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虐待やDVの被害、“民間”で認定できるのを知っていますか?〈ゆずりは〉が支援措置サポートガイドブックを発刊
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ゆずりはの葉の写真が掲載された、ガイドブック表紙画像
2024年5月末に発刊された「支援措置サポートガイドブック」

「民間団体による被害認定」の促進を目的に作成されたガイドブック

住まいを変え、新しい生活を始めようとする人の中には、養育者による虐待や配偶者によるDVなどから逃れてきた人も少なくありません。そんな方々にとって、居所を加害者に知られる“可能性がある”ということは、「安心で安全な暮らしを送りたい」という願いそのものを脅かすものでもあります。

こうした被害者のために、住民票や戸籍の情報が不当に利用されないようにすることができます。「支援措置」と呼ばれるこの制度を利用するためには、警察や児童相談所などによる認定が必要とされていますが、実は、民間の相談機関などでも対応が可能です。

民間団体による認定手続きのサポートを促進することを目的に、〈社会福祉法人子供の家 ゆずりは〉は2024年5月、「支援措置サポートガイドブック」を作成しました。本冊子には、手続きの流れから、相談者へのヒアリングで聞くこと、準備する書類などについて、内容とポイントがまとめられています。

「ゆずりは」の入口の写真。植物に囲まれている
冊子を作成した〈ゆずりは〉では、児童養護施設や里親家庭を離れた人などをはじめとした、親や家族を頼ることができない人を支援しています

支援措置とは?

「支援措置」とは、DVやストーカー行為、虐待などの加害者が、被害者の住所探索を目的に住民票の写しや戸籍の附票の写しを取得することを制限する制度。被害にあった方の尊厳が、これ以上傷つけられないよう守るための仕組みです。

ただし、支援措置を利用するには、自治体の窓口に申請を行う際に、専門機関に「支援の必要性」を認定してもらうことが必須となっています。また、制度の利用期間は1年間で、期間を延長する場合には、再び専門機関からの認定を得なければならない、というハードルがあります。

認定にあたっても、「現在被害を受けているかどうか」で措置の必要性を判断される場合があったり、証拠が示しづらい精神的被害を受けた方は認定を得ることが困難なケースもあったりするといいます。さらに被害の実態についての聞き取りの中で「二次被害」(周囲の人の対応などによって新たに傷つけられてしまうこと)を受け、トラウマが再燃し、申請を諦めてしまう方もいます。

認定は民間の相談機関などでも可能となっていますが、あまり知られていないのが現状。重要な制度でありながら、被害にあった人々が相談しやすい環境づくりには、課題がありました。

〈ゆずりは〉のサポートガイドブック

二次的なトラブルを防ぎ、被害者が安心して申請手続きを進めるためにも、被害者への寄り添いを専門とする民間団体が被害認定の担い手になることが必要ではないか。そう考え、今回冊子を制作したのが〈社会福祉法人子供の家 ゆずりは〉です。

〈ゆずりは〉は、児童養護施設や里親家庭を離れた人をはじめ、社会に出たあとに困難を抱えてしまう人を支援する団体です。親や家族から被害を受けて保護された人は、社会に出て困ったことがあっても頼る先がないケースが多くあります。〈ゆずりは〉はそうした人が安心して相談できる場所として、2011年にオープンしました。

ジャムづくりをしている様子の写真
社会生活をするうえで必要な手続きを助けるほか、働く場としてジャムづくりも行っています

10年以上に渡り、困難を抱える方々への相談援助を行ってきた〈ゆずりは〉。その中では、支援措置を受けたくても手続きにハードルを感じて諦めている人の声を何度も耳にしてきました。

民間の支援団体でも申請で必要となる被害の承認ができることがわかり、積極的に支援措置のサポートをしていくうちに、年齢や性別を問わず幅広い方から相談が増えていきます。民間団体によるサポートの輪をより広げていきたいとの思いから、〈ゆずりは〉はガイドブックの制作に踏み切りました。

具体例とポイントがまとめられたサポートガイドブック

支援措置の手続きの流れ、相談者へのヒアリング内容、手続きに必要なもの、窓口での説明の流れ、申請時に自治体の窓口でよく言われることとその対応策。

ガイドブックでは、これらのポイントと具体例が、24ページの冊子の中に、簡潔に読みやすい形でまとめられています。

相談者へのヒアリング内容の例が書かれた、ガイドブックの中の見開きページ
相談者へのヒアリング内容の例
手続きに必要なものが掲載された、ガイドブックの中の見開きページ
手続きに必要な書類など、チェックリストとしても使用できるページも

被害認定を民間ができることについてはまだ理解が進んでいないこともあり、窓口での説明の流れや、申請を拒否された場合に取ることができる対応や利用できる制度についても詳しく書かれています。

窓口での説明の流れの例が書かれた、ガイドブックの中の見開きページ
窓口では、諦めずに「根気よく伝える」こととの大切さなども触れられています

ガイドブックはウェブサイトからダウンロードが可能。また、紙の冊子も用意されており、〈ゆずりは〉のメールアドレスから、送付を依頼することもできます。

“支援措置を必要とする人が、手続きのなかで二次被害を受けたり、トラウマが再燃したりすることのないよう、私たちが積極的に、申請・承認をしていきましょう!!!!

それこそが制度や窓口の人たちの姿勢をも変わっていくことにつながると信じています。”

 

「はじめに」に記されたこの言葉には、ガイドブックに込められた思いが端的に表れています。この冊子が支援団体、行政、そして個人に広がることは、虐待やDVを受けた人が安心して暮らせる社会をつくるきっかけになるかもしれません。