福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

【写真】川縁に佇み、こちらを向く女性【写真】川縁に佇み、こちらを向く女性

“見過ごされやすい”若者たちと出会うこと、声から社会を動かすこと——〈認定NPO法人D×P〉COO・入谷佐知さん 福祉のしごとにん ― 働く人のまなざし・創造性をたずねて vol.06

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「学費が支払えずに退学になりそうです」
「家族の介護に疲れて鬱を発症しました」

今にも消えてしまいそうな、一縷の望みを託した若者の声。全国各地から届くそれらの声に、10年以上に渡って寄り添い続けてきた団体がある。「ユース世代に、セーフティネットと機会提供を」をミッションに掲げる、〈認定NPO法人D×P〉だ。

オンラインで進路や就職の相談に乗る「ユキサキチャット」、繁華街にセーフティネットとなる場所をつくる「街中アウトリーチ事業」など、〈D×P〉は若者の声に耳を傾けながら、いくつも事業を生み出してきた。

柔軟な活動を支えるのは、個人や法人からの寄付金だ。

〈D×P〉の「活動報告書2022-23」を見ると、2023年3月末時点でのマンスリーサポーターは2843名。年間の寄付収入は1億7416万円と、法人の経常収益の9割以上を寄付で賄っていることがわかる。

今やNPO法人の寄付収入のモデルケースとして語られることも増えた、〈D×P〉のファンドレイジング。それを立ち上げ時から裏側で支えてきたのが、理事でありディレクター/COOの入谷佐知さんだった。

およそ10年前、広報の担当者として〈D×P〉に入職した入谷さんは、もともとコンサルティングの仕事をしていたという。彼女は、なぜ若者支援の世界へきて、何を大切にしながらユース世代の声に向き合ってきたのか。見過ごされやすい困難の実情をどのように社会に訴え、さまざまな人に応援してもらえるNPOをつくり上げていったのだろうか。

例年よりも早い梅雨入りを迎えた頃、オフィスのある大阪・天満橋でお会いした。

【写真】水面に向かって歩く女性

変えるべきは、個人ではなく「社会」だと思ったから

〈D×P〉が創業したのは2010年。その2年後にNPO法人として認証を受け、2015年には寄付者に税制上の優遇がある「認定NPO法人」になり、助成金や事業収益ではなく寄付収益を柱にユース世代の支援をするようになった。

現在は正職員21名に加え、アルバイトや業務委託のスタッフを含む40名ほどの規模で、13〜25歳を対象にさまざまな相談事業、食糧や現金などの給付を行っている。

入谷さんが入職したのは、法人格を得た翌年の2013年。4人目のメンバーだった。若者支援の世界に関わることになったきっかけは、ご縁があり出会った代表・今井紀明さんの言葉だったという。

「若者が希望を持てる社会をつくりたい」と話していて、一緒につくってみたいなって思ったんです。

この言葉に惹かれたのはなぜだったのだろう。

「若者の希望」と聞くと、綺麗で光っているようなイメージを持たれる方が多いんですけど、私は違っていて。真っ暗で何にもない、“詰んだ”ように思える状況から、一筋見えるものが「希望」だと考えているんです。もう無理かもしれないと思った瞬間に、親しい友人の顔が浮かんだり、誰かと喋りたい気持ちが生まれたりするものじゃないかって。

【写真】オフィスで茶色の丸テーブルに座る入谷さん
〈認定NPO法人D×P〉理事 ディレクター/COOの入谷佐知さん

でも、それは本人の力量に拠ることじゃないんですよね。周りに素敵な方がいることや、その方に出会わせてくれた家族や友人の存在などが積み重なって生まれることなので、環境に寄るところが大きい。だから、今井が社会の「構造」に着目して事業を進めているところに、しっくりきた感覚がありました。

