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アートとは何かを問う企画展「人間の才能 生みだすことと生きること」が滋賀県立美術館で開催中。3月27日まで
展覧会情報

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独自の手法でものづくりをする作家たちを中心に、全17作家の作品が展示されます

人間の才能である「つくる」ことついて問いかける展覧会

アール・ブリュットにフォーカスし、アートとは何か、”つくる”とは何かを問う企画展「人間の才能 生みだすことと生きること」が、2022年3月27日(日)まで、〈滋賀県立美術館〉(滋賀県大津市)で開催中です。

キュレーションを担当するのは、近現代美術を専門とし、アール・ブリュットの研究を行う保坂健二朗さん。東京国立近代美術館主任研究員を経て、2021年1月から滋賀県立美術館のディレクター(館長)に就任しました。

「アール・ブリュット(art brut)」とは、フランスの芸術家ジャン・デュビュッフェが1945年頃に提唱し広めた言葉で、フランス語で「生(なま)の芸術」という意味です。日本では「障害のある人によるアート」というイメージで受け取られることが多いですが、元々は、「芸術的文化によって傷つけられていない人々が創作したもの」を指すとされています。

本展で紹介するのは、既成の表現にとらわれず、つくりたいという真摯な欲求に基づいて、独自の方法論で作品を生みだす作家たちです。「生みだすこと」と「生きること」が一体となっているような彼らの作品を鑑賞すると同時に、「アール・ブリュット」を相対的に捉えることができる展示構成によって、アール・ブリュットという概念やアートとは何か、そして人間にとって重要な才能である「つくる」とは何か、について問いかける展覧会となっています。

「アートのどのカテゴリに当てはまるかどうかではなく、その根源にある人間の才能のひとつである『生みだすこと』について皆さんと一緒に考える場として美術館が機能できればと考えています」と、本展を企画した保坂さんは述べます。

さんかアーティストのさくひん8てんと、テキストがはいちされた、フライヤーうらめん

起承転結の4つのパートからアートやものづくりについて考える

展覧会は、起承転結の4つのパートによって構成されています。

「起」のテーマは「アール・ブリュットとは何か?」。アール・ブリュットという言葉の定義や、「アウトサイダー・アート」という言葉と比較しながら、その歴史を振り返ります。

「承」では、国内外で注目を集める日本のアール・ブリュット作家を紹介。ハサミで紙を細かく切ることで繊細な立体作品を生みだす藤岡祐機さんや、まるで縄文土器のように装飾的で、ユーモラスな表情を浮かべた不思議な生き物を粘土でつくる澤田真一さん。さらに大判の作品として、妖怪たちが練り歩く現代版・百鬼夜行のような世界を描き出す鵜飼結一朗さんの作品が、絵巻物のように展示されています。独自の手法でものづくりを続ける彼らの作品から、人間が本来持っている「つくる」という才能の圧倒的な力を感じることができるでしょう。

くろいいっぺんのかみのまんなかよりうえから、あおいいとがたくさんでているようにみえる
藤岡祐機《無題》2006-2009年頃、滋賀県立美術館
ユーモラスなひょうじょうをうかべた、ねんどでできたいきもの
澤田真一《無題》2009年、滋賀県立美術館
ほねになったきょうりゅうや、どうぶつ、さまざまなひとがえがかれている
鵜飼結一朗《妖怪》2021年、やまなみ工房 © Yuichiro Ukai / Atelier Yamanami Courtesy Yukiko Koide Presents

続く「転」で展示されるのは、アール・ブリュットを相対化するような作家やプロジェクト。視覚障害がある人に絵を描いてもらうプロジェクトや知的障害のある人の入所施設〈みずのき〉の絵画教室での実践など。「芸術的文化によって傷つけられていない人による芸術」とされるアール・ブリュットの枠には収まらない作品たちから、改めてアール・ブリュットやアートとは何かを一歩深めて考えます。

しろいおおきなきゃんばすに、ちゃいろのえのぐでえがくひとがいる
アルトゥル・ジミェフスキ《Blindly》2010年 Courtesy the artist, Galerie Peter Kilchmann, Zurich, and Foksal Gallery Foundation, Warsaw

「結」は展覧会を訪れた人が参加するパートです。会場には、来場者が書き込むことができる、ミラー状の壁が設置されています。

作品を鑑賞するのみならず、来場者も感じたことや考えたことを言葉にすることで、共に考えることができるような場として本展は開かれています。

「リビングルームのような美術館」としてリニューアルした滋賀県立美術館

滋賀県立美術館は、2021年6月にリニューアルオープンした美術館です。前身は、1984年から約40年の歴史を持つ、滋賀県立近代美術館。内観やコンセプトも新たに、再オープンしました。

館の方針として、広くものづくりをする人の活動に寄り添う「Creation」、アートとは何かを来館者に問いを投げかける「Ask」、地域に寄り添う「Local」、一人ひとりの学びに貢献する「Learning」、の4つの軸「CALL」を掲げています。

「リビングルームのような美術館」を目指してリニューアルされた館内は、エントランスにカフェスペースとミュージアムショップを設置。さらに元レストランをキッズスペースに変更し、オムツ替えスペース、授乳室も設置されるなど、美術館のあるびわこ文化公園を訪れた人が誰でも気軽に入ることができます。

おくにてんじょうまである、ガラス張りのまど、あおいいろのソファが点在している
リニューアルされた滋賀県立美術館のエントランス

ぜひ美術館を訪れて、「生みだす」ことと「生きる」ことが一体となった作家たちの多様な才能に出会い、アートとは何かを問うてみませんか。

Information

企画展「人間の才能 生みだすことと生きること」

会期:2022年1月22日(土)〜3月27日(日)
休館日:毎週月曜日。ただし月曜日が祝日の場合は開館し、翌日火曜日が休館。
(3月21日(月)は開館し、3月22日(火)は休館。)
開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
会場:滋賀県立美術館(滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1) 展示室3
観覧料:一般 1,300円(1,100円)、高・大生 900円(700円)、小・中生 700円(500円)
※( )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳等をお持ちの方は無料

出品作家:井村ももか、鵜飼結一朗、岡﨑莉望、小笹逸男、上土橋勇樹、喜舍場盛也、古久保憲満、小松和子、澤井玲衣子、澤田真一、アルトゥル・ジミェフスキ、冨山健二、中原浩大、福村惣太夫、藤岡祐機、山崎孝、吉川敏明
主催:滋賀県立美術館
後援:エフエム京都
企画:保坂 健二朗(滋賀県立美術館ディレクター(館長))

Webサイト:滋賀県立美術館