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アール・ブリュット展「この街で待つ」が、東京都品川の〈ぐるっぽ〉で開催。アサダワタルさんがディレクションを担当
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アール・ブリュット展「この街で待つ」のチラシイメージ

“街”から生まれる、アール・ブリュット展

2019年、品川児童学園跡地に開設された〈品川区立障害児者総合支援施設(愛称:ぐるっぽ)〉にて、2022年2月24日(木)~3月6日(日)の期間、アール・ブリュット展「この街で待つ」が開催されます。

「アール・ブリュット」とは、専門的な美術教育を受けていない人が、独自の発想と方法によってつくり出したアート作品を指します。〈ぐるっぽ〉では、毎年テーマを設けたアール・ブリュット展を開催してきました。今年は“街”をテーマに、全国のアール・ブリュット作家によって創作された都市や景観にまつわる絵画、造形物、写真、オブジェを展示します。

現実と想像が織り交ざった街を、黒いペンで画面全体に細かく、鳥瞰図のように描き上げた絵画作品
辻勇二「心でのぞいた僕の街」 写真:高石巧

本展のディレクションは、〈社会福祉法人 愛成会〉のスタッフとして〈ぐるっぽ〉のコミュニティ・アートディレクターを務める文化活動家・アサダワタルさんが担当。〈こここ〉でも連載「砕け散った瓦礫の中の一瞬の星座 -ケアと表現のメモランダム-」で、「ケア」と「表現」の交わる場についてのエッセイを綴っています。

“街”から発展した展示作品とは?

本展で展示されるのは、生活圏である街並みの変化の記録、現実と想像が織り交ざった街を鳥瞰図のように描き上げた絵画、風景写真をもとに街を再現した粘土作品など、さまざまな技法や表現の仕方で“街”を切りとった作品たち。

なかには、街のコンビニのコピー機を使って、自分の顔とそのときどきの気に入った物を写しとる日課から生まれた作品も。作者・井口直人さんがプリントを終えると、コンビニの店員が手際よくコピー機のガラス面を拭きあげるという、約15年にわたる街と井口さんとの関わりが作品の裏側に存在しています。

街のコンビニのコピー機を使って、自分の顔とそのときどきの気に入った物を写しとった、井口直人さんのプリント作品
井口直人「無題」(制作年不詳)
風景写真をもとに街を再現した粘土作品
上村空「名古屋」(2018年) 写真:米田昌功

あわせて、旧東海道品川宿の新旧の風景を織り交ぜた写真も展示されます。〈ぐるっぽ〉が位置する場所は、かつて品川宿と呼ばれたエリア。現在は埋め立てられていますが、ひと昔前までは海苔の養殖が盛んな海辺の街でした。そこで、昭和30〜40年代の水辺での生活文化や、当時の商店街の様子を記録した写真パネルと、現在〈ぐるっぽ〉に通所するメンバーがポラロイドカメラで撮影した街並みの記録写真などを交えて展示。作品として楽しむのはもちろん、街の変遷にも注目です。

ポラロイドカメラで撮影した街並みの記録写真
なりきり!撮影クラブ(熊谷敏江)「無題」(2021年)

3月5日に行われる「公開ワークショップ」では、紙芝居師・林加奈さんと障害のあるメンバーがつくり上げた不思議な紙芝居「品川さんぽ物語」の披露や、体奏家・新井英夫さんと、ダンサー・板坂記代子さんと行ってきた表現ワークショップの一部も公開されます。

誰もが暮らしやすい世界の訪れを待ちながら、できることを、ひとつずつやっていく

〈ぐるっぽ〉は、あらゆる人が地域のなかで共生する社会を目指し、施設を利用する人が一歩一歩着実に、前に向かって歩んで行けるようにという願いから、品川区の障害福祉政策の一環として設立されました。

品川の街に暮らす地域住民の協力を得ながら、障害のある人たちが、ありのままの自分を安心して表現できる日常を支えるのが〈ぐるっぽ〉の役割。そしてこの街で、誰もが暮らしやすい世界の訪れを“待つ”とともに、できることを、ひとつずつやっていく。それが同施設の思いと願いです。

親しみをもって施設を見守る街への感謝の気持ちを込めつつ、〈ぐるっぽ〉の思いを展示を通して多くの人と分かち合いたい。それが本展の目的でもあります。品川という街だからそこ生まれた、かけがえのない日常を、作品を通して感じてみてはいかがでしょうか。