〈D×P〉を通じて、さまざまな困難の裏側を知る

広報担当として働き始めたものの、当時の組織の状況は「なんで私を雇ったんだろう、ってくらいの売上規模だった」と入谷さんは笑う。プレスリリースを書いて発信する、などの一般的な広報業務にコストを掛けることは難しく、まずはすでに動いていた事業のねらいや成果を、一つずつ整理するところからのスタートだった。

【写真】オフィスに置いてある、D、X、Pのフォントの置物

創業期から続いている〈D×P〉の事業に、「クレッシェンド」がある。これは通信・定時制高校に、経験も背景もバラバラな大人たちがボランティアとして出向くプログラムだ。生徒一人ひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくる対話型授業として提供していた。

広報担当として現場スタッフと話をし、時には学校現場にも足を運ぶ毎日。その中で、「心が軽くなった」「将来が明るいものだと思えた」など、触れ合う高校生たちにポジティブな変化が生まれていることを目の当たりにし、入谷さんは〈D×P〉が営む事業の手応えを掴んでいった。

【写真】ホワイトボードの前に立つ3人が、楽しげに手をあげこちらを向いている
通信制高校でのクレッシェンドの様子(提供写真)

同時に、一言で「高校生」といっても、公立/私立の違いや地域性によって、子どもの置かれている状況が大きく違うことも見えてきた。「私たちには想像しがたい事情がさまざまに潜んでいる」と知るなかで、振る舞いの難しさも入谷さんは感じていく。

それは、ユース世代が多く関わる〈D×P〉の組織内でも同様だった。

当時自分では気づいていなかったけど、私の言葉ってきつかったんだと思います。自分が発した何気ない一言で、若手スタッフを傷つけてしまうこともあって……。例えばある時、インターン学生の子が約束の会議に来なかったんです。後から「行けなくなりました」と連絡があり、私は「始まる時間までに連絡できる?」と、優しめに返信したつもりでした。すると「いや、ベットから出ることすらできなかったんだ」と言われてしまって。

連絡する行為は、私にとっては“サクッと送るだけ”だけど、その子にとっては違った。「どの言葉を選ぶか、さっちん(入谷さんの愛称)がどう受け取るかを考えながら、やっと送ったメールなんだよ」って教えてもらい、一方的に正論をかざす浅はかさを知りました。

【写真】スマートフォンを手に語る入谷さん

今だったら「そっか、わかった」と返信をして、本人と話せるタイミングで体調などを聞いていると入谷さんは続ける。しんどい時に送るスタンプを決めよう、「あ」の一文字でもいいよ、と相談しながら進めることもあるそうだ。

時間通りに来てもらえなくて困る自分もいるので、とにかく試行錯誤を続けました。そうやってユース世代が身近にいるうちに、それまであまり見えていなかった彼ら一人ひとりが、私にとって大切な存在になったのかなと思います。

公的サポートを得にくい「ユース世代」

〈D×P〉が対象としてきた10代〜20代前半の若者たちは、「子ども」から「大人」への過渡期にある世代だ。大人のように扱われることもあるが、実は経済的資本などの使えるリソースはまだまだ限られており、周囲から“見えづらい”困難を抱えている場合も多い。

また社会の傾向として見ても、少子高齢化によって意見が反映されづらく、公的サポートが後回しにされやすい状況にある。2022年の日本の総人口は1億2495万人だが、〈D×P〉の対象に近い10〜24歳までは1708万人で、全体の13.7%(参照:e-Stat 人口推計)。これを仮に30人学級に置き換えると、10〜24歳は「クラスにわずか4人しかいない状態」と入谷さんは喩える。

【写真】大阪の街並み

その立場だったら、“クラスで多数派”を占める大人たちは自分たちの意見を聞いてくれないかも、って感覚になるだろうなと思っていて。しかもよく見ていくと、“4人”いるユース世代も、それぞれに背景が違うんです。

例えば、経済的に余裕があり、教育にも力を入れる家庭で育った子。経済的には余裕があるが、発達障害の傾向があり、将来働くことに不安がある子。性的マイノリティでありそうだと本人に自覚があり、学校での集団行動も嫌になっている子。親御さんが精神疾患を抱えていて経済的に余力がなく、アルバイトせざるを得ない環境にいる子……。

