ニュース&トピックス

「点字にふれる」展、〈Gallery A4〉にて10月24日まで開催。光島貴之さん、白鳥建二さんなど参加
展覧会情報

  1. トップ
  2. ニュース&トピックス
  3. 「点字にふれる」展、〈Gallery A4〉にて10月24日まで開催。光島貴之さん、白鳥建二さんなど参加

会場入り口にある「点字にふれる」というタイトルと手のイラストが描かれた大きなパネルの写真
会場風景 撮影:光齋昇馬

点字をはじめとする“触覚”の世界をたどる展覧会

公共のエレベーターやトイレ、電車のドア付近などで目にすることが増えた「点字」。ビール缶の上蓋や、ジャム瓶の側面などに印字された点字に気づいている人も多くいるのでは? でも、それらがなんと書かれているのか、知っている人は少ないかもしれません。(ちなみに、ビール缶には「おさけ」、ジャム瓶には「じゃむ」と書かれています)

6つの点の構成で文字や英数字などを表し、視覚に障害がある人の暮らしを支えている点字。前述の通り、私たちの日常のあちらこちらに点字は存在し、それらを必要とする人の道しるべとなっています。

そんな点字をはじめとする“触覚”の世界をたどる展覧会「6つの点から広がる世界 点字にふれる」が、東京都江東区の竹中工務店・東京本店1階にある〈Gallery A4(ギャラリー エー クワッド)〉にて、2024年7月26日(金)~10月24日(木)の期間で開催されています。入場は無料です。

見て、触って、楽しんで、学ぶ! 知らないことだらけの“触覚”の世界

点字を出発点に、さまざまな触覚の世界を紹介していく本展。大きく5つの章に分けられ、映像上映や、実際に触れられる展示品や絵本など、見て、触って、楽しめる内容となっています。

第1章「見える・見えない? 見え方は十人十色」では、明暗がわかる、ぼんやりと形がわかる、一部が欠けて見えるなど、視覚障害のある人のさまざまな見え方の一例や、基本的な知識をグラフィックなどで紹介していきます。

第2章「点字にさわる 暮らしの中の点字」では、点字の読み方、書き方、文法などの解説のほか、英語、数字、楽譜にまで展開する点字のしくみを紹介。

また、点字が印字されている市販品、腕時計や財布など視覚障害がある人のための生活必需品、楽しく点字を学ぶ学習アイテムや玩具など、初めて目にした人は驚きを覚えるような品々も展示されています。これらには実際にふれることも可能です。

さまざまな展示品が置かれている展示会場の写真。
会場風景 撮影:光齋昇馬

また、全盲の岩田美津子さんらが長年にわたって製作に取り組んできた「てんやく絵本」も展示。物語を点字に変換するだけでなく、絵のひとつひとつに透明なシートを手作業で貼り重ね、視覚障害がある人でもイラストのイメージがつくようにつくられた点訳絵本。それらの手触りも体験することができます。

第3章「点字をつくる 日本点字図書館の仕事」では、東京・高田馬場に所在する〈日本点字図書館〉の多岐にわたる活動内容を紹介。

視覚障害がある人への点字・録音図書の貸出だけが仕事ではない日本点字図書館。点字図書の制作、視覚障害のある人に向けたさまざまな生活支援など、「図書館」という名前を超えた取り組みを知ることができます。

書庫に点字本を収納している女性スタッフの写真。
日本点字図書館 書庫 ©日本点字図書館

第4章「点字のある所・ない所 まちを歩く」では、全盲の美術家・光島貴之さんと、全盲の美術鑑賞者であり写真家の白鳥建二さんを出展者として招聘。それぞれがギャラリーのある東陽町や門前仲町周辺を歩き、ふたりにとってこの街はどのように見えるのかを可視化する試みが行われています。

光島さんは、街歩きの際に感じた、音、リズム、におい、味わい、感触、風といったものを、釘やピンなどを用いて作品化。7月26・27日の2日間、ギャラリーにて滞在制作を行い、完成した作品が展示されています。

