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デザインのまなざし編集後記 in 福岡②──「子どもの村福岡」と「認知症フレンドリーセンター」
編集後記

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2026年2月、取材でたずねた福岡。佐々木が在住するまち(滋賀南部)からは、一度京都に出たのち、さらに新幹線で3時間弱を要します。

せっかくの遠方取材ということで、今回は「TOKETA」のインタビュー以外に、前後2つの施設を訪問させてもらいました。

1つは、さまざまな理由で家族と離れて暮らす子どもたちの養育を行っている「子どもの村福岡」。もう1つが、福岡市の認知症フレンドリーシティ・プロジェクトの拠点「認知症フレンドリーセンター」です。

※ このブログは「TOKETA」の編集後記の続きです!

子どもの村福岡

福岡市西区、JRの九大学研都市駅からバスで10分ほどの場所に、「子どもの村福岡」はあります。運営するのは、本編でも紹介のあった〈認定NPO法人SOS子どもの村JAPAN〉。

2010年の開村以来、里親たちが、家族と暮らすことができない子どもたちと一つの家に共に暮らして、家庭的な養育を行ってきました。

【写真】子どもの村福岡の外観。木造平屋の大きな建物の前に、高いもみの木
撮影:佐々木将史(以下同じ)

村は5つの「家」のほか、事務所のあるセンターハウス、さまざまな用途で使われる「たまごホール」などで成り立っています。

5棟のうち、里親(ここでは「育親」と呼ぶ)が暮らす建物が3つ。訪問時点では、3人の育親が、それぞれ3〜4人の子どもたちと暮らしていました。

【写真】いくつかの建物に囲まれた広いスペース
村の中央には広場。地域の子どもたちも、普通に遊びに来るという

子どもの村福岡の養育が通常の里親と違うのは、チームでサポートをしあえるところ。〈SOS子どもの村JAPAN〉にもいつでも相談ができますし、近い境遇にある隣家同士が支え合うこともできます。

ただし、ここで一定の期間が過ぎると、育親は村を出て地域で暮らします。もちろん子どもたちの様子を見ながらですが、〈SOS子どもの村JAPAN〉との契約も、いずれは地域で暮らしていくことが最初から前提にあるそう。

経験を積んだ里親として外に出ることで、村と地域、新たな里親家庭をつなぐ、架け橋のような存在になっていくことが期待されているのを感じました。

【写真】ホールのような建物の内観。ピアノや、中二階に向かう階段が見える
雨の日の子どもたちの遊び場になったり、イベントが開かれたりする「たまごホール」。村の説明会などにも使われる

広報・ファンドレイジングを担当する雪松直子さんのご案内で、育親さんが暮らしている家以外の2棟の中も案内いただきました。

ここは開村当初、育親さんが暮らす家として使われていましたが、登録里親が子どもを短期間預かる「ショートステイ里親」(※記事本編を参照)の重要性が高まるなかで、2020年4月から福岡市との協働により「子どもショートステイ」事業に使われるように。当初は1棟のみの活用でしたが、半年後には2棟に拡大されています。

子どもを受け入れるのは、普段は育親をサポートしている〈SOS子どもの村JAPAN〉のスタッフの方々。区役所に申請すれば、基本的に誰でも利用できるのも特徴です。

実際に「急に入院をする必要が出た」「ちょっと子育てに疲れて」などさまざまな家庭から要望があるとのことでした。里親家庭が受け入れるショートステイと同様に、この事業は虐待防止などにも大きな意味を持ちます。

【写真】日当たりのいいリビングスペース。
【写真】奥に和室やキッチンが見える

子どもショートステイが象徴するように、〈SOS子どもの村JAPAN〉の事業は年々「予防」にシフトしつつあるようです。この夏には、福岡の中心部に多機能・都市型の児童家庭支援センターがオープンする予定もあります。

そうした動きの一方で、困難を抱えた子どもたちが長く暮らせる場所を用意し続けることも、引き続き重要です。それが地域の里親の場合もあれば、子どもの村の場合も、児童養護施設の場合もあるでしょう。

