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生理のつらさに早くから寄り添う。「小学生からのピル外来(生理外来)」が渋谷区のクリニックでスタート
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【画像】フローレンスこどもと心クリニックのホームページ

生理に悩む人へ、自分に合った選択肢を届ける「フローレンスこどもと心クリニック」

近年、生理に関する情報は様々な場所で取得できるようになりました。YouTubeでも著名人が生理用品を紹介したり、自身の体験談を話したり。2019年には、生理をキャラクター化して描いたマンガ作品『生理ちゃん』が手塚治虫文化賞・短編賞を受賞、映画化も公開されて話題を呼んでいます。

以前は、「生理はつらくて当たり前、我慢するもの」という風潮が強く、生理のつらさには鎮痛剤しか手段がないと思い込んでいた人も少なくありませんでした。そうした社会と比べると、今はずいぶん情報にアクセスしやすくなってきたのかもしれません。

しかし、​​初潮を迎えたばかりの子どもや、自分の体の悩みを打ち明けにくい子どもたちにとっては、正しい知識にアクセスすることのハードルが高いのも事実。すべての女性が自分に合った「選択肢」を持てる社会には、まだ程遠いとも言えるでしょう。

〈認定NPO法人フローレンス〉のグループ法人が運営する「フローレンスこどもと心クリニック」では、2025年6月より「小学生からのピル外来(生理外来)」の診療を開始しました。本外来では、小学生以上であればどなたでも受けることが可能であり、生理痛に関する相談をはじめ、低用量ピルなどのホルモン療法、漢方薬や鎮痛薬による治療、必要に応じた採血など、幅広い対応を行います。

「生理はつらくて我慢するもの」から「かかりつけ医に気軽に相談できるもの」に

「フローレンスこどもと心クリニック」は、2017年に「マーガレットこどもクリニック」として渋谷に開院。運営する〈医療法人社団マーガレット〉の理事長・駒崎弘樹さんは、日本の子育て領域の課題解決と価値創造に取り組む〈認定NPO法人フローレンス〉の創設者でもあります。

本院も、子育てに寄り添う小児科としてスタートし、育児中の医師たちを中心に診療を重ねました。その中で次第に増えていったのが、子どもの発達や不登校に関する相談だといいます。

親子の不安に応えたい。今の社会の中で、子育てや家事の負担が大きく偏りがちな女性の悩みに寄り添いたい。そのような想いから、2020年に発達外来を開始、さらに2023年に女性のための心療内科や、不登校を選んだ子どもたちのための不登校外来も開設しました。

【写真】3階建ての茶色のビルの外観

そして2025年6月、新たな挑戦として開設されたのが、小学生以上であればどなたでも相談可能な「小学生からのピル外来(生理外来)」です。「年齢に関わらず『誰でも相談できる』『治療の選択肢がある』ことを知ってほしい」という思いを込めて名付けられました。

「小学生からのピル外来(生理外来)」は、3つの背景をもとに誕生しています。

1つ目の背景は、「子どもの生理は“つらくても我慢するもの”とされている」という社会的な課題です。思春期の子どもたちは、生理のつらい症状について相談しにくく、適切な医療や支援につながりづらい状況にあります。さらに、同世代や親世代が似た経験をしていることも、「生理は我慢するもの」という風潮を根強く残す要因になっています。

2つ目は、性教育の不足により「生理が“治療できるもの”だと認識されていない」現状です。子ども自身はもちろん、身近な相談相手である親世代も、生理に関する最新知識を得る機会は十分とはいえません。近年、ピルの普及によって生理との付き合い方に選択肢が増えてきたものの、保護者が治療に懐疑的な場合、子どもの服用が認められないケースもあります。

3つ目は、子どもの生理について「相談できる医療機関が少ない」という医療的な課題です。そもそも子どもの生理の場合、婦人科と小児科のどちらを受診すればいいか迷うケースも多いことでしょう。また、病院側でも「子どもは診察できない」「ピルの処方はできない」と診察や治療を断るケースも少なくありません。

同外来では、相談内容に応じてピルだけでなく、漢方薬や鎮痛薬、生活指導など幅広い治療の選択肢が提案されます。また、必要に応じて婦人科専門医と連携しながら、一人ひとりの状態や希望に寄り添った支援も予定されています。

生理外来担当医を担当する栗原史帆さんは「身近なかかりつけ医に生理の相談ができることで、生理は“我慢するもの”という今のあたりまえを変えていきたい」と語ります。

【写真】デスクに座り、こちらに微笑むTシャツをきた女性
生理外来担当医の栗原史帆さん

大人も、子どもも、SRHRが守られる社会へ

自分の体や性、生殖について誰もが十分な情報を得ることができ、望み通りに選択や決定ができることと、そのための必要な医療やケアを受けられる権利として「SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)」と呼ばれるものがあります。

この権利はもともと「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」として、1994年に国連主催の国際人口開発会議(ICPD)で提唱されました。現在は世界保健機関(WHO)や国連人口基金(UNFPA)などの国際機関も推進しています。

「フローレンスこどもと心クリニック」は、大人だけでなく、生理が始まる小学生や中学生のSRHRも守られるべきだという考えから、「小学生からのピル外来(生理外来)」が始まりました。

【写真】フローレンスこどもと心クリニックの名前とロゴが入った大きな窓ガラス

どんなに生理に関する情報やコンテンツが増えても、自分の体の悩みを誰かに共有するには、少なからず勇気がいります。

筆者自身も、高校時代は生理による強い眠気に悩まされ、「大学受験と重なったらどうしよう」と不安を抱えながら過ごしていました。20代に入ってからは、立ち上がれないほどの痛みに襲われることも多く、「あの子、弱いよね」「また休んでる」と思われるのがこわくて、友人や同僚に話そうとすると、思わず涙がこぼれてしまうこともありました。生理にまつわる不安を、同じように一人で抱え悩んでいる人は、今も少なくないはずです。

外来の名前にあえて「小学生からの」とつけることは、年齢に関係なく「ここでは生理のことを話していいんだよ」とやさしく伝える大きな一歩になっています。自分自身はもちろん、身近な大切な人が悩みを抱えているなら、「こんな病院があるよ」と、そっとクリニックのことを教えてみてください。