場:東京都現代美術館 企画展示室 B2F
会期:2025年4月29日(火・祝)〜6月29日(日)

ノー・バウンダリーズ

国立国際美術館(大阪府大阪市)では、「境界」をテーマにした企画展「ノー・バウンダリーズ」が開催中です。

私たちが暮らす社会には、国境や土地の境界といった物理的なものから、心理的、社会的、文化的なものまで、さまざまなバウンダリー(境界)が存在しています。私たちの行動、思考、価値観を形成する境界は、グローバル化やテクノロジーの進化によってその輪郭を変化させていますが、一方で新たな分断や排除を生み出してもいます。

本展覧会では、現代社会におけるさまざまな「境界」を扱う作品を通して、私たちの日常や価値観がいかに形成されているのかを可視化するとともに、「境界」と呼ばれる既存の枠組みを解体し、新たな視座の提示を試みます。

【画像】展覧会ビジュアル

出品作家は、ヴォルフガング・ティルマンス、クリスチャン・ボルタンスキー、シンディ・シャーマン、フェリックス・ゴンザレス=トレス、田中功起、ミヤギフトシ、森村泰昌、やなぎみわ(敬称略)ほか。21名の、国内外で活躍する現代美術作家の作品が展示されます。

作品画像
ミン・ウォン《ライフ・オブ・イミテーション》2009年
2 チャンネル・ヴィデオ・インスタレーション(HD、カラー、サウンド)
国立国際美術館蔵 © Ming Wong

また、国立国際美術館は、1970年に開催された日本万国博覧会に際して建設された万国博美術館の建物を活用して開館した美術館です。ちょうど同時期に、夢洲では大阪・関西万博が開催中。国内外から最先端技術が集まる博覧会と照らし合わせながら、本展で展示される多様な「境界」について考えを巡らせてみてはいかがでしょうか。

会場:国立国際美術館 B3F展示室
会期:2025年2月22日(土)〜 2025年6月1日(日)

KYOTOGRAPHI 京都国際写真祭

KYOTOGRAPHIEは、京都を舞台に開催される国際的な写真祭です。会場は、京都市内の寺院や文化施設、歴史的建造物や商店街など14会場で、10の国と地域・計14組のアーティストの作品が展示されます。

同展2025年のテーマは「HUMANITY」。日本と西洋という2つの異なる文化的視点を通じて人間の営みの複雑さを浮かび上がらせながら、変化し発展し続ける現代社会において、私たちはどう生きるのか、人間性とは何か、という問いを投げかけます。

展覧会の見どころは、国内外から集まった多数の写真作品に加え、京都市内に点在するユニークな展示会場や、伝統工芸職人や最先端テクノロジーとのコラボレーション展開など。京都のこの土地ならではの写真祭を体験することができます。

作品写真
アダム・ルハナ「The Logic of Truth」
八竹庵(旧川崎家住宅)
©︎ Kenryou Gu-KYOTOGRAPHIE 2025

出品作家のひとり、コートジボワール出身のレティシア・キイさんは、自己愛、文化的アイデンティティ、エンパワーメントをテーマに活動するアーティスト、アクティビスト、起業家。自身の髪を用いた彫刻のような造形と写真に、自己表現や文化的誇りの物語を織り込んでいます。

キイさんの作品は、出町桝形商店街のアーケードと〈DELTA/ KYOTOGRAPHIE Permanent Space〉、ギャラリー〈ASPHODEL〉で見ることができます。〈DELTA〉は、アフリカの若手現代アーティストをアーティスト・イン・レジデンスとして迎えてプロジェクトを展開するスペースで、2024年冬にキイさんが京都で滞在制作した新作が展示されています。

作品写真
レティシア・キイ「LOVE & JUSTICE」
ASPHODEL
Supported by Cheerio
©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2025

会場:京都市内各所
会期:2025年4月12日(土)〜2025年5月11日(日)

以上、東京、大阪、京都で開催中の展覧会を取り上げました。展覧会は作品を通して、さまざまな異なる視点や感覚にふれることで、自分の外側に目を向ける体験ができる場所です。ぜひ、この連休を利用して、少し足を伸ばして展覧会を訪れてみるのはいかがでしょうか。