これまで数多くの10代と関わってきた経験から、入谷さんは、一人ひとりが全く異なる状況に置かれているユース世代の難しさを実感している。

同世代でも、お互いの状況を想像できないんですよね。クラスで4人しかいなくて、年代の近い人でも話が通じづらいなかで、諦めのような気持ちを持ってもおかしくありません。

だから、大人や社会に期待をしていなかった子が〈D×P〉に何か一つでも期待を寄せてくれたら、それをきちんと叶えたい。そして、それが次につながる仕組みをつくっていきたいと思っています。

寄付を軸に、5年スパンの支援と育成へ

厳しい状況にある若者が、少しでも希望が持てる環境づくりに挑む〈D×P〉。創業期は私立校へのクレッシェンドや、理事メンバーによる学校へのコンサルティングが中心だったが、その後大きく事業の裾野を広げていく転換点が2015年にあった。ある日、「自分が亡くなる前に、持っている資産を贈りたい」と多額の寄付の申し入れを受けたのだ。

次世代のために役立ててほしいとおっしゃって、年間1000万円ずつ3年に渡って〈D×P〉に寄付をしてくださることになりました。そこで、より支援を必要とする若者が多い、公立の定時制高校にお金を使わせていただこうと。同時に、もっと個人や法人から寄付を募り、助成金・補助金や委託事業に頼らない収入を得られる仕組みをつくろうと、今井と話したんです。

予算のある学校しか〈D×P〉に仕事を依頼できない委託事業の仕組みでは、困難を知りながら、若者に手を差し伸べることができないケースも多かった。そこに「寄付」という財源が加わることで、純粋にユース世代の困りごとに向き合い、事業を考えていけるようになったという。

寄付額そのものに目標値はありませんでしたが、全体の収入の半分をマンスリーサポート(月ごとの定額寄付)で賄えて、かつそれが月々の固定支出と同額になればいいなと思ってましたね。コツコツやってきて、今ようやくその水準に到達しつつあります。

【画像】前期の受取寄附は1億4371万円、今期の受取寄附は1億7416万円
活動報告書2022-23」より。2022年度末の〈D×P〉マンスリーサポーターの数は個人2738人、法人105件にのぼる

一方、寄付に対し「街頭募金」のようなイメージを持っている人も多く、収益の軸に置くことを不安に思う方もいたという。

でも、国や自治体からいただく助成金や補助金は単年や数年で切られてしまうことも多く、ずっと続く保証はありません。ユース世代を継続してサポートしきれないし、スタッフのキャリア形成にもコミットしづらいんですよ。

月額寄付の制度を始めたことで、資金のプールもできるようになり、5年スパンで物事を考えやすくなりました。マンスリーサポーターも入れ替わりはありますが、9割は継続してくださってます。

コロナ禍、「ユキサキチャット」がもう一つの転機に

寄付者を広く募って事業を運営するのであれば、より一般の人々にもわかりやすく「ユース世代の困難」について説明していく必要がある。だが、他の世代と比較するとそもそも見過ごされやすく、当事者へのアプローチもしにくい若者の課題に関する広報・ファンドレイジングには、かなりの難しさがあったと、入谷さんは話す。

クレッシェンドは学校向けの事業なので、生徒の声を世に出すには一つずつ学校の許可を得る必要があります。すると、例え学校側が協力的だったとしても、リアルタイムで現状を伝えることはできません。寄付につなげることはハードルが高く、目を向けてもらうために、今井がマラソンチャレンジのクラウドファンディングをしたりすることもありました。

そうした中で、もう一つの転機となったのは、今や1万人を超えるユース世代が利用するLINE相談「ユキサキチャット」だ。前身となる10代向けオンライン相談が生まれたのは2018年秋。コロナ禍が訪れた2020年6月に、進学や就職などのさまざまな相談ができる窓口として現在の形になった。

