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現代サーカス&メディアアートで、SNS時代の“対立”をほどく。〈Room Kids〉最新作が8月22〜24日、シアタートラムで上演
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【写真】暗い空間に、いくつもの白い輪を持つ男性が青白く浮かび上がる。足元には複数の扇風機

分断を“遊び”で問い直す『トゥ・ルート・ディレクトリ』

アナログかデジタルか。感情かデータか。具体か抽象か——。

情報が溢れ、さまざまな問題が「◯◯か△△か」の二項対立で語られやすくなっている現代。互いの主張だけが両極化していくことも多いなかで、私たちは今何を大事にすべきなのでしょうか。

結成10周年を迎える、現代サーカスカンパニー〈Room Kids〉の最新作『トゥ・ルート・ディレクトリ』は、そうした社会の分断を、身体と映像を交錯させながらほぐそうと試みる作品です。上演は2025年8月22日(金)〜24日(日)、世田谷パブリックシアター「シアタートラム」(東京都世田谷区)にて行われます。

【画像】トゥ・ルート・ディレクトリのフライヤー。RoomKids、境界を探り続けた10年間の集大成、のコピーと作品解説、公演日時などが記されている
バリアフリー音声ガイド対応あり。上演前の「タッチツアー」も開催予定

身体性を取り戻す〈Room Kids〉の新しい舞台表現

「サーカス」といえば、華やかな空間で行われる超人的なパフォーマンスに、動物たちを交えた派手なショー。そんなイメージもあるなかで、〈Room Kids〉が取り組むのは、フランスなどヨーロッパを中心に演劇やダンス、音楽、美術などの芸術的要素を取り込み発展してきた、新たな舞台ジャンル「現代サーカス」です。

曲芸技術を、ただ見せるためではなく、感情や思想を表す道具として使う。〈Room Kids〉では特に、長年続けているジャグリングをベースとして、映像、VR、インスタレーションなどさまざまな手法を取り入れた作品を創作してきました。

【写真】複数のモニターに囲まれながらジャグリングをする男性
2016年公演『LOSTSCAPE』
【写真】青白く光る空間で小さなボールを操作する男性
2018年公演『Echoed Body』

10年活動するなかで、〈Room Kids〉メインパフォーマーの岡本晃樹さんは、特にテクノロジーと調和して身体性を取り戻すことを意識してきました。2023年に豊岡演劇祭で披露した『Tranquilizer』では、ボールジャグリングをリアルタイムにトラッキングし、その軌跡を映像として投影するなど、映像と人が双方に影響を与え合う作品を発表。

情報過多な現代におけるリアリティとは何か、身体とモノを重ね合わせていくまなざしが、今回の『トゥ・ルート・ディレクトリ』にも引き継がれていきます。

 

最新作『トゥ・ルート・ディレクトリ』とは

『トゥ・ルート・ディレクトリ』は、抽象性の高いジャグリング道具(ボールやリング)を日常物(レトロな扇風機など)の存在感と組み合わせることで、現代社会の「分けたがる視点」に対抗するような身体表現に挑む作品です。

カンパニー設立10周年の集大成でもある本作を、日本の現代サーカスのバリエーションを増やすプロジェクトとしても位置づける〈Room Kids〉。客席数200を超える世田谷パブリックシアター「シアタートラム」での挑戦にあたって、2025年8月25日まで制作費の支援を募るクラウドファンディングも行っています。

【写真】作品制作中と思われる風景。倉庫のような空間で、床にジャグリングの道具などが散らばっている

〈アーツカウンシル東京〉の東京芸術文化鑑賞サポート助成金を得て、バリアフリー音声ガイドにも対応されている今回の公演。上演2時間前には舞台美術に触れることのできる「タッチツアー」(各日1回/30〜45分程度)も予定されており、聴覚障害や視覚障害のある方でも楽しめるようになっています。

また、会場には車椅子スペースや、絵や文字の指差しでコミュニケーションがとれるコミュニケーションボードが設置されており、託児サービスや医師の配置もあります。

上演は3日間、それぞれ1回ずつ。「大きな舞台にふさわしい舞台美術を考えている」という〈Room Kids〉の挑戦は、現代サーカスという新ジャンルを拡張させながら、私たちの感覚をどう変えてくれるのでしょうか。気になる方はぜひ劇場まで。