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〈はじまりの美術館〉開館10周年企画 「き・てん・き・てん」 展。春会期は7月15日まで開催中
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【画像】展示会フライヤー。「き」「て」「ん」という文字の周りに、カラフルな模様が描かれている

春と夏の2部構成。美術館の「これまで」と「これから」を考える

これまで数多くの企画展やワークショップを通して、福祉や障害、アートなどについて来場者とともに考える機会をつくってきた〈はじまりの美術館〉(福島県猪苗代町)。開館10周年を記念して、2024年4月27日(土)から「き・てん・き・てん」 展を開催しています。春季の「起点/origin」をテーマにした企画と、夏季の「転機/start」をテーマにした企画の2部構成。春の会期は、2024年7月15日(月)までです。

140年続く酒蔵を改修。「誰もが集える場」としてあり続けた10年間

〈はじまりの美術館〉は2014年6月、知的障害のある人を50年以上支援してきた〈社会福祉法人 安積愛育園〉によって開設されました。根っこには「障害の有無にかかわらず、地域で暮らし、仕事をし、スポーツやアートを楽しむことは、大切な自己表現である」との考えがあります。

【写真】館内に絵が展示されているようす
〈はじまりの美術館〉展示室の様子。三井啓吾作品の展示風景

実はこの美術館、築約140年の酒蔵「十八間蔵」を改修したもの。蔵を支える太い梁は、約33m(十八間)にわたります。明治時代から続く建物は、酒蔵、ダンスホール、縫製工場など、用途を変えながら地域の人たちに愛されてきたそう。2011年の東日本大震災で一部が損壊したものの、現在も多様な人の表現を発表する場、そして誰もが集える場として、地域にあり続けています。展覧会、ワークショップ、マルシェの開催場所としてはもちろん、野の花のガーデンやベンチのあるスペースは憩いの場に、そして冬には雪遊びの場にもなっています。

【写真】建物の外観
酒蔵を改修した美術館

今回開かれている「き・てん・き・てん」展 には、「点」、「転」、「展」、「10」(てん)、「期」、「起」、「機」、「軌」(き)といった意味が込められています。美術館のこれまで、そしてこれからを考える構成です。

「起点/origin」がテーマの春会期は、〈はじまりの美術館〉の10年間を振り返りつつ、表現の「起点」を想起させる作家を紹介。〈社会福祉法人安積愛育園〉としてはじめて展覧会を開催した青木尊さんの作品や、2014年に開館を記念して開かれた「手づくり本仕込みゲイジュツ」展に出展した佐藤香さんの新作などが見られます。

【画像】人の顔がアップで描かれた作品。ピンク調で、頬が真っ赤に塗られている
青木尊《ウララちゃん》1997〜2004年頃
【画像】茶色い模様の作品
佐藤香《北で生きてきた》(部分)2023年 撮影:岡はるか

他にも、「表現したい」という根源的な気持ちが強く表れている、身近なものを使った作品を展示しています。紙、土、絵具、新聞紙、ガムテープなど、素材はさまざま。絵画や立体など、作品は多岐にわたります。

「東京藝術大学2024年度新入生960名meets HIBINO」では、東京藝術大学の入学式で行われたワークショップでつくられた《Holes that reveal the future》を、約1000枚の写真で紹介しています。

【写真】赤い紙を破る人の手元
東京藝術大学2024年度新入生960名meets HIBINO《Holes that reveal the future》2024年

寄り合い、マルシェ、ワークショップ。参加型コンテンツもたくさん

会期中は、参加型のコンテンツも多数用意されています。

5月18日(土)、6月15日(土)、7月6日(土)の13:00~13:45には、美術館スタッフと一緒に展示を巡り、作者や作品に関する説明が聞ける「ギャラリートーク」を予定。参加費は無料(要観覧料)、事前申し込みも不要です。

上記日程の15:00~16:00に開かれる「寄り合い」は、おしゃべりしたり、一緒に作業したりする集まりです。美術館が開館される前から、長く実施されてきたといいます。初めての方も、久しぶりに来館する方も、過ごし方は自由。こちらも申し込み不要で、費用はかかりません。

飲食を楽しめるイベントも予定しています。5月26日(日)10:00~15:00には、福島県内外からコーヒー店やロースター、飲食店が集まる「AIZU COFFEE TIME! 2024」を開催。6月1日(土)、6月2日(日)10:00~15:00には、美術館の西側駐車場でマルシェイベント「はじまるしぇ ―ありがとう開館10周年!-」が開かれます。いずれも入場無料(企画展は要観覧料)、雨天決行、荒天中止です。

【画像】フライヤー

6月2日(日)10:00~15:00には、作家・佐藤香さんによるワークショップ「森の草でスワッグライトをつくろう」が開かれます。佐藤さんが、自身の所有する茅場で採れたススキを使い、ライト用の傘を編んでいきます。編む技術は、かやぶき屋根をつくる際に活用されているものだそう。ワークショップの参加者は、佐藤さん作の傘を好きな草花で装飾できます。草花から漏れる光で、幻想的な雰囲気を演出してくれる、世界でたったひとつのライトが作れます。福島県北塩原村の珈琲店「Rotten Row Coffee Roasters」の店員で、元茅葺き屋根職人でもある長内百合子さんが、ワークショップの共同講師を務めます(参加費:2,000円 ※雨天決行、荒天中止)。

会期中は、トークシリーズ「てんでバラバラ ~はじまりあれこれ、あちこちはじまり~」も予定。これまで〈はじまりの美術館〉と関わったことのある、さまざまなジャンルで活動するゲストを招き、美術館のこれまでやこれからについて、自由にお話します。

展示や出店、ワークショップなどを楽しみながら、アートや福祉、地域について考えてみませんか。夏の会期は、8月3日(土)から開催予定です。