大切なのは、子どもが選べる環境を用意すること。選択肢があるんだと知ってもらうこと。「TOKETA」も新センターも、その手段として生まれたのだなと感じました。

【写真】6階立ての建物の図面
新センターの計画では昨年、「まちのあかりプロジェクト」としてクラウドファンディングでも2100万円を集めている

認知症フレンドリーセンター

福岡滞在中、もう1つの訪問先は「認知症フレンドリーセンター」です。認知症のある方の、日々の知恵とユーモアから生まれた展覧会「だいたいおっけー展」を以前ニュースで紹介して以来、ずっと気になっていて今回お邪魔しました。

フレンドリーセンターは福岡市中央区、天神などの繁華街からも徒歩で行ける場所にあります。市が所有する「健康づくりサポートセンター(あいれふ)」の2階、ロビー上の吹き抜けや通路以外の、フロア全体を占めています。

【写真】廊下の先で入り口の扉が左右に大きく開かれている。上に、認知症フレンドリーセンター、と大きく書かれた看板

オープンは2023年9月。福岡市が2018年から取り組んできた、認知症フレンドリーシティ・プロジェクトの新拠点という位置づけです。

このプロジェクトでは、「認知症の人にもやさしいデザイン」をつくり公共施設に導入していったり、認知症の人が活躍する機会をつくり出したり、認知症の人と企業をつないで、誰もが使いやすい製品やサービスの開発を行ったりしてきました。

【写真】ともに、という文字が目だつパネルコーナー
ご案内くださった、センター長の党一浩さん。所属する〈株式会社メディヴァ〉が、福岡市から認知症フレンドリーセンターの運営委託を受けている
【写真】高齢の方が安心して使い続けられるコンロ、と書かれたパネル
認知症の当事者と企業の共創プロジェクトの事例などがいくつも展示されていた
【写真】横向きのスマートフォン。ゴーグルをかけたときのような、左右2つの視点が写っているが、実際には赤い壁のイラストが黒く表示されている
メディヴァが開発した認知症のAR(拡張現実)技術。ゴーグルにスマートフォンをはめることで、目の前にあるものの色・距離感などの違いや、座ったり階段を登ったりする動作の難しさを体験できる
【写真】壁際にいくつもの作品が並ぶ
「だいたいおっけー展」の作品

認知症のある方も日常的に訪れることがあるというセンター内は、環境にさまざまな工夫がされていました。

例えば、ドアの位置がはっきりわかるようにコントラストをはっきりさせる、光の反射を抑えた床材を使う、視野が狭い人のために情報を目線の高さに置く、壁のポスターなどを極力少なくし余計な情報を入れない……など。

【写真】
利用者が使うドアはコントラストがはっきり。逆に、スタッフだけが使うドアは壁と同じ白になっていた

特に違いがわかりやすかったのはトイレです。センターがある2階は、認知症の人にもやさしいデザインが取り入れられていますが、すぐ上のフロアは以前のトイレのまま。

今まさに、こうした公共施設や市内の地下鉄のトイレなどが順番に改修されてきている最中、とのことでした。

【写真】
以前のままのデザインのトイレ(3階)。明度差がないので、ドアや便器の位置を認識しづらい。入り口の「トイレ」の文字は、頭より高い位置にあった
【写真】
認知症の人にもやさしいデザインのトイレの入り口付近(2階)。色使いやサインの位置が大きく変更されている
【写真】
認知症の人にもやさしいデザインのトイレの個室(2階)。壁を茶色にすることで、手前のトイレの位置を認識しやすくなる

党さんは「人口ボリュームを考えても、今後この領域はみんなが注目せざるを得なくなります。こうしたデザインが広がっていくことで、さまざまなマイノリティが暮らしやすい環境が整っていけばいいなと思います」と話してくれました。

実際、これらのデザインが普及するなかで、他の障害のある人向けのデザインと拮抗する(別の方の困難が増える)、といった話は今のところないそう。刺激が少なく情報を得やすいデザインは、むしろ幼い子どもや発達特性の偏りが大きい人など、さまざま方にやさしい環境を生み出すように感じました。

高齢福祉に携わる人もそうでない人も、福岡を訪れることがあればぜひ、訪れてみてほしいなと思います。

【写真】地面からこちらを見上げて手をあげるロボット
おまけカット:フレンドセンターにいたLOVOT