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パブリックアートの新たな挑戦。調布市文化会館〈たづくり〉にアール・ブリュット作家の作品を設置。公開は2024年1月まで
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東京都調布市〈調布市文化会館 たづくり〉1階エレベーターホールの壁を彩る、与那覇俊さんのウォールアートの写真
(撮影:ArtPlace Inc.)

調布市の文化会館〈たづくり〉に、超細密世界が登場!

多くの人がアクセスできる“公共の場”に設置される「パブリックアート」。駅や空港、広場や公園、病院やオフィスエントランスなど、それぞれの場所のコンセプトや文化・風土に合わせて設置されたアート作品は、空間の魅力を引き立たせ、人々の創造性を刺激し、観るものを楽しませてくれます。

東京都調布市にある文化複合施設〈調布市文化会館 たづくり〉でも、同館を利用する市民が最初に立ち寄る重要な玄関口である1階エレベーターホールを、2017年から現代アートを気軽に体験できるパブリックアート・スペースとして展開しています。

現在展示中の第9期アーティストは、沖縄県在住の作家、与那覇俊さん。本展のために描かれた《有限内の無限 0=3》がホールを彩っています。

別角度のウォールアートの写真
これまでに、日本画家の千住博さん、写真家のハービー・山口さんの作品なども展示したエレベーターホール。与那覇さんの作品は、向かい合うエレベーターホールの各面に1作品ずつ、合計2作品が展示されています(撮影:ArtPlace Inc.)

今回アートディレクションを行ったのは、全国の公共施設、医療施設、教育機関、オフィスなどのアートプロデュースを行う〈アートプレイス株式会社〉。そして、同社が委託したのは、芸術人類学を専門とするキュレーターであり、アートコーディネーターである嘉納礼奈さん。展示期間は2024年1月21日(日)までです。

架空のヒーロー「調布マン」も! あらゆるものが交錯する表現空間

マーカーやカラーペンを使い、まるで曼荼羅のような緻密さと独自の世界観で、色鮮やかに描かれた本作品。異星か、未来都市か。重力などないような、上下左右を自由に行き来できそうな摩訶不思議な世界。よく目を凝らすと、生き物らしきものが描かれていたり、メッセージのような言葉もたくさん見られます。

《有限内の無限 0=3》の原画と、作品に使われたマーカーペンの写真
この超細密世界は、「限られた紙面にできる限り多くの情報を詰め込みたい」という与那覇さんの思いの産物(photo:大湾朝太郎)

作者である与那覇さんは、専門的に美術の教育を受けたことはありませんでしたが、2013年から知人の作品に影響を受けて本格的に絵画制作をスタート。以来365日、精力的に絵を描き続けています。数々の公募展やグループ展で作品を発表するほか、パリの近現代芸術の殿堂〈ポンピドゥーセンター〉にも作品が収蔵されています。

これまでは自主的にアート制作に取り組んできた与那覇さんですが、今回は自身初となるコミッションワーク(受注制作)へのチャレンジとなっています。

原画を前にして笑顔を見せる与那覇俊さんの写真
与那覇俊さん(photo:大湾朝太郎)

嘉納さんと綿密なコミュニケーションを重ね、「調布市」「エレベーター」というキーワードをもとにイメージを増幅。その制作過程においては、地図から調布市を切り取ったり、同市を深く調べあげたり。そこに、世界情勢、与那覇さんの人生、岡本太郎やレオナルド・ダ・ビンチといった巨匠の作品の模写も加わり、導き出されたのが《有限内の無限 0=3》です。

作品の中には、同市の形にかたどられた架空のヒーロー「調布マン」が存在しています。頭には市の象徴である楠の木、左手には百日紅(サルスベリ)、右手にはメジロ鳥が描かれています。沖縄の伝統芸能「エイサー」を踊ったり、調布の人たちにコーラをおごったりするキャラクターなのだとか。

ウォールアートのアップ写真
バンザイをしているような人物が調布マン。ダジャレが好きという与那覇さんは、作品の中にも調布に関連したダジャレと思わしき言葉をあちこちに散りばめています。ぜひ探してみて!(撮影:ArtPlace Inc.)

この鮮やかな表現空間には、過去・現在・未来、現実と空想、自己と他者が交錯しているといいます。調布マンが繰り広げる壮大なイメージや、想像を巡らせたくなる世界観や言葉に、エレベーターの扉が開くまで、つい引き込まれて見入ってしまうはず!

アール・ブリュット作家を初起用した、大きなチャレンジ

今回のアートプロデュースを担った〈アートプレイス〉は、アートを通じてすべての場を人間らしく、クリエイティブな場へとプレイスメイキングすることを社会的使命とし、全国の民間企業や公共施設、医療や教育施設などへのアートプロデュース事業を行なっています。

その前身は、1980年代から国内で先駆的にパブリックアート事業を推進してきた〈旧株式会社タウンアート〉にあります。

引きで撮影されたウォールアートの写真
(撮影:ArtPlace Inc.)

今回の〈たづくり〉におけるパブリックアートのミッションは、「調布市パラアート展2023」(8月開催、すでに終了)に関連づけたアール・ブリュット作家の作品を起用すること。1日に約4000人の来館者がある同館で、エレベーターを待つ市民に向けて現代アート鑑賞の機会を提供すること。多様な人・表現・社会のあり方を伝えつつ、鑑賞者の感性を揺り動かすような場を創出することにありました。

与那覇さんにとっては初めての受注制作であることから、嘉納さんがコーディネーターとなり、コミッションワークの考え方、調布市や〈たづくり〉のことなどをレクチャーしたのち、制作がスタート。〈アートプレイス〉としても初めてのアール・ブリュット作家によるパブリックアートの展示の実現となりました。

エレベーターホールを飾る与那覇さんの作品と、エレベーターから降りる与那覇さんの写真
作品が展示されたエレベーターホールを訪れた与那覇さん(photo:嘉納礼奈)

「(今回の展示用に)全部で10点くらい描いたかもしれない。作品がたくさんできてよかった。(初めての受注制作のため)初めは自由が奪われそうで怖かったが、終わってホッとした。今は自由に描いています」とコメント。

本展示作品の制作過程については、〈アートプレイス〉が嘉納さんの協力とともに制作した与那覇さんの動画インタビューや、動画には入りきらなかったテキスト版もぜひご覧ください。

〈たづくり〉でのウォールアートとしての展示は年内までの予定でしたが、2024年1月21日(日)まで延長されることが決定しています。ぜひ一度〈たづくり〉に足を運び、圧倒されるほどの超細密世界を目の当たりにしてみてはいかがでしょうか。