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LGBTQ+とは? 職場で起こっているかもしれない「SOGIハラ」を考える
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【イラスト】こここトピックス、LGBTQ+/SOGIについて知ろう

LGBTからLGBTQ+、SOGIへ——性の多様性を語る言葉

近年、さまざまな場所で目にする「性の多様性」という言葉。ここでの「性」には大きく分けて4つの要素があり、その組み合わせで「その人にとっての性」が決まるとされています。

1つ目は、出生時に割り当てられた「身体的性」。2つ目は、自分自身の性をどう認識するか、あるいは認識しないかという「性自認」。3つ目は、恋愛感情や性的感情の向く方向、あるいは向かない方向を捉えた「性的指向」。そして4つ目、自分が表現したいと思う「性表現」。

これらの「性」をそれぞれをどのように持つのか、あるいは持たなかったり、限定的に持ったりするのかは一人ひとりが決めることができます。そして、その決定を示す言葉として、性的マイノリティであることを自ら表す「LGBTQ+」や、性のアイデンティティのあり方をより広く表現する「SOGI」があります。

【イラスト文字】LGBTQ+とは

日本では2006年にカナダで行われたモントリオール宣言(注1)を機に、性的マイノリティの存在や人権を考えるきっかけが広まり、「LGBT」という言葉が用いられはじめました。

これは女性として女性を好む「Lesbian(レズビアン)」、男性として男性を好む「Gay(ゲイ)」、同性も異性も好む「Bisexual(バイセクシュアル)」の3つの性的指向と、生まれたときに割り当てられた性と異なる性を自認している「Transgender(トランスジェンダー)」という言葉の、それぞれ頭文字をとったものです。

(注1)「モントリオール宣言」=モントリオールで開催された暴力や差別を告発する国際会議にて、性的マイノリティ及びインターセックスの人権の確保を求めて成立した宣言。正式名称は、「Declaration of Montreal on Lesbian, Gay, Bisexual and Transgender Human Rights(レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人権についてのモントリオール宣言)」

その後2010年代後半には、LGBTだけで包括しきれない性のひろがりとして「LGBTQ」「LGBTQ+」と表現されることも増え、性的マイノリティの総称の一つとして使われるようになってきました。

「Q」は、自分の性自認や性的指向を決めきらない「Queer(クイア)」や「Questioning(クエスチョニング)」の頭文字。「+(プラス)」には両性の身体的性を有する「Intersex(インターセックス)」、どんな性であるかを問わない「Pansexual(パンセクシャル)」、恋愛感情の有無にかかわらず他者への性的な欲求は抱かない「Asexual(アセクシャル)」、自信の性を男性でも女性でもない何かと捉える「Xgender(エックスジェンダー)」、性的マイノリティの当事者でないが性的マイノリティの差別の是正を目指す「Ally(アライ)」など多様な状況が含まれているとされます。

【イラスト文字】SOGIとは

その一方で、最近は「SOGI(ソジ)」という言葉で性の多様性を語ることも増えてきました。

SOGIは、2006年のジョグジャカルタ原則(注2)で登場した「Sexual Orientation and Gender Identity」の頭文字で、性的指向と性自認を意味する言葉です。より詳細に表したいときは、性表現を意味する「Gender Expression」の頭文字も加えた「SOGIE(ソジエ)」を使う場合もあります。

(注2)「ジョンジャカルタ原則」=2006年にインドネシアのジョグジャカルタで行われた、性的指向・性自認に関する国際人権法に適応した原則。性的指向・性自認を新しく特別につくられた権利ではなく、既存の国際人権法に適用できるという考えに基づいています。

こうした言葉は、性的マイノリティのみを指すのではなく、「すべての人の多様な性のあり方」を表します。出生時の性と性自認が同じ「Cisgender(シスジェンダー)」、異性愛者を指す「Hetero sexual(ヘテロセクシャル)」など性的マジョリティを含め、誰もがそれぞれのセクシャリティを持っているという考えに基づいています。

LGBTQ+を使うべきかSOGIを使うべきかは、使う目的によるでしょう。ただ、広く「性の多様性」を語りたいときは、分類ではなく考え方に基づくSOGIを使うことで、性的マイノリティのみ形容してしまうのを避けることができます。

職場でのさまざまなLGBTQ+差別、「SOGIハラ」への対策を考える

言葉の広がりに伴い、職場に潜んでいた「性」にまつわる問題も近年明らかにされてきています。

たとえば、規範的な「男らしさ」や「⼥らしさ」を押し付けるような社内規定や言動があったり、性的マイノリティを揶揄するような冗談が交わされていたり。性的指向、性的自認のあり方が多様であることを踏まえると、「異性に恋愛感情を持つこと」を前提にした何気ない質問、特定の性別を記載させられる書類なども、その一つに挙げられます。

さらには、本人が選択できるはずのカミングアウト(性的マイノリティであることの公表)を上司が強制したり、他人が本人の同意を得ずにSOGIを暴露する「アウティング」も起きています。

もちろん、こうした「SOGIハラ」を問題視する企業も年々増えています。〈認定NPO法人虹色ダイバーシティ〉が2018年から2020年のアンケート(インターネット経由、⽇本の職場で働いた経験のある⽅を対象)の結果をまとめた『職場のLGBT白書』によると、調査した3年で大企業を中心に、職場のLGBT施策は増えている傾向にありました。

