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〈原爆の図丸木美術館〉(埼玉県東松山市)で5月5日(日)、沖縄をテーマにした開館57周年イベントを開催
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【写真】2023年の丸木美術館開館記念日のようす。美術館の外に横断幕や旗が飾られている

「原爆の図」を常設する〈丸木美術館〉で、沖縄に焦点を当てた記念イベント

画家の丸木位里さん(まるき・いり、1901~95年)と俊さん(とし、1912~2000年)夫妻が描いた連作「原爆の図」を常設展示する〈原爆の図 丸木美術館〉(埼玉県東松山市)で2024年5月5日(日)、開館57周年記念イベントが開かれます。

今年のテーマは、沖縄。夫妻が手掛けた「沖縄戦の図」に焦点を当てたドキュメンタリー映画を上映するほか、俳優・鍵本景子さんによる絵本『おきなわ島のこえ』の朗読や、画家・山内若菜さんによるワークショップを楽しめます。

【写真】青い建物の外観
〈原爆の図 丸木美術館〉

原爆投下直後に広島へ駆けつけた夫妻。生涯をかけて描いた戦争の悲惨さ

〈原爆の図 丸木美術館〉は、丸木夫妻が「『原爆の図』を、誰でもいつでもここにさえ来れば見ることができるように」との思いを込め、1967年に開設した美術館です。比企丘陵や都幾川の広がる、豊かな自然の中に建てられました。

「原爆の図」は、全15部におよぶ連作(第15部「ながさき」は長崎原爆資料館が所蔵)。水彩画家の位里さんと油彩画家の俊さんが、30年以上かけて共同制作した作品です。1つの作品の幅は、約7.2メートルにわたります。

【画像】白黒で描かれた絵画。裸の人たちが列をなし、端のほうでは折り重なっている
「原爆の図 第1部 幽霊」

広島は、夫・位里さんのふるさと。原爆投下当時、親、兄弟、親戚が多く住んでいたといいます。東京に住んでいた位里さんは、詳しい情報がないまま、投下の3日後に広島へ駆けつけ、焼け野原を目の当たりにします。妻・俊さんも1週間後に広島へ入り、2人で救援活動を手伝いました。

「原爆の図」の第1部となる「幽霊」が発表されたのは、その5年後。着物が燃え落ち、手や顔がふくれ、皮膚が「ぼろのようにたれさがった」状態の被爆者たちを描いたものでした。はじめは1作だけ、その後は3部作にと考えていた夫妻でしたが、巡回展などで日本や世界各地の人々と対話を重ねていく中で、作品は15部まで増えていったといいます。火災で亡くなっていく人々、水を求めて川へ向かったであろう人たちの遺体の山。被ばくした捕虜の米兵、韓国人や朝鮮人。さまざまな角度から、原爆と戦争の悲惨さを描いています。

当館では他にも、「水俣の図」、「南京大虐殺の図」、「アウシュビッツの図」など、夫妻が各地で見聞きしたものを絵にした共同作品を展示。70歳を過ぎてから絵を始めた、位里さんの母・スマさんの作品も見られます。

ドキュメンタリー映画、絵本、ワークショップ、写真展で沖縄をひも解く

今年で57周年を迎える〈原爆の図 丸木美術館〉。沖縄で非暴力の土地闘争をおこなった阿波根昌鴻さん(あはごん・しょうこう、1901-2002年)の写真展が開かれていることから、5月5日(日)の開館記念イベントでは、沖縄に注目します。

14時から丸木夫妻が手掛けた絵本『おきなわ鳥のこえ』(小峰書店)を朗読するのは、俳優・朗読者の鍵本景子さん。NHK朝の連続テレビ小説への出演や、映画『魔女の宅急便』(ニシンのパイの少女役)で声優を務めた経験を持ちます。2020年から、『おきなわ鳥のこえ』を紙芝居で上演してきました。

【写真】女性の顔写真
鍵本景子さん

14時半からは、元NHKディレクターの映画監督・河邑厚徳(かわむら・あつのり)さんによるドキュメンタリー映画『沖縄戦の図 全14部』(2023年)が上映されます。

【画像】映画のフライヤー。丸木夫妻が腰を曲げ、大きな絵を描いている写真が載っている

「沖縄戦の図」は、丸木夫妻が手掛けた全14部の連作。夫妻は1982~87年に沖縄へ通い、地上戦が繰り広げられた現場に立ち、絵を描きあげたといいます。戦争体験者や研究者の話、そして多くの書籍などをもとに制作されたこの作品は、沖縄県宜野湾市の佐喜眞美術館に収蔵されています。映画では全14部を詳しく紹介し、夫妻の取り組みや思考に迫ります。

また、当日は企画展「阿波根昌鴻 写真と抵抗、そして島の人々」も開催中です。阿波根昌鴻さんは沖縄戦後、米軍に占領された伊江島で農民たちと共に土地闘争を行った、「沖縄のガンジー」と呼ばれる人物。1955年から、強制的な土地接収や米軍の横暴をカメラで記録していました。本土初開催となる本展では、3000枚以上のネガからあらたに制作したデジタルプリント約350点を展示します。

イベントでは、シベリア抑留や福島県内の被ばくした牧場などをテーマに取り組み、〈原爆の図 丸木美術館〉で個展を開いた経験を持つ画家・山内若菜さんによるワークショップも開催。

 

【写真】女性の顔写真
山内若菜さん

その他、美術館の敷地内では地元産の有機食材などの出店も予定されています。新緑の美しいこの季節に、美術館で1日ゆっくり過ごしてみるのはいかがでしょうか。

【写真】美術館の外に椅子やテーブルを置き、談笑している人たち。後ろでは出店ブースを見ている人も
2023年開館記念日の様子