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終末ケアをめぐる澤辺由記子・池田晶紀二人展。神田ポートにて3月6日(金)〜8日(日)開催
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展覧会メインビジュアル。写真:池田晶紀

看取りや終末ケアをテーマにした展覧会「The Living Daylights」

大切な人が最期を迎えるとき、どんな空間でその時間を過ごしてもらいたいでしょうか。そして、自分がそのときを迎えるとしたら、どんな環境をのぞむでしょうか。

厚生労働省「人口動態統計」(2024年速報値)によれば、いま日本では、亡くなる人の約7割が医療機関で最期を迎えています。1950年代には8割以上が自宅で息を引き取っていたことを思えば、看取りの風景はこの数十年で大きく変わりました。真っ白で無機質な病室は、その人らしい最期にふさわしい空間なのでしょうか。そんな問いを掲げ、看取りや終末ケアをテーマにした企画展「The Living Daylights」が2026年3月6日(金)〜8日(日)の3日間、神田ポート(東京都千代田区)にて開催されます。

本展のキュレーターは澤隆志さん。出展作家は、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・グラフィックデザイナーの澤辺由記子さんと、写真家の池田晶紀さんです。3月8日(日)には、精神科医の星野概念さんを招いたトークイベントも行われます。

池田晶紀 IKEDA Masanori
series “DOUBLE NATURE” 「Pirts, Pirtis」
2025

光の差す部屋で、最期を考える

本展を企画したフリーランスのキュレーター澤隆志さんは、2000年から2010年までイメージフォーラム・フェスティバルのディレクターを務め、以降も数多くの美術館やフェスティバルなどと協働し、展覧会やプロジェクトを手がけてきました。映像や現代美術の領域を横断しながら、社会と芸術の接点を探り続けています。

今回の企画の背景には、フローレンス・ナイチンゲールの著作『看護覚え書』の一節があるといいます。

「老練の看護師あるいは永く病んでいる患者以外の人びとには、長期にわたってひとつ二つの部屋に閉じ込められ、毎日毎日、同じ壁と同じ天井と同じ周囲の風物とを眺めて暮らすことが、どんなに病人の神経を痛めつけるかは、ほとんど想像もつかないだろう。」(フローレンス・ナイチンゲール著『看護覚え書』より)

環境が人に与える影響とは——。その視点は、現代の病室や終末期の空間にも通じる問いを投げかけます。

展覧会タイトルの「The Living Daylights」は、「意識」や「正気」、「生命」の意味を持つ慣用句です。楽曲や映画のタイトルとして目にしたことがあるかもしれませんが、本展では、部屋に差し込む光、生きているあいだに感じる光の気配を重ね合わせています。

澤辺由記⼦「最期のとき」(2024)

出展アーティストは澤辺由記子さん・池田晶紀さんの二人

本展に参加するのは、同じ年に身近な人の看取りを経験した二人のアーティストです。それぞれの経験を踏まえ、医学的・倫理的に“正しい”とされる終末ケアを踏まえながらも、そこにとどまらない、気持ちに沁みるもの/こととは何かを探ります。

澤辺由記子さんは、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師であり、グラフィックデザイナーでもあります。活版印刷のアーカイブに携わったのち、スイス滞在を経て、現在はヘルスケアとデザインの実践を臨床の現場から考察しています。身体に触れる仕事と視覚表現を往復するその視点は、「環境が身体に与える影響」という本展のテーマとも響き合います。

池田晶紀さんは写真家。1999年より活動を開始し、写真事務所「ゆかい」を設立。クリエイティブディレクターとしても活動し、本展の会場である〈神田ポートビル〉のクリエイティブディレクションを担っています。神田ポートを拠点にした数々のプロジェクトを通して、街と人の関係を編み直す試みを続けています。

会場の神田ポートビル。印刷会社の旧社屋をリノベーションした建物で、地下1階にはサウナラボ、2・3階には「ほぼ日の學校」の教室スタジオが入居しています

展示空間には2人の写真作品に加え、季節の花を活けたオリジナルの花器も並びます。神田ポートの自然光が当たることで部屋に小さな変化を与えるトライを発表する予定です。ベッドの上で長い時間を過ごす人にとって、視界に入る小さな変化は大きな意味を持ちます。花の色やかたち、器の質感、光の当たり方。そうしたささやかな要素が、閉ざされた空間に揺らぎをもたらし、生の感覚を呼び起こすかもしれません。本展では、看取りや終末期を医療や看護の観点にとどまらず、インテリアや建築、写真といった多角的な視点から考えていきます。

展示やトークを通して考える

最終日の3月8日(日)には、精神科医の星野概念さんを招いたトークイベント「わたしの覚え書」も開催されます(要予約、参加費500円)。終末におけるケアをはじめ、それぞれの想いや考えをクロストーク形式で進めていきます。

人がどのような光のなかで生き、最期を迎えるのか。その問いを、アートを通して考える3日間。ぜひ会場で、あなた自身の「最期の時間」について、思いを巡らせてみてください。