ユキサキチャットで対応している相談内容の例(〈D×P〉公式サイトより)

大人に比べ、ただでさえ選択肢の限られるユース世代は、身の回りで複数の困難が重なると、生活がたちまち立ち行かなくなることも多い。新型コロナウイルス感染症により学校や職場が休みになるなど、社会的な混乱も大きかった2020年4月から8月にかけて、ユキサキチャットの登録者数は約2.5倍に伸び、特に生活困窮を訴える若者の声が増えていった。

〈D×P〉はすぐさま緊急支援として食糧の配送や現金給付を実施。2022年度からは、若者のニーズに合わせた3種類の「ユキサキ支援パック」を用意し、緊急度に合わせて食糧と現金を届けている。

ユキサキ支援パックは、緊急度に応じて、現金8万円を届ける「緊急支援パック」、月1万円と食糧3カ月を送る「短期支援パック」、生活が安定することを目指し食糧を6〜12カ月に渡って届ける「長期支援パック」の3つを用意
事務所下にある作業場で、スタッフが一箱一箱手で詰めていく。食糧支援はアレルギーや生活状況などを踏まえて個別対応している
炊飯器や調理器具を持っていない人には、お湯を沸かすだけのレトルト食品や、そのまま食べられる加工品を中心にパッキングする。コロナになった場合のセットも用意しており、希望者の生活に寄り添った細やかな配慮がなされていることがわかる

長引くコロナ禍では、想像以上のユキサキチャット、ユキサキ支援パックの要望に、追加の財源も必要になった。より多くの寄付が必要な現状を訴えるため、〈D×P〉公式や今井さん個人のSNSアカウントで、現金給付を今いくら支援し、食糧を何食届けてきたかという発信を何度も見かけるようになっている。

これは広報・ファンドレイジング部門として見れば、直接支援のサービスが伸びていくことで、「当事者の声」を寄付者に届けやすい状況になったとも言える。マンスリーサポーターも2019年度からの4年間で約4倍に増えるなか、2022年度には食糧支援を計510名に対して6万4560食分、現金給付を計420名に対して2391万円行うことができた。

ご本人と直接つながっているので、その方の尊厳を大切にする前提で、許可をいただければすぐに実際の「声」として外に出せるようになりました。「家賃の滞納を解消できました」「志望校に合格しました」などいただいたメッセージを、SNSやメールマガジンなどで発信し、寄付者の方々に届けています。

何かを選んだ瞬間、何かを否定する言葉の難しさ

2022年、入谷さんは広報担当から事業全体を統括するディレクターの立場になった。企業でいうCOO(Chief Operating Officer)、団体における事務局長のような役割だ。今は、クレッシェンドやユキサキチャットなどの事業部マネージャーに伴走しながら、経営方針を考えるのが主な仕事になっている。

見える景色が広がった分、人事に財務、マーケティング、広報、そして現場と、それぞれの間で、何を選び取るのか難しい判断を迫られることも増えたそうだ。

例えば、2022年8月から始まった「街中アウトリーチ事業」。繁華街に新しいセーフティネットをつくることを目的に、道頓堀のグリコ看板の下(通称:グリ下)に集まるユース世代に向けて、月数回フリーカフェを開き、お菓子や飲み物、生理用品などを無料配布してきた。

1年足らずのうちに、のべ利用人数は678名に昇り、飲食提供数も953個に伸びた。個別対応も増えニーズの高さを実感した〈D×P〉は、2023年6月、新たに「ユースセンター」を立ち上げ、必要とされる支援を届けやすい体制をつくろうとしている。

そうした活動を言葉にしようとすると、「本人の尊厳」を最優先に考えつつも、寄付者を増やすことや社会的認知を広める重要性も測りながら結論を出さなくてはいけない。入谷さんと新規事業部マネージャーの野津岳史さんは、背景を紹介するテキストをつくる際、こんなやりとりをしたと話す。

