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ダンスの多様な鑑賞のあり方を共有する「音で観るダンスのワークインプログレス」が、6月11・12日に京都芸術センターで開催
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新聞紙をてにしたダンサーのみぎうでのがぞう、うえにワークインプログレスのしょうさいが、きいろいもじでかかれている
「音で観るダンス」の上演&トークイベントが、2022年6月11日と12日の2日間〈京都芸術センター〉で開催されます

言葉とともにダンスパフォーマンスを鑑賞する

視覚に障害のある人とない人が共にダンスを鑑賞するプロジェクト、「音で観るダンスのワークインプログレス」の上演とトークイベントが2022年6月11日(土)・12日(日)に〈京都芸術センター〉(京都府京都市)で開催されます。

視覚に障害のある人の視覚情報を補助する「音声ガイド」から着想を得たテキストをもとにパフォーマンスを上演し、視覚に障害のある人とない人が共に鑑賞し、感想を共有することで、多様なダンスの鑑賞のあり方を体験します。

ダンスを観る多様な視点を共有する

本プロジェクトは、「“障害”は世界を捉え直す視点」をテーマにカテゴリにとらわれないプロジェクトをプロデュースする田中みゆきさんが「ダンスを観る多様な視点を共有すること」を目的に企画したものです。

視覚情報を音に置き換えることで、鑑賞する人の頭の中にイメージを浮かび上がらせる、音声ガイド。その音声ガイドをダンスという身体表現につけることで、どんなイメージが生まれるかを視覚の有無を超えて体験し、ダンスの新しい見方につなげようと試みられています。

「視覚に障害のある人にとっては、普段縁遠いダンスというものを、音声を通した読書体験や映画鑑賞のように、視覚に依らずに想像を広げられる表現媒体として楽しんでもらいたいという思いがある。それと同時に、晴眼者(※注)にとっては、ダンスという多くの人には捉え難い身体表現を敢えて言葉にすることにより、さまざまな見方に開いていくことで、他者と表現を鑑賞することの醍醐味を体感したり、ダンス自体を解すことにつながればという思いを持っている」と、プロジェクトを企画した田中さんは述べます。(KIAC記事「解体しながらつくる、音で観るダンスは続いていく」より)

※注 視覚に障害のない人のこと

3年間の実践を経て、2022年新たな展開へ

本プロジェクトは、2017年から2019年にかけて〈神奈川芸術劇場(KAAT)〉(神奈川県横浜市)の主催事業として実施されました。音声ガイドの啓蒙やその可能性を考える場として、ワークショップや研究会、上演、トークイベントを、視覚に障害のある当事者が関わりながら開催。捩子ぴじんさんのソロダンスに合わせて、能楽師、演劇作家、語り部など多様なつくり手によるテキストが生まれ、ダンスを音で観ることについてたくさんの気づきや体験がシェアされてきました。

両足をひらいてひざをまげ、りょうてをそとがわにひらいているひとが3にん。ダンサーが、ひだりはしのひとのてにてをあわせ、たいじゅうをかけるようにしている
2017年度から2019年度まで〈神奈川芸術劇場(KAAT)〉で続いたプロジェクトは、視覚障害者の方たちと研究会を行いながら進められました

2021年度は、発展版として〈城崎国際アートセンター〉(兵庫県豊岡市)で滞在制作を実施。2022年3月に上演&トークが行われ、新たにダンサーとして迎えた、康本雅子さんと鈴木美奈子さんによるデュオ作品が創作・発表されました。今回は、〈城崎国際アートセンター〉で披露された作品を再構成したものが上演されます。

みどりいろのショートパンツをはいたダンサーが、ゆかにおちているしんぶんしをみぎてでさわっている。みぎあしはまっすぐのび、ひだりあしはひざからしたをうしろにまげている
〈城崎国際アートセンター〉で発表された、康本雅子さんと鈴木美奈子さんによるデュオ作品

ダンス鑑賞を深める、音とテキスト

ダンサーの2人は新聞紙、包丁、ネギといった日常にあるものを手に取り、それぞれのアプローチでダンスを展開します。また、2人は大半は離れた場所にいて、視覚に障害のない人であっても、視覚的に全体を把握することはできない前提で構成されているのも本作品の特徴です。

みどりいろのベストとショートパンツをみにつけた、ショートカットのダンサーが、てまえでしんぶんしをゆらしている。ひだりおくには、あたまとあしをゆかにつけ、からだをふたつおりにしたダンサーがみえる。
てまえに、こちらにせなかをむけてりょうてをひろげ、しゃがむむらさきいろのふくをきたダンサー。みぎおくに、しんぶんしのうえにたち、あしもとをみおろす、みどりのふくをきたダンサーがみえる。
〈城崎国際アートセンター〉で上演時の舞台写真

ダンサーに加えて、サウンドにアーティストの荒木優光さん、テキストに文筆家の五所純子さん、朗読に中間アヤカさんが参加。目の前で起こっていることや体の変容を受け止め、想像力を広げるテキストと、ダンサー自身の呼吸や声を使った音、そしてテキストを読み上げる音声ガイドの軽やかな声が、ダンスを観る体験を深めます。

このプロジェクトで、上演と同時に重視されているのはトークの時間。パフォーマンスの後に、どのように作品を受け止めたか、感想を共有する時間が設けられます。

10にんほどのひとが、ゆかにこしをおろし、わになっている。ひだりおくにもおなじようなグループがいる
〈城崎国際アートセンター〉で開催したときのトークの様子。このときは、グループに分かれて感想共有の時間を持ちました

本プロジェクトのタイトルが「上演会」ではなく、「ワークインプログレス」となっているのは、これまで上演ごとに形式や伝え方、構成を変えてきたプロジェクトのあり方を反映するとともに、鑑賞者が変わればダンスの観方は変わっていくという意味も込めているのだそう。

テキストと音とともにダンスを観ることで、どんなイメージや感覚が湧いてくるか。ぜひ会場で体験してみてください。