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藪前知子さんをゲストキュレーターに迎えた「キュレーションを公平(フェア)に拡張する」展第2弾。〈HAPS HOUSE〉(京都市)にて2月12日まで開催中
展覧会情報

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2人の絵が上下に並んだ展覧会チラシ

開かれたアートシーンの形成を目指す展覧会

2024年2月12日(月・祝)まで〈HAPS HOUSE〉(京都府京都市)で、アイドルへの愛着を描いた2人のアーティストの作品をもとに、想いを届ける表現力について考える展覧会「君のための絵」が開催中です。

本展は〈一般社団法人HAPS〉が、「キュレーションを公平に拡張する」という企画の第二弾として実施するもの。〈東京都現代美術館〉学芸員の藪前知子(やぶまえ ともこ)さんがゲストキュレーターとして参加し、障害のある人が関わる文化芸術活動を拡張する基盤をつくる取り組みとして、開かれたアートシーンの形成を目指します。

本展を主催するHAPSについて

本展を主催する〈東山アーティスツ・プレイスメント・サービス(略称:HAPS)〉は、若手アーティストが京都市内に居住し、活動し続けることができる環境を整えるため、居住・制作・発表、仕事のコーディネートなど、包括的な支援を行う団体です。2011年にHAPS実行委員会を設立し、2019年4月に事務局を法人化しました。

2017年から、文化芸術の力を活用して、多様な背景を持つ人たちが共に生きることのできる社会のあり方を探り、その仕組みづくりを目指す「文化芸術による共生社会実現に向けた基盤づくり事業」を実施。2022年度より文化庁から受託した「公立美術館における障害者等による文化芸術活動を促進するためのコア人材のコミュニティ形成を軸とした基盤づくり事業」に取り組んでいます。本展はこの事業の一環として開催されます。

「キュレーションを公平(フェア)に拡張する」とは

近年、障害のある人が関わる文化芸術活動は大きく発展し、作品に接する機会もめずらしくなくなってきました。一方で、「障害のある人によるアート」として棲み分けられ、良くも悪くも特別視されています。その背景には、差別や排除が潜んでいる場合もあるかもしれません。

本企画は、そうした状況に対して、キュレーションの実践を通して働きかけるものです。気鋭の現代美術のキュレーターによる展覧会制作を通して、障害のある人の作品を着実に「開かれた、公平なアート」へと歩みを進めることを目指しています。

昨年1月に開催された第1弾のゲストキュレーターは、〈滋賀県立美術館〉館長(ディレクター)の保坂健二朗さんが務めました。

第2弾となる今回のゲストキュレーターは、〈東京都現代美術館〉学芸員の藪前知子さん。主な企画に、「大竹伸朗 全景 1955-2006」(2006年)、「山口小夜子 未来を着る人」(2015年)、「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」(2015年)、「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影」(2019-20年)、「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」(2020 – 2021年)、「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」(2021-2022年)などがあり、外部企画のキュレーターを務めるほか、美術評論も多数寄稿されています。

藪前知子さんのキュレーションによる展覧会「君のための絵」

藪前さんがキュレーターを務める本展のタイトルは「君のための絵」です。何かを描きたいという気持ちの芽生えである「好き」という感情。描くことは、好きなものの世界と繋がる方法であるとして、私たちがどこかに置き忘れてしまったこの感覚を更新し続けるアーティスト2名が取り上げられています。特に、今回の展示では「アイドル」への愛着を描いた作品に焦点を当てて紹介しています。

阿部美幸(あべ みゆき)さんは、1981年生まれで、社会福祉法人みぬま福祉会〈川口太陽の家〉に所属する作家です。好きな人との相合傘と、幸せの記号のようなチューリップの図像を、画面を埋め尽くすように描きます。

赤やオレンジ、黄色に黄緑で塗り込まれた絵の中に、よく見ると、チューリップや相合傘がペンのような細い線でたくさん書かれているのが見える
阿部美幸「チューリップと相合傘」2010年

田湯加那子(たゆ かなこ)さんは、1983年生まれ、北海道白老町在住の作家です。10歳の時からテレビで見た歌手などを題材にした人物画を描くようになり、以降、力強い線で対象を捉えた作品を大量に生み出してきました。本展では彼女が好きなアイドルたちを描いた作品を展示します。

3人のアイドルが衣装を身につけ、マイクを持ち、ステージに立つ姿が描かれている
田湯加那子作品(タイトルおよび制作年不明)

展覧会にあたって、藪前さんは彼女たちの作品が生まれる背景に思いを馳せながらこのように述べます。

“感覚や感情がメディアを通して交換されるこの時代に、自らの手でそれを表現し直そうとする彼女たちの営みは、私たちに、大きな世界に対する個の力を想像させてくれます。いわゆる「ファン・アート」とも地続きにあるこれらの作品は、「愛」という芸術に馴染み深い主題の現代的な表現でもあります。「推し」へのラブレターでもあり、溢れる自分の想いの受け皿でもあり、さらにはそうした閉じた関係を超えて、見るものに共感を促す彼女たちの作品は、人はなぜ表現するのかという大きな問いに対し、幾つもの答えを教えてくれるはずです。(ステートメントより抜粋)

展覧会は2月12日(月・祝)までの金・土・日・祝日、12:00〜18:00まで、京都駅から徒歩10分程の〈HAPS HOUSE〉にて開催しています。ぜひ作家の作品を楽しみに会場を訪れてみませんか。「好き」が溢れる作品に出会い、自分の中のそうした感情が再び芽生えるきっかけになるかもしれません。