釘やピンなどが打たれた光島さんの作品群が掛かっている会場の風景写真。
光島貴之「エークワッドからひろがるそよぐ まちの風」2024年 協力:竹中大工道具館、制作協力:アトリエみつしま、撮影:光齋昇馬

一方の白鳥さんは、右手に白杖、左手にカメラを携えたスタイルで街を歩き、風景を写真に収めていきました。撮影された約1000枚の写真のうちの約100枚を、ワークショップユニット〈BOB ho-ho(ボブホーホー)〉が選り抜き、本展にてコラージュ作品として発表しています。

写真をコラージュして壁に貼りつけている〈BOB ho-ho〉のおふたりの写真
白鳥さんが街歩きのなかで撮影した写真を構成していく〈BOB ho-ho〉のホシノマサハルさん(左)とウエダトモミさん(右)。ホシノさんは、白鳥さんの街歩きにも同伴しました

光島さんと白鳥さん、おふたりの街歩きの様子は、ドキュメント映像として会場で上映。その映像のなかで、市井にあふれるさまざまな障壁の存在に気づく人もいるのでは。一方で、独自の方法で街歩きを楽しむふたりの姿に、新しい街との出会い方を知れるかもしれません。

第5章「点字を書く」には、点字機を使って点字を書く体験コーナーを設置。例えば、自分の名前がどのような点字で構成されているか、この機会に確かめてみるのも楽しいかも。

初めて見るもの・手にふれるもの、存在は知りつつも初めて意味を知ったもの――すべての展示を通して、さまざまな発見や気づきが得られるはず! いずれも楽しく学べ、誰かに教えたくなるような情報ばかりです。

話題の映画上映会や、トークショーも

会期中は、ワークショップ、映画上映会、トークショーが開催されます。

2024年8月3日(土)は、ワークショップ「点字で自分の名刺をつくろう」を実施。日本点字図書館のスタッフのレクチャーのもと、名刺サイズのカード、もしくはご自身の名刺に、点字機を使って名前を書いていきます。事前申し込みは不要、参加費は無料です。(※終了しました)

9月28日(土)には、2022年に公開され大きな話題を呼んだ映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」の上映会が行われます。上映後には、監督の三好大輔さんによるトークショーも。先着100名、参加費は無料です。

10月2日(水)には、第2章でもその活動が大きく紹介されている、全盲の岩田美津子さんをゲストに迎えたトークショー「『見えなくったって、絵本を読みたい!』点字つきさわる絵本ができるまで」が開催されます。絵本専門出版社〈こぐま社〉の元編集長・関谷裕子さんが聞き手となり、岩田さんがてんやく絵本を手掛けるに至った経緯から、現在までの活動をお話しします。先着100名、参加費は無料です。

左の写真は、同行援護者と共に歩く白鳥さん。右の写真は点訳絵本に触れている岩田さんの写真。
左)映画「目の見えない白鳥さん、アートを見に行く」より ©ALPS PICTURES 右)岩田美津子 てんやく絵本ふれあい文庫にて ©てんやく絵本ふれあい文庫

〈Gallery A4〉のシリーズ展覧会「社会のダイバーシティを考える」

「社会のダイバーシティを考える」という副題が添えられている本展。2021年に開催された、義足とそのユーザー、つくり手の現在に着目した展覧会「立つ、歩く、走る―義足でこえる心の壁」に続く“シリーズ第2弾”として実施されています。

「個々がバラバラになるのではなく、“つながり”を実感しながら理解を深め、幸福感を分かちあうためには?」という問いを立てた同ギャラリー。そんななか、異なる目線を持った人々が関係しあい、支えあう社会の一歩になることを願い、本展が企画されました。

多くの人にとって、点字は近くて遠い存在かもしれません。でも、点字を「読む」ことは難しくても、「ふれる」ことはできます。本展でさまざまな触覚を体験したあとは、点字が不思議と身近に感じ、社会に向けるまなざしも少し変わっているかもしれません。