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京都・崇仁地区の記憶を未来につなぐ。「挿し木プロジェクト」活動報告展、2022年2月14日から
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ちらし・崇仁すくすくセンター(挿し木プロジェクト)活動報告展2020〜21
「崇仁地区」の歴史や人々の記憶を未来に伝える、〈崇仁すくすくセンター(挿し木プロジェクト)〉の活動報告展が開催されます

〈崇仁すくすくセンター〉活動報告展が開催

国内外から、多くの人が足を運ぶ町「京都」。コロナ禍以前の2019年には5,352万人に上る観光客も訪れた京都の、“玄関口”であるJR京都駅のすぐ東側に、「崇仁(すうじん)」と呼ばれる地域があります。

ここはかつて同和対策事業の対象になっていた場所で、大正時代には被差別部落運動の撤廃を訴える「水平社運動」の拠点が設立されるなど、歴史的にさまざまな差別と向き合ってきました。近年は人口の大幅な減少や高齢化などの課題も抱えるなかで、2023年にこの「崇仁地区」へ、現在京都市西部にある〈京都市立芸術大学〉が移転されます。

京都市と大学の計画に伴い、「文化芸術都市・京都」の新たなシンボルゾーンを目指す流れが進む一方、これまでの地区の姿を残そうとする動きも生まれています。その一つが、京都〈崇仁すくすくセンター(挿し木プロジェクト)〉。

この〈崇仁すくすくセンター〉の活動報告展が、2022年2月14日(日)から2月20日(日)まで開催されます。場所は〈京都市下京いきいき市民活動センター(うるおい館)〉です。

ちらしうらめん
「崇仁すくすくセンター 2020〜2021活動報告展」のちらし(注:2月19日のトークイベントは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、来年度に延期)

土地の記憶を残す〈崇仁すくすくセンター(挿し木プロジェクト)〉

〈京都市立芸術大学〉移転に向けて、刻一刻と姿が変わりつつある崇仁地区。工事に伴い、これまで住民の暮らしを支えてきた小学校や改良住宅(地区の環境整備のために設けられた市営住宅)、保育所の解体に伴って、まちに植えられていた樹木が失われようとしています。そうした樹木を媒介とし、土地の記憶や人のつながりを継承していくことを目指しているのが、〈崇仁すくすくセンター(挿し木プロジェクト)〉です。

〈崇仁すくすくセンター〉の活動は、2020年4月にスタート。文化芸術の活動を応援する〈一般社団法人HAPS〉が主催する「文化芸術による共生社会実現に向けた基盤づくり事業」のモデル事業の一環として立ち上がりました。

プロジェクトの中心を担うのは、京都を拠点に活動するアーティストの山本麻紀子さん。大学移転の予定地である〈元崇仁小学校〉〈元崇仁市営住宅〉〈元崇仁保育所〉に生えていた樹木の枝を採集して、それらを苗木ポットに挿し、日々の管理をしてきました。2020年4月から8月の間に約50種の樹種から枝を採取、その総数は776本に上ります。

ぽっとにうえられたなえぎ

以降、山本さんは試行錯誤しながら挿し木の世話をしてきました。地域の方々と見守り、共に育てながら、いずれ崇仁地区をはじめ縁のある場所に地植えすることを目指しています。採取した全ての挿し木の地植えが完了するのは2030年の予定。じっくりと時間をかけて、崇仁地区の記憶を未来へとつなぐプロジェクトです。

2020年度からの活動をまとめた報告展

もともと山本さん個人によって始められた〈崇仁すくすくセンター〉ですが、地域の福祉施設・行政・外部専門家なども交えながら長く活動を続けるため、2021年度に〈崇仁すくすくセンター実行委員会〉を発足しました。代表に山本さんが名を連ね、樹木の成長を見据えた長期的なビジョンのもと、組織として体制を築いています。

2022年2月14日(日)から開催される活動報告展では、スタートから現在までのプロジェクト概要をパネル展示するほか、挿し木の樹木がもともと生きていた場所の写真や、挿し木をする様子を収めた写真がスライドショーで紹介される予定です。

また、〈崇仁デイサービスうるおい〉の方と協働制作した、挿し木の樹種13種のちぎり絵作品を展示。あわせて、3つの挿し木を同施設内で育てている利用者さんによる、挿し木の見守りのお話も披露されます。

さいきをかこむかいのようす
2021年9月に開催された「挿し木を囲む会」の様子。樹木の挿し木や、自生していたころの写真を見ながら、崇仁に暮らす方々とたくさんのお話をされたそうです
さしきのちぎりえ
2021年12月から始めた「13の樹木のちぎり絵制作」。山本さんの描いた下絵に、〈崇仁デイサービスうるおい〉の利用者さんが作った色和紙が貼られていきます。最終的に13枚を大きな布に縫い付け、タペストリーのような作品として完成する予定です

今回の活動報告展では、プロジェクトのリサーチ過程で山本さんが生み出した、挿し木のポットに使用した赤玉土の焼き物や、植物から採集した染め物、手作りの媒染液を使った絵なども展示が予定されています。

「2年間の活動を通じてプロジェクトに興味を持っていただくこと、応援、ご一緒してくださる方が増えることを心から願っています」と山本さん。

「崇仁地区」の歴史や、人の記憶を未来につないでいく〈崇仁すくすくセンター〉の現在地を、一度見に行ってみてはいかがでしょうか。