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展示「ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術」5月7日(日)まで〈水戸芸術館現代美術ギャラリー〉にて開催中
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ケアについて考える展覧会が、5月7日まで〈水戸芸術館現代美術ギャラリー〉で開催中です

ケアを「ひとり」から「つながり」へとひらく展覧会が開催

日々の生活のなかで誰もが経験する、世話をしたり、されたりという行為。こうした自分以外の対象に関心を向け、世話や配慮をする「ケア」は、社会を支える根源的な実践でありながら、当たり前のものとして価値を見過ごされ、目を向けられずにいました。

ケアをする主体とは誰で、どのようなつながりのなかにあるのか。ケアについてときほぐす展覧会「ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術」が〈水戸芸術館現代美術ギャラリー〉(茨城県水戸市)で2023年5月7日(日)まで開催されています。15組のアーティストによる作品を手がかりに、展示や関連プログラムを通して、ケアを個人としての行為から「つながり」へとひらくことを試みます。

アートを通して、つながりに基づくケアを考える

展覧会タイトルには、「ケアリング」と「マザーフッド」というふたつの言葉が使われ、その間が区切られています。「ケア(care)」の現在進行形「ケアリング(caring)」とは、ケアをする行為を示す言葉。一方で「マザーフッド」とは、「母親(mother)」にその状態であることを示す「-hood」ついた、「母親である期間や状態」を意味する言葉です。

本展では、長く結びつきが強調されてきたこれらのふたつの言葉を解きほぐし、ケアの担い手としての母親像を示すのではなく、ひとりの人間としての「母親」や「ケアを担う人」に向き合います。

また、本展のタイトルには「いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?」という副題がついています。この問いかけは、誰もがさまざまな場面でケアと関わっている、というケアの多元性を意識づけるものです。現在、ケアという言葉を遠くに感じている人がいたら、この言葉を手掛かりに考えてみて欲しい、というメッセージが込められています。

15組のアーティストの作品

本展では、15組の同時代を生きるアーティストたちの作品を手掛かりに、社会とケア、そしてケアとその担い手の関係を解きほぐし、編み直すことを試みます。また、特定の状況やつながりにおける「自己と他者の境界の曖昧さ」やその過程で生まれる「葛藤」などを、表現として提示します。

1960〜70年代の第2波フェミニズムを背景に、「ケア」に関わる行為を家庭内へ抑圧することに異議を唱えたマーサ・ロスラーさんやミエレル・レーダーマン・ユケレスさんらの初期作品が出展。

「重力」や「愛」などかたちのないものの可視化を試みる二藤建人さんは、鑑賞者が実際に体験できる作品《誰かの重さを踏みしめる》を展示しています。

二藤建人《誰かの重さを踏みしめる》2016-2021年 Courtesy of LEESAYA

ホン・ヨンインさんは、家庭や工場で働く無償または低賃金の労働者に目を向け、本間メイさんは、「女性特有の痛みはなぜなくならないのか?」という問いをきっかけに妊娠・出産する身体と社会によって植え付けられる痛みの関係を考察します。

ホン・ヨンイン《アンスプリッティング》2019年
本間メイ《Bodies in Overlooked Pain(見過ごされた痛みにある体)》2020年

AHA![Archives for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]は、仙台市沿岸部に暮らすかおりさん(仮名)という女性が、2010年6月11日から綴り始めた育児日記の再読を通して、大きな主語では括り切れない「私の記録」と、それにまつわる記憶へと語り直すことを試みます。

AHA![Archives for Human Activities / 人類の営みのためのアーカイブ] 展示風景:「わたしは思い出す 
 10年間の育児日記を再読して」2022年、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)、兵庫

この他にも、青木陵子さん、石内都さん、出光真子さん、碓井ゆいさん、ラグナル・キャルタンソンさん、マリア・ファーラさん、リーゼル・ブリッシュさん、ヨアンナ・ライコフスカさん、ユン・ソクナムさんが出品しています。

作品や「ケア」について掘り下げる関連プログラム

会期中は、トークイベントなどの関連プログラムが多数開催されます。

4月22日(土)14:00〜15:30には、AHA!の松本篤さんによるアーティストトークが開催されます。また翌4月23日(日)14:00〜15:30には、AHA!の本展参加作品を再構成した書籍『わたしは思い出す』を題材とした読書会が実施。印象に残ったエピソードや参加者自身が思い起こしたできごとについて語り合います。

「子育てアーティストの声をきく」では、子育てをしながら作品制作をおこなうアーティストたちはどのようにケアと作家活動を行っているのか、その実体験を共有する掲示板を開設・運営。会期中に、寄せられた「声」を振り返るプログラムを開催します。

「ケアする人」へのお土産としてハーブを使ったサシェ(香り袋)とメッセージカードを作るコーナーがあるほか、小さなお子さんの案内経験豊かなスタッフと展覧会を鑑賞する「赤ちゃんと一緒に美術館散歩」(4月21日(金)、5月3日(水・祝)10:30〜12:00)が開催されます。
※5月3日(水・祝)は受付終了

また、4月16日までは「高校生ウィーク2023」として、ワークショップや部活動、座談会などさまざまなプログラムが若い世代によって運営。多様な世代がともに考える場が開かれます。

誰にとっても無関係ではない、ケアという行為について、ぜひアーティストの作品を鑑賞したり、関連プログラムに参加したりしながら向き合ってみませんか。