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インクルーシブな子どもの遊び場〈コパル〉が山形に誕生。6・7月に完成見学会、オンライントーク開催
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〈シェルターインクルーシブプレイス コパル〉の大型遊戯場内の写真
〈シェルターインクルーシブプレイス コパル〉の内観。「copal」の名前は、心・個々・この場所・こどもの「co」と、pal(友だち)・parco(公園)の「pal」に由来

生きる力を育む、インクルーシブな遊び場

性別や年齢、障害の有無、人種・国籍の違いといった背景や特性で、人を“分け隔てないこと”を意味する「インクルーシブ」。この概念を設計に組み込んだ「インクルーシブ・デザイン」の公園が、欧米を中心に1990年代以降つくられ、コミュニティの拠点としても機能しています。

日本でも、ここ数年でそうした遊び場づくりが少しずつ広がるなか、2022年4月に「インクルーシブ」をコンセプトにした児童遊戯施設〈シェルターインクルーシブプレイス コパル(以下、コパル)〉が山形県山形市にオープンしました。

設計から運営までを担っているのは、10社が共同出資した〈株式会社夢の公園〉(代表企業は〈株式会社シェルター〉)。山形市の子育て環境の整備の一環のなかで、子どもたちが幼少期からさまざまな特性を持つ人や幅広い世代と出会い、ともに遊び、触れ合うことによって育まれる、分け隔てのない共生社会の実現を目指しています。

〈コパル〉の外観。コパルの背後には雪化粧した蔵王連山が写る。
背後の美しい山並みに呼応する雲のような屋根が特徴的な〈コパル〉。誰もがふらりと日常的に訪れられるような、明るくひらかれた場所を目指してデザインされました

多様な人が一緒に遊び、学べる〈コパル〉の設備とは?

〈コパル〉が掲げる柱は3つ。
子どもの好奇心や感性、自ら考える力を育て「生きる力」につなげること。
その人らしさを尊重し、ともに遊び、学ぶ「インクルーシブ」な環境。
そして、山形の自然と文化に触れながら、地域ぐるみで築く「地域共生」の場となること。

そのような思いで設計された施設には、子どもたちの好奇心をさまざまに刺激し、可能性を伸ばすための空間づくりが徹底されています。屋内外には、車椅子ユーザーをはじめ、身体的特性がある子どもでも、それぞれの能力に合わせて遊べる遊具をさまざまに用意しました。

〈コパル〉の施設の詳細を記載したイラストマップ
〈コパル〉の館内マップ(公式サイトより)

〈コパル〉の建物内部には、室内スポーツ用の「体育館」と、乳幼児から小学校高学年までさまざまな年代の体力にあわせて遊べる「大型遊戯場」が用意されています。

遊戯場内は全体が緩やかなスロープ空間。斜面をはだしで駆け下りるなど、活発に遊ぶこともできる一方で、ロープや足がかり、ネットも用意されており、慎重に上り降りしたい子どもも楽しめます。一人ひとりの子どもの身体特性や個性に合わせ、同じ空間で遊ぶことのできる設計になっています。

〈コパル〉の「大型遊戯場」の別角度からの写真。緩やかなスロープが室内に設けられている
世代の異なる子どもたちの居場所が、ゆるやかにゾーニングされている「大型遊戯場」。「体育館」とも緩やかなスロープで連結され、ひとつながりの空間として回遊できるように設計されています

屋外には、水遊びスペースや、さまざまな遊具がそろう遊び場など、5つの「広場」が用意されています。

なかでも、特筆すべきはブランコエリア。一般的なブランコ以外にも、子どもと大人が向き合って楽しむものや、ハーネスで上半身を固定して乗れるもの、車椅子のまま乗れるもの、寝転がったまま揺れを楽しむものと、インクルーシブな遊具の豊富さには驚くはず!

屋外のブランコエリア。車椅子でも乗れるブランコの写真
手前にあるのが「車いす用スウィング」。ほかにもさまざまなブランコが並びます

施設は無料(デジタルアトラクション・教室など別途有料のものあり)。利用には、保護者または責任者の同伴が必要です。ただし、新型コロナウイルス感染症蔓延防止の観点から、2022年6月現在は山形市内の在住者や、市内への通園・通所・通学者などに利用が限定されていいます。

〈コパル〉の完成見学会を開催! 〈o+h〉も登壇するオンライン座談会も配信中

〈コパル〉には、このほかに「カフェ」「図書コーナー」「多目的室」などもあり、地域の交流の場として利用することができます。また、育児や発達について相談できる「子育て相談室」も置かれるなど、子育て支援センターとしての機能も兼ね備えています。

〈コパル〉の図書コーナーの写真
1000冊以上の本を揃える「図書コーナー」。奥には「カフェ」が併設され、羽釜で炊いたご飯、地元の新鮮な野菜・果物を取り入れた食育メニューの提供のほか、嚥下食の対応も予定しています。ほかに、外遊びで汚れた子どものお着替えスペースやシャワールームなども

こうした施設の設計は、奈良県香芝市の〈Good Job!センター香芝〉をはじめ、福祉施設や公共施設、まちづくりにおける建築設計などを数多く手掛けてきたユニット〈onishimaki + hyakudayuki / o+h〉によるもの。

ただインクルーシブな設備を用意するだけでなく、バリアを解消するためのスロープや手摺、誘導ブロックそのものが、誰にとっても新しい遊びや、学びのきっかけになるよう心がけたといいます。野山で自由に遊びを発見するように、「試してみたい」「探検したい」という気持ちを自然と生みながら、多様な人と一緒に居ることのできる空間が目指されています。

さまざまな角度から「インクルーシブ」について考えられた遊戯施設〈コパル〉。普段は大人のみでの入館はできませんが、見学を希望する方に向けて、2022年6月14日(火)と7月12日(火)の2日間、施設全体を一周できる完成見学会が開催されます(市外からの参加も可能で、参加費は無料)。

また、YouTubeにて視聴できるオンライン座談会も、期間限定で配信中です。設計を担当した〈o+h〉の大西麻貴さん・百田有希さんや、コパルの館長を務める色部正俊さんなど関係者4組が登場し、建築、公共事業の在り方、運営側と設計側のコミュニケーション、福祉や教育などについて語り合います。

週末や連休など、子どもにいろんな体験をさせたいと思う親も多いはず。その体験の候補に、〈コパル〉をはじめとした多様な個性や特性を持つ人と共に過ごすことのできる「インクルーシブな場所」を加えてみてはいかがでしょうか。