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自分らしさを「色」で表現した絵本『ジェンダー平等と公平についてのおはなし』シリーズ3冊が翻訳出版
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3冊の表紙が並んだ画像
2025年12月〈ゆまに書房〉より『ジェンダー平等と公平についてのおはなし』シリーズ3冊が同時に出版されました

子どもたちの多様なあり方を尊重するきっかけとなる絵本

「女の子だからダメ」「男らしくないね」そんな風に言われて、モヤモヤしたり、あるいは憤ったりしたことはないでしょうか。

自分らしさを「色」で表現した絵本『ジェンダー平等と公平についてのおはなし』シリーズ3冊が、〈認定NPO法人ReBit〉の監修で2025年12月に翻訳出版されました。各絵本には、「男らしく」なれないことに悩む子ども、「男女どちらかを選ぶ」ことに違和感を持つ子ども、「女の子は男の子より速く走れない」と言われて悲しくなる子どもが主人公として登場します。

子ども一人ひとりの多様なあり方を尊重し、「違い」を受け止め合うために私たちは何ができるのか。カラフルな色彩とストーリーを楽しみながら、ジェンダー平等や公平について考えることができる絵本シリーズです。

【絵本の見開き画像】パーティの会場を笑顔で楽しんでいる子どもたちの様子が描かれている
『むらさき!これがじぶんのいろ』(ゆまに書房)より

不足している、子どもたちが性の多様性を学ぶ機会

本書の監修を務めた〈ReBit〉は、「LGBTQもありのままで未来を選べる社会」をめざし、学校・行政・企業での施策推進や啓発、教材制作、キャリア支援などを行う認定NPO法人です。

学校の教職員がLGBTQ+について学び、安全な学校環境や相談体制を整えるための支援ツール「Ally Teacher’s Tool Kit:安心な学校をつくろう編」は、2025年3月からオンラインで無料公開もされています。

本書の出版背景には、長く活動をするなかで感じてきた「性の多様性についての正しい情報が子どもたちへ届いていないこと」への懸念があったそう。〈ReBit〉の調査では、LGBTQについて教え始めるとよい時期について、小学校教職員の33.2%が「入学前」、61.6%が「低学年」までと回答していますが、実際は小学校低学年の頃までに性の多様性について情報を得る機会はほとんどありません。

LGBTQについて教え始めるとよい時期について調査された棒グラフ。小学校まで、の回答が97.9%をしめる

実際、性的マイノリティの子どもが自身のセクシュアリティを認知したとき、不安に感じてしまうケースは少なくありません。そうした現状を前に、〈ReBit〉が新たなアプローチを探していたところ、出会ったのがオーストラリアで出版された『これがじぶんのいろ』の絵本シリーズでした。

本書の日本での刊行にあたり、翻訳は〈ReBit〉事務局長の中島潤さんが務めています。低年齢の子どもから自分で読み進められるようにと、本文は全てひらがなで書かれました。「一人でも読むことができ、音で聞いてもおもしろい」。そんな絵本になるよう、制作は子どもたちの実際の声を聴きながら行われました。

「自分らしくありたい」と願う主人公たち

シリーズ3冊では、異なる主人公が登場します。

『ピンク!これがじぶんのいろ』に登場するのは、お父さんのように「男らしく」なれないと悩む子どもです。初めて学校へ行く日に、大好きなドレスを着て行くと、クラスメイトに無視されてしまいます。ショックを受けて学校に行けなくなった主人公に、お父さんが寄り添い「本当の自分に自身を持って」と背中を押します。

【絵本の見開き画像】お父さんが子どもに寄り添っているページ
『ピンク!これがじぶんのいろ』(ゆまに書房)より

『むらさき!これがじぶんのいろ』の主人公は、自分がお父さんともお母さんとも違うことに悩む子ども。お父さんとお母さんに作ってもらったタキシードドレスで学校のダンスパーティーに参加しますが、「男か女かどちらかに分かれるように」と言われて、泣いてしまいます。でもそこから、同じようにどちらでもない友だちが、主人公に声をかけてくれました。

【絵本の見開き画像】6人の子どもが登場し、それぞれ自分の色は何色かを宣言している
『むらさき!これがじぶんのいろ』(ゆまに書房)より

走るのが大好きな主人公が登場するのは、『あお!これがじぶんのいろ』。「女の子だから男の子より速く走れない」と思われてしまうことに不満を感じています。楽しみにしていた運動会の日、体育の先生にそう決めつけられ、怒って抗議しますが、先生は意見を変えてくれません。悲しんでいると、クラスメイトの男の子が「チャンスが同じじゃないなんて変だ」と声をあげてくれました。

【絵本の見開き画像】クラスメイトの男の子が声をあげている場面
『あお!これがじぶんのいろ』(ゆまに書房)より

どの作品も、「自分らしくありたい」と願う子どもの気持ち、「自分らしさ」を否定されたときに感じた悲しさなど、感情の動きもしっかりと描写されていることが印象的です。たとえ同じ状況でなかったとしても、主人公の気持ちに共感しながら読み進める読者も多いのではないでしょうか。

また翻訳上の工夫で、いろんな子どもが自分を投影できるようにと、「ピンク」「むらさき」では最後まで主人公の性別は明示されていません。時には子どもが大人に抗議する場面もシリーズ内に描かれていますが、そこはあえて表現を和らげずに翻訳したと、中島さんは話します。

「例えば『ふこうへい』という表現を知らない子どももいるかもしれませんが、大事な言葉だと思ったので、あえてそのまま残しました。疑問に思うところから、対話が始まるといいなと考えています」

木の陰で女の子がしゃがんで泣いている様子が描かれたページ
『あお!これがじぶんのいろ』(ゆまに書房)より

本書を活用して授業ができる教材キットが無料配布中

この絵本を教育現場で活用するにあたって、絵本を使いながら小学校や中学校でジェンダー平等・LGBTQ・公平公正などを学ぶための補助教材を、〈ReBit〉が無料で配布しています。

内容は、道徳・保健・学活・総合などで使える指導案やパワーポイント、ワークシート、解説動画など。授業づくりにすぐに活用できる教材が準備されています。

教材の一覧

翻訳者の中島さんは、ご自身もノンバイナリー。これまでどんな本を読んでも自分を投影できる登場人物がいないと思っていましたが、『むらさき!これがじぶんのいろ』を手に取ったときに初めて、これは「自分の物語だ」と感じることができたそう。

「トランスジェンダーやノンバイナリー、クィアの子どもたちにとって、自分を投影できる登場人物は多くありません。これは自分の話だ、と思える物語が世の中に増えることは、『ひとりじゃないよ』というメッセージにつながる。この3冊には、すてきな周りの人たちが登場します。すべての読者に『自分にもできることがある』と気づかせてくれる存在だと思っています」

レインボーフラッグを背負ってこちらを見て微笑んでいる中島さん
翻訳者の中島潤さん

悩みを抱える当事者の気持ちだけでなく、その周りにいる人はどんな対応ができるかのヒントまで描かれている3冊の絵本。ぜひ本シリーズから、性の多様性やジェンダー平等についての対話をスタートさせてみませんか。