最初、グリ下には「家に居場所がない若者が集まる」と書いていました。しかし、野津から「そういう子だけじゃない。普段は家で過ごしていても、別の居場所を求めている子だっている」と言われたんですよね。その子が見たときに、「自分は来ちゃダメなのかな」と感じてしまう可能性があると。

じゃあどの言葉が妥当かなと考えて、グリ下に来る子は拠り所を探しているから「居場所を求める若者が集まる」にしたんです。でも、これはこれで、来ている子からは「求めているわけじゃない」って言われちゃうかもしれないですけど……。

「活動報告書2022-23」より

ファンドレイジングの視点から考えると、わかりやすい言葉の方が寄付しやすいことも入谷さんは理解している。ターゲティングができる広告次第では、表現を変えてもいいかもしれないと悩む。

それでも当事者が目にするものであれば、できるだけ実情に近い言葉を世の中に届けようと、メンバーで何度も推敲を重ねる。それが、最初に今井さんが語った「若者が希望を持てる社会」を実現するために欠かせないプロセスだからだ。

〈D×P〉は創業期から「否定せず関わる」ことを大切にしてきました。それを表現するにはどうしたらいいんだろうと、今もずっと考えています。

なぜなら、困りごとを抱えたユース世代は、真っ暗な中で、一筋の希望を持って〈D×P〉に来てくれるから。せっかくのその手を、掴ませていただけたらありがたいなって。大人に期待したら仇で帰ってきた……そんな経験をたくさんしてきた子どもや若者を、もう裏切りたくないんです。

〈D×P〉も私も、社会と共に変化していきたい

目の前にいるユース世代の声を聞いて、クレッシェンドやユキサキチャット、街中アウトリーチ事業と活動を広げてきた〈D×P〉。それに合わせて、入谷さんの役割や目線も変化してきた。

これから先、若者がより生きやすくなるには、どんな社会になればいいだろう。そしてその時、〈D×P〉はどのような存在になっていたいと考えているのだろう。

最近歴史の本を読みすぎて、どういう社会像がグッドなのかわからなくなっている部分もあるんですけど……(笑)。まずは人が人として、尊重される社会であってほしいですね。

「人権」って近代的なもので、これまで人類はそれが本当に尊重された社会を経験したことがありません。だから、もし全ての人に人権が尊重されたとしても、私たちが見えていない課題は残るんじゃないかなと思って。

“社会”ってゲームのルールのようなものなので、そこに当てはまらずに生きづらさを抱える人は、どんな時代になっても必ず出てきます。だから〈D×P〉は社会が変わるごとに、光が当たっていない領域を照らしていきたいです。今の私の役割も、もっと適任な方が出てくると思うので、バトンを渡していけたら。

入谷さん自身、10代の子どもの親でもある。一人の大人として子どもに今の社会を見せるには、「恥ずかしい部分もありますね。こんな社会でごめんねって気持ち」と正直な気持ちを教えてくれた。

それでも〈D×P〉で10年に渡りユース世代を見てきたからこそ、入谷さんは社会が良い方向に変わり始めた兆しも感じている。

子どもたちの抱える課題が注目され、新たな予算がつくようになったり、多様な性への理解が少しずつでも進んだり。そうやって「今の社会にも悪くない部分があるよ」って、一個でも言えることが増えていったらなって思っています。

これまで入谷さんは、広報やファンドレイジングの力を生かして、社会の中で、〈D×P〉の中で、それまで見過ごされがちだったものに光を照らそうとしてきた。大阪を拠点に、実際にユース世代の可能性を広げてきた一人といえる。

移ろいゆく世界の中で、今後必要とされるものが変わるかもしれない。そんな時、きっと彼女は領域にこだわることなく、また軽やかに新しいチャレンジを始め、人が希望を持てる社会をつくるために邁進していくのだろう。もちろんその時は、当事者を第一優先に、その人の希望に一つひとつ寄り添いながら。


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