【グラフ】2018〜2020年までの3年間のアンケート回答の推移。トランスジェンダーの方の回答、シスジェンダーでLGB、パンセクシャル、アセクシャルなどの性的指向のある方の回答、シスジェンダーで異性愛者の方の回答の3つが並んでいる。選択肢はLGBT施策無し、施策1つ、施策2〜4つ、施策5〜11つの4択
職場に性的マイノリティへの「施策がない」と答える割合は、いずれも減少傾向にある(『職場のLGBT白書』p36〜37より作成)

一方、同アンケートでは、差別の状況に気付く割合が「当事者かどうか」で偏りのあることも示されています。

【グラフ】2018〜2020年までの3年間のアンケート回答の推移。トランスジェンダーの方の回答、シスジェンダーでLGB、パンセクシャル、アセクシャルなどの性的指向のある方の回答、シスジェンダーで異性愛者の方の回答の3つが並んでいる。選択肢は差別的発言多、差別的発言中、差別的発言少の3択
差別言動が少ないと回答した人は、シスジェンダー・異性愛者だと約2割高い(同上、p44より作成)

企業で行われる施策は、採用方法の改善、男女兼用トイレの設置、服装規定の更新、福利厚生制度の改訂、ハラスメントについての社内認知の向上、相談体制づくりなど多岐にわたります。制度の改正や設備の見直し、性差別を許さない企業文化づくりなど、構造から変えることが大切です。
具体的な取り組み事例は、2020年に厚生労働省が発表した『多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集』などを参考にすることができます。また、2020年5月に発表された『職場におけるダイバーシティ推進事業の報告書』では、性的マイノリティの当事者を対象に「行われたら良いと思う職場環境」のアンケートも実施されています。

【グラフ】それぞれの施策の賛同割合が表示されている。上位の施策に、「性的マイノリティに関する倫理規定、行動規範等の策定」(23.0%)、「性的マイノリティに関する取組方針についてのトップメッセージの発信」(16.4%)、「福利厚生での同性パートナーの配偶者扱い」(23.3%)、「トイレや更衣室など、施設利用状の配慮」(26.6%)など
当事者による性的マイノリティが働きやすい職場環境をつくるために、行われたら良いと思う取り組みをまとめたもの(厚生労働省『職場におけるダイバーシティ推進事業の報告書』Q45回答より作成)

すでにある格差への考慮と「アライ」の活動

国や自治体による法整備も少しずつ進んでいます。「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」の施行により、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から「SOGIハラ」「アウティング」の防止対策が義務化されました。

厚生労働省の運営する『あかるい職場応援団』のサイト。QAや無料で使える研修用資料などの情報が公開されている

大阪府では2019年に条例が制定され、事業者が「性的指向及び性自認の多様性に関する理解の増進」に努めることを明記。同年に東京都でも「東京都性自認及び性的指向に関する基本計画」が策定され、事業者などを対象とした取り組みとして啓発冊子の配布や人事担当者などを対象とした無料の研修を実施しています。他にも、北海道札幌市の「札幌市LGBTフレンドリー指標制度」など、SOGIの多様性に前向きな企業を認証する制度も作られています。

一方、企業や公共の施策は不十分であるという指摘も少なくありません。『職場のLGBT白書』の調査報告内のコラムでは、「仕事とSOGIは関係ない」など能力主義を掲げる企業に対して、採用や昇進の決定に、すでにある「⽣まれの性別やSOGIによる格差」への考慮が足りないことも指摘。さまざまな人がいることを念頭に置き、画一的でない評価モデルを考えてみる必要があると綴られています。

また、企業ができることの他にも、私たち一人ひとりができることとして「アライ」(自らの意志で被抑圧集団の人々の権利を支持する、あるいは社会的公正を求めて立ち上がることを選択する人々)を目指す方法があります。アメリカのAmélie Lamontさんが作成したオープンソースのガイド『The Guide to Allyship』は、2021年8月に大阪大学大学院講師の三木那由他さんにより『アライになるためのガイド』として翻訳され、ウェブ上で公開されています。

アライになるための心得

1. 抑圧された人々の困難を自分自身のものとして引き受けること。
2. 自身の特権から得られる利益を、その特権を持たないひとへ譲り渡すこと。
3. 自分自身の声よりも先に、抑圧された人々の声を大きく響かせること。
4. たとえつらいと感じることがあっても、いま語り合うべきはあなたのことではないと認めること。
5. おっかないと感じるときでも立ち上がること。
6. 自分の失敗を自分事として引き受けつつも、自分を関心の中心としないこと
7. あなたを教育するのはあなた自身がすべきことであり、ほかの誰かがすべきことではないと理解すること。

(「アライになるためのガイド」p.2より)

同ガイドには、発言や振る舞いでマイノリティを傷つけてしまったときの考え方や謝り方も紹介されています。自分にできること、企業にできること、国にしてほしいこと、一つひとつのアクションを積み重ねた先に、社会を構成する「人」の福祉(幸福)が大切にされていくのではないでしょうか。

Information

参考資料

・『職場のLGBT白書』(認定NPO法人虹色ダイバーシティ)
・『職場におけるダイバーシティ推進事業の報告書』(厚生労働省)
・『多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集』(厚生労働省)
・『アライになるためのガイド(Amélie Lamont作成、大阪大学大学院 三木那由他訳)