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ろう者の若者を描く映画『私たちの話し方』が3月27日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国公開
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3人のろう者のアイデンティティや社会との関係を描く
テーブル越しのふたりが、手話がよく見えるよう鍋の湯気をかきわける仕草。騒がしい飲み屋が、それぞれの手の動きに没頭して無音になる瞬間。夜のビル街に向かって、誰にも聞こえず、見えずに行われる「私は静寂を選ぶ」という宣誓……。
聴覚障害を扱った映画であると同時に、「音」を介さない表現やコミュニケーションがこんなにも豊かなものなのだ、ということを感じさせてくれる香港映画が日本で公開されます。タイトルは『私たちの話し方』。ろう者の若者たちの葛藤と成長を描いた作品で、2026年3月27日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国で順次公開されます。
© 2024 One Cool Film Production Limited, Lee Hysan Foundation. All Rights Reserved.
『私たちの話し方』は、異なる環境で育った3人のろう者の若者を中心に、それぞれの言語の選択や価値観の違いを通して、アイデンティティや社会との関係を見つめる群像劇です。舞台となる香港では、かつてろう学校での手話教育が制限されていた歴史があり、人工内耳(注1)の普及や教育制度の変遷などを背景に、ろう者を取り巻く環境は大きく変化してきました。そうした社会的状況のなか、3 人がアイデンティティや社会との関わりを模索する様子や、ろう者社会の内側にあるグラデーションを描き、「聞こえないことをどう受け止め、どう生きるのか」という問いを浮き彫りにします。
注1:補聴器では十分な効果が得られない人がつける医療器具。皮下にコイルを挿入するため手術が必要
監督は、『狂舞派』シリーズなどで知られる香港映画界の気鋭、アダム・ウォンさん。手話によるコミュニケーションの豊かな表現や、ろう者の「聴こえない」「聴こえにくい」感覚を体感的に伝える音響設計など、これまでにない視点から“ことば”を見つめる作品として注目を集めています。
3人の若者が向き合う「言葉」と「生き方」
物語は、2005年の香港のろう学校から始まります。ろう者の家庭に生まれ、手話を母語とする少年ジーソンと、補聴器を装着し人工内耳手術を控えた転校生アラン。互いに異なる環境で育ったふたりは次第に友情を育みますが、社会のなかでの生き方や言語の選択をめぐって、それぞれ異なる道を歩んでいきます。
やがて成長したアランは広告クリエイターとなり、人工内耳の促進活動を通じてソフィーと出会います。幼い頃に聴力を失い、人工内耳を装用して“聞こえる人”として社会に適応してきたソフィーは、「科学が発展すればこの世からろう者はいなくなる」と発言。その言葉に強く反発したジーソンとの出会いをきっかけに、彼女はこれまで知らなかったろう者の文化や世界に触れ、自分の生き方を見つめ直していきます。人工内耳、手話、口話という異なるコミュニケーション手段をめぐり、それぞれの価値観が交差するなかで、3人は自分なりの答えを模索。ろう者社会のなかにある多様性や葛藤を、恋愛や友情、将来への迷いといった普遍的な青春の感情とともに描き出します。
© 2024 One Cool Film Production Limited, Lee Hysan Foundation. All Rights Reserved.
ソフィー役には、ラジオDJ出身で俳優・作詞家としても活動するジョン・シュッインさんが出演。本作での演技が高く評価され、第61回金馬奨最優秀主演女優賞を受賞しました。ジーソン役には、アダム・ウォン監督の『私たちが飛べる日』(2015)で映画デビューし若手演技派として注目されているネオ・ヤウさん。アラン役には、演技未経験で中等度難聴の当事者であるマルコ・ンさん。また、少年時代のジーソンとアランを演じた 2 人には、中等度難聴の当事者であるネイザン・チェンさん、コーダ(注2)であるジェシー・ウォンさんが起用されています。
注2:CODA: Children of Deaf Adults 聴えない、聴こえにくい親の元で育った聴者の子ども
本作は2025年に香港で公開され、若い観客を中心に支持を集めロングランヒットを記録。第43回香港電影金像奨で7部門にノミネートされたほか、香港電影評論学会大賞の推薦作品に選出されるなど、批評・興行の両面で高い評価を得ています。日本でも映画祭上映で注目を集め、劇場公開が期待されていました。
監督がこの作品で描きたかったものとは
アダム・ウォン監督は1975年香港生まれ。香港中文大学在学中に映画制作を学び、2004年に長編デビュー作『ベッカム、オーウェンと出会う』で香港アジア映画祭インディペンデント・スピリット賞を受賞しました。その後も『The way we dance -狂舞派-』『私たちが飛べる日』『狂舞派3』などを発表し、香港映画界を代表する監督の一人として知られています。俳優としても活動し、スタジオジブリ作品『風立ちぬ』の広東語版で主人公の声を担当するなど、日本文化とも縁の深い存在です。
アダム・ウォン監督は本作について、「聞こえないことを克服するのか、それとも受け入れるのかという狭間で、ろう者がどのように生きるのかを問いかけたい」と語っています。
脚本家のシーキングさんと出会い、ろう文化のリサーチを進めるなかで、聞こえないことに誇りを持つ人々の存在や、かつて手話が禁止されていた歴史を知ったことが作品の出発点となりました。また、観客がろう者の世界を体感できるよう、さまざまなサウンドデザインを取り入れたこともこの作品の特徴。音の表現にも強いこだわりがあり、聴こえ方の違いによって感じ方やどう生きるかの選択肢が変化することを映像と音響で表現することをめざしたといいます。さらに、「ろう者としてのアイデンティティの確立」というテーマを中心に据えながらも、普遍的な青春映画としての側面も大切にしたと監督は語ります。
社会のなかで自分らしく生きるとはどういうことか
『私たちの話し方』は、ろう者の若者たちの物語を通して、言葉のあり方や多様な生き方について問いかける作品です。「聞こえる・聞こえない」という単純な対立ではなく、そのなかにあるさまざまなグラデーションを描きながら、社会のなかで自分らしく生きるとはどういうことかを見つめ直すきっかけを与えてくれます。
この映画を観ることは、コミュニケーションの形が多様化する今の社会において「ことば」と「理解」の意味をあらためて考える機会となるかもしれません。人と人がどのように関わり合ってどのように生きていくのかを考える際に、『私たちの話し方』は新たな視点に出会うきっかけとなるのではないでしょうか。
インフォメーション
映画『私たちの話し方』
公開情報:2026 年 3 月 27 日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
監督:アダム・ウォン(黄修平)
原題:看我今天怎麼說 英題:The Way We Talk
字幕:最上麻衣子
バリアフリー版制作協力:Palabra株式会社
字幕協力:大阪アジアン映画祭株式会社
配給:ミモザフィルムズ
© 2024 One Cool Film Production Limited, Lee Hysan Foundation. All Rights Reserved.
公式 X:@thewaywetalkjp
Information
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