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孤独と向き合いながら、「言葉」で誰かとつながる。土門蘭さん新刊『ほんとうのことを書く練習』発売
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【画像】ほんとうのことを書く練習の書影。黒ベースに白の文字が基本。著者名のところだけ、縦に真っ赤なラインが入っている

SNSやAIに流されず「ほんとう」を共に探してくれる一冊

スマートフォンやパソコンを開けば、SNSには絶え間なくコメントが流れ、AIは瞬時にそれらしい答えを提示してくれます。膨大な文章の波が押し寄せてくるような日々のなかで、自分にとっての「ほんとう」を見失い、迷子になってしまう人も少なくないのではないでしょうか。

2026年3月に刊行された『ほんとうのことを書く練習』(ダイヤモンド社)は、自分自身の「言葉」を探し続けてきた文筆家・土門蘭さんの経験が詰まった一冊です。

「ほんとうのことを書く」とはどういうことなのか。そのシンプルな問いにまっすぐ向き合うなかで、自らの孤独を受け止めつつ、それでも他者とつながっていく方法を提案してくれます。

書くことは「ひとりになる」から始まる

小説や短歌、エッセイ、インタビュー記事、キャッチコピー、プレスリリースなど、さまざまな形で言葉を綴ってきた土門さん。本書は、そんな土門さんが自身の体験や読者から受け取った声をもとに、人が「ほんとうのことを書けない」心の動きについて綴るところから始まります。

本文見開き。こわいんです、の小見出しがついている
序章 私たちはなぜ「ほんとうのこと」が書けないのか(p.022-023)

私たちはなぜ「ほんとうのこと」が書けないのか。この問いに対し、土門さんが最初に指摘するのが、私たちの内側にいる「読む私」との関係性です。

「読む私」は文章を書くうえで大切な存在ですが、その視線が厳しいと、書きながら自分の文章を読んでしまい、「もっとかっこいい言い回しはないか」「これだと怒られてしまうかな」と読者の目ばかり意識してしまう。そうならないためにも、まずは徹底して「ひとり」になることが重要だと訴えます。

他者はもちろん、「読む私」にも退出してもらい、「書く私」だけにならないといけない。そこには感想、批評といったリアクション、つまり「読む」がない。ただただ「書く」だけがある。

(序章 私たちはなぜ「ほんとうのこと」が書けないのか p.035)

誰にも見せない日記と、他者へ届ける文章のあいだで

「書く」ことは、他者あるいは自分自身が「読む」こととつながっている。この視点に立って、『ほんとうのことを書く練習』の本編も、「読む」を問い直す第1章から始まります。ここで土門さんは、「読む私」が「書く私」を受け入れたときに初めて、私たちは自由に書けるようになると述べます。

とはいえ、書く習慣がない人にとっては、なかなか言葉が出てこないことも多いでしょう。本書では、そのような状態は「言葉の水路が詰まっている可能性が高い」と表現され、乗り越える手段として、誰にも見せない日記を書くことが勧められています。

日記を書くことでやりたいのは、この水路の掃除だ。一日のなかで生まれた感情、思考、つまり「ほんとうのこと」を外に出して言葉にしてやる。その一つひとつは、きっと些細な言葉ばかりだろう。ため息やぼやき、愚痴や悪口になることもあれば、時には惚気や感謝、祈りになることもあるかもしれない。何が出てきてもいいと自分にOKを出しながら、ひたすら言葉にしていく。一日分のスペースが埋まるまで。

(第2章 「誰にも読ませない文章」を書く p.094-095)
【写真】ベンチに置かれた本。暗闇の中で光が表紙を照らしている
撮影:今野良介

こうしたプロセスを経て、本書では「ほんとうのこと」を他者に向けて書く意義や方法が、さまざまな角度から提案されます。

ただし言葉は、人をエンパワーメントする一方で、時に他者を傷つける力も持っています。その恐ろしさを受け止めること、配慮を重ねることも、「ほんとうのこと」を書くなかで避けられません。それでも前に進むヒントとして、土門さん自身が読者とどう誠実に向き合おうとしてきたのかも、本書の中では綴られています。

「ほんとうのこと」の主語は、いつだって「私」であるべきだ。無責任に大きな主語で語る言葉は「ほんとうのこと」ではなく、誰かの自由を「壊す」目的を持ったアジテーションでしかない。

(第5章 書いたものが誰かに読まれるということ p.224)

出版に伴い刊行記念対談イベントが4月10・11日に開催

『ほんとうのことを書く練習』のきっかけとなったのは、編集を担当したダイヤモンド社の今野良介さんが、土門さんの前著である『死ぬまで生きる日記』(生きのびるブックス)の冒頭の文章に目を留めたことでした。2023年4月に発行された『死ぬまで生きる日記』は、土門さん自身が2年間にわたって受けたカウンセリングの記録を綴った本です。

本当のことを書きたい、といつも思っている。 私が惹かれる「強い文章」というのは、本当のことが書かれた文章だからだ。

(『死ぬまで生きる日記』p.06)

当時から今野さんは、“できるだけ多くの人の目に触れるための手法”に添った文章の比率が高まった結果、どこかで見たことのある言葉が社会に増えていることを懸念していました。

「人間がアルゴリズムに飲み込まれていくような感覚があった」という今野さんは、SNSやAIに流されたものではない、その人自身の「ほんとう」を書いた文章を増やしていくことが重要ではないかと考えます。そのヒントが社会からも求められていると考え、土門さんに「ほんとうのことを書く練習」というテーマで執筆を依頼しました。

【写真】木の下にたたずむ土門さん
撮影:吉田周平

発売直後から続けて重版が決まったという本書では、土門さんを招いた刊行記念イベントもいくつか行われます。

2026年4月10日(金)は、昨年秋に『とある都市生活者のいちにち』を刊行した写真家の植本一子さんと書店〈twililight〉でトーク。さらに同じ場所で、4月11日(土)には、1年前に『いい音がする文章 あなたの感性が爆発する書き方』を刊行した作家・作詞家の高橋久美子さんをゲストに迎える予定です。

また、刊行後すぐの3月19日(木)には、若者支援を行う〈認定NPO法人D×P〉理事長の今井紀明さんとのオンライン対談も開催されました。自分の言葉と向き合うことの大切さや、孤独と孤立の違いについて2人が語り合うこの動画は、YouTubeでいつでも視聴できるようになっています。

わたしの「ほんとう」をしっかりと見つめる。下手くそでも、かっこ悪くてもいいから、ほんとうの言葉を見つける。書くという行為を通じてそこに辿り着いたとき、人は少し息が吸いやすくなるのかもしれません。

ぜひ『ほんとうのことを書く練習』を手に取ってみてください。自分の考えや感情がわからなくなったという方、書いたものを他人に読まれるのが怖い方、言葉を通して誰かとつながりたいと思う方、すべての人に発